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yomi3401さんのアメイジング・グレイス -What color is your attribute?-の長文感想

ユーザー
yomi3401
ゲーム
アメイジング・グレイス -What color is your attribute?-
ブランド
きゃべつそふと
得点
98
参照数
210

一言コメント

とんでもねぇ伏線回収に鳥肌が立つ作品。最初にやったエロゲーがこの作品で本当に良かった。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

私は、これが人生初のエロゲーでした。
そして、初めてのエロゲーでこの作品をプレイしたことは、本当に幸運でした。しかし、逆に不運だったとも言えるかもしれません。なんでそう思うのかを感想として長々と書いていこうと思います。

2022年の12月、Twitterのフォロワーさんから、この作品のことを知りました。エロゲーなんてやったこともなかったし、ノベルゲームもこの段階では、シュタインズ・ゲート全種とSummer Pocketsをやったことがあるだけでした。しかも、元々、アクションゲームとか任天堂のゲームで育ってきた人間なので、あまりノベルゲームのことを評価していたわけではありませんでした。

 蓋を開けてみれば、きれいなイラストに、めちゃくちゃ面白いストーリー、BGMも良い。それに、当時から、叙述トリックにはまっていたので、それが使われているところに遭遇したときには思わず感動してしまいました!オチもまあ、ご都合主義感はありましたが完全なるハッピーエンドでもう大満足でした!

 簡単な感想は以上として、概説、ストーリーシナリオ面、キャラ面と良かった点を中心に書いて、最後に悪かった点を書いて行こうかなと思います。

システム
不満なところはほとんどなかったと思います。終盤のサクヤの絵だけおかしい気もしますが、些細なことなんでね。バックログジャンプもしっかりあるし、十分だったと思います。セーブ数も80個で、今思うと結構少ないなと感じましたけど、あまりセーブをする人間ではないので、個人的には半分くらいは余った気がします。

 CGとかBGMはあまり興味がないというか、エロゲーをエロ目的で使ったことがあまりないので不満点は特にはないです。でも、普通に良かったと思います。おまけで見れないエロシーンとかもないですしね。アブノーマルとかもなく普通にノーマルなのも個人的にはいいと思う。

 自分は結構文章を読み飛ばす人なので、あまりあてにはならないですが、誤字脱字も少なかったんじゃないかなぁとは思います。

 ここからは、ネタバレを挟むと思いますので、未プレイの方は注意してください。

ストーリー
 個人的には完璧だったと思っています。ストーリーの分岐は好感度性とかではなく、脱落形式。一人ひとり選んでストーリーを見た後にこのヒロインのまま先に進むのかをプレイヤーにゆだねてくるタイプ。個人的には、この形式が一番好きです。なぜならば、ストーリーが一直線になるからです。この世界線を経験したから次のの世界線がより面白くなる。伏線も一番立てやすい形式なのではないでしょうか。

 そして、各ヒロインルートの後にアフターがあること。個人的にはもう大満足でしたwやはり、ヒロインとくっついた後の話は気になりますもんね。特に、キリエルートが良かった。サクヤとキリエが好きな自分としては完璧と言わざるを得ないw

シナリオ
 不満点や疑問点もあるにはあるけどそれでもいい点がはるかに勝っている。
 落書きや犯人であるサクヤの正体がバレるシーンなど伏線の爆弾が強烈に爆発する瞬間が少なくとも二回もある。

 伏線が終盤に至るまで随所に配置されている。そして、全然回収されないなと思った矢先、終盤に入った途端デンプシーロールのように襲い掛かってくる!あれは良かったねw頭が興奮でいっぱいいっぱいになってた。

上でも書いてるけど、特に、落書きとサクヤね。落書きは当てたかったなぁ。てっきり、ローマ字で書いてあって、読めないだけとか漢字だから読めないだと思ってたから、字がそもそも無いとは全く気づきませんでした。ノベルゲームだからこそできる伏線回収恐れ入りました。

 サクヤのほうは、手が写って、誰が犯人なんやって思ったらサクヤだと突然ひらめきましたw

 キャラの感情の爆発もこの作品のいいところですよね。終盤のサクヤとギドウ先輩の慟哭や感情の吐露は心に来るものがありました。

 残念ながら不満点もいくつかあり、伏線回収がすごい本作ですが、回収しきれていないものがいくつかあるのも否めないと思います。
 キャラの扱いも完ぺきとは言えないと思います。詳しくはキャラのほうで語りますけど。一人完全に空気の人がいるんでね…

キャラ 個別で書いていこうと思います。

渡良瀬修
 今回の事件の黒幕の息子でもあり、今作の主人公。なんですが、個人的には今作で一番微妙なキャラでもあると思います。あまり言いたくないですが、結構バカというか少なくとも頭がかなり悪いキャラと言わざるを得ません。何となく、伏線を溜めまくる手法を取ってるからすごいアホに描かれているような気がします。特に、落書きの件はどう考えても一周目はまだしも2周目にすぐ調べてもいいはず。シナリオの犠牲になっていると考えるべきですね。何か理由があればいいんですが、当たり前ですけど具体的な理由なんてものも出てくるはずがないし、一番考えられるのがミューズ漬けにされていたからかなとも思わなくもないけど、人に対しては甘くなりそうだけど観察眼が甘いとかは説明がつかんと思うしなぁ。結構残念ポイントと言わざるを得ない。
 しかし、その点を除けばまぁ、普通にいい主人公してたんじゃないかな。曲がりなりにも11回ループしてるわけだからね、精神力はかなりのものだろう。

天城悠音
 本作のメインヒロイン。
 自らを犠牲にしながら、街を救おうとするその精神力には感服するしかない。てかこの作品タイムリープものだから仕方ないけど精神力強い人多すぎw
 明確にメインヒロインではあるはずなんですけど、なんですけど、サクヤが強すぎるのとユネが永遠に囚われているせいでマジでメインヒロイン感が薄いのが残念でしかない。(サクヤが一番好きなんで別にいいんですけども…)
 本当に絡みがないせいで、なんで主人公とユネが魅かれあっているのか分からないくらい表現が足りない。おそらく、ユネ推しの人は明確な不満ポイントだろうね。

リリィ・エヴァーハルト
 めちゃくちゃ怪しい先生。とにかく、最初っから最後まで怪しい、ザミスリード要員。
 その実態は、単なるハンバーガー好きな淫乱教師だったわけなんですけどねw
 ほかの人の感想で、中盤でメートル単位を使ってたと聞いてめちゃくちゃびっくりしてますw気づかんわそんなんw
 リリィ先生は、本心を隠しているというより話さなかったのでギドウ先輩のアポカリプス計画について本心ではどう思っていたのかは分かりません。個人的には、あまり悪いキャラには思えなかったので、どちらかといえばあきらめの境地というか、そもそも止めるような性格ならば、そもそも先生なんてやってなかったでしょうから、深く考えずに流れに身を任せているような人間だったのではないかと思っています。

広川龍我
 怪しい枠二人目。
 店長。序盤中盤と超怪しかった。でも、逆に役割を遂行してからは完全空気になってしまった悲しい人でもある。
 本当に語ることが無いw

木戸耀司
 親しい友人枠。えー、マジで空気。店長よりも役割がない。怪しくなさ過ぎて、逆にあるのかとも思ったけど、マジでなんもない。親しい友人となってくれるだけ。うん。マジで語ることが無いw

氷室桐絵
 ヒロインの一人。いいキャラしてるよね本当に。サクヤがぶっ刺さってなかったらぶっちぎりで好きだったと思う。キリエルートもかなり重要な伏線が張られるし、ヒロインとしても個人的にはギャップ萌えに該当するのでマジで好みだった。
 でも、キリエと言ったらやはり、演技ですよね。最終盤、まさかの爆発好きが演技だったことが発覚。マジでビビったw
ただ、まぁ個人的にはもっと明確に伏線にしてほしかったかなと思ってしまう。確かにコトハ先輩が「女優」キリエのファンとは言ってたけど、なんかもっとよくできたんじゃないかと思ってしまった。
そして、キリエアフター。個人的にはアフターの中では一番好きだったね。努力して字を学んでるという描写もよかったし、最後のサクヤを見つけ出すところも非常にキリエらしくて完ぺきな解釈一致で、まさしく神と言わざるを得ない。

真桐言葉
 ヒロインの一人。
 個人的なことを言うと結構空気だった気がする。コトハ先輩ルートってあんまり印象に残ってなくて、リンカさんの伏線がすごい多かったし、結構エロ要素が多いキャラというのもあって、エロを重要視しない自分からしたら、うーん、好きでもないけど、いいキャラではあったかなぁ。おそらくいなかったらハッピーエンドにはたどり着けなかっただろうし。ギドウ先輩への説得もよかったですしね。

神崎林果
 ギドウのライバル?
 なんか、ヒロインでもないし語ることも特にないかな。しいて言うなら、ギドウ先輩とくっついてほしいw
 でも、案外シュウとの相性も良さげなんだよね。でもやっぱりヒロインとしては合流が遅すぎて無理よな。主人公が落書きにさっさと気づけばよかったのになぁ。

柊義道
 今回の事件の犯人のうちの一人であり実行犯。
 この人もいいキャラしてるんですよね。個人的には完全なる悪じゃないのが良かったね。ちゃんと改心して大団円にできるし、好きなキャラでもあったから。

 でも終盤まで犯人だとは確定できなかったなぁ。トランペットの話からはほぼ確定だったけど。
 このキャラを一言で表すなら、芸術家だね。どこまでも芸術家であったからこそ、狂気に落ちて悪という立ち位置になってしまったけど、芸術家だとしか言えないと思う。

 友人とこのゲームを遊んだんですけど、(自分は二週目)友人が美術やってる人で、ギドウ先輩の独白のシーンでめちゃくちゃ刺さっててめちゃくちゃ面白かった印象がありますw
 でも、自分だって、テニスを真剣にやってたことがあるので他人の才能を妬む気持ちくらいは分かります。本作をプレイするならこの感情を知っておくのはかなり重要だと思う。

柊咲夜
 本作のヒロインの一人。
 このアメイジング・グレイスにおいて、もっとも精神力が強く、最もかわいそうな被害者でもある。
 個人的にはサクヤもメインヒロインと言ってもいいと思う。(アフターがエロ以外ユネと内容ほぼ一緒だしね)
 終盤のカミングアウトにはプレイヤ-の心をグラグラと揺らしてくること間違いなしですねw
 本当に咲夜はかわいそうで、狂っちゃったギドウ先輩の犯罪の片棒を担がされるわ、18回ループするわ、好きである主人公を閉じ込めて記憶を消すために劇薬を飲ませ続けないといけないわで本当にかわいそう。
 ほかの人の感想で、ミューズを兄貴に飲ませれば解決やん言ってる人がいたけど、どう考えてもアンチミューズ処方されるだけだし、主人公を殺す以外の方法は、個人的には記憶喪失にするしかなかったんじゃないかなと思います。
 ループを18回行い、そのうち12回、計10年間を主人公であるシュウと同じ部屋で過ごし、なおかつ、劇物を気づかれることもなく仕込まないといけない。なおかつ、シュウがループしている状況になっても、何故か、セーブポイント以前に戻せたユネの力がないとシュウに気づかれなかった潜伏力。
 正直、本作をプレイするまでに見てきた作品で一番精神力が強いキャラクターは岡部倫太郎だったんですけど。正直、それに匹敵するか、それを超えるレベルで精神力が強いキャラクターだったと思います。
 でも、それだけやっても、結局メインヒロインではないのよね…。それが本当にかわいそう。
 
不満点、悪い点、気になった点、疑問点。
 最後にもやもやポイントを書いていきます。 
 とりあえず思うのは、もう散々書いてるけど、キャラの扱いが一部悪いところ。特にヨウジ。もう少し、役割を持たせるか、もう少し悪役に見せるとか工夫が欲しかった。
 そして伏線の未回収。自分が初見で思ったことですら、
・シュウのバッグ
・謎の地震の正体
・リンゴの正体
・矢を撃っていたギドウ先輩の行方
・クリスマスのミューズ乱用者
これだけあります。ほかの人の感想を見た後だと、公園作った人とか鎌と目出し帽の売り切れとか三枚の絵の正体とかもあるみたいですし、かなり衝撃的な伏線回収もあると同時にかなり取り逃しも多かった印象があります。まぁ、どれも本筋にあまり関係がないと言えばないのか?いやでも、少なくとも、ギドウ先輩が気になるのだが。

 あと、終盤のサクヤが胸元の閉じているのに立ち絵で開いてるのはどうにかならなかったのだろうか。せっかくなら立ち絵で準備すれば良かったのに。

 これは、自分の勘違いかもしれないので皆さんに聞きたいという意味でもあるのだが、
最終盤、青リンゴのおかげでみんなあのイブに戻ったのだが、あの青りんごってサクヤ食べてないよね?ならサクヤって、最後一人だけまた一年前くらいに帰ったのだろうかって思ったのだけど、どうなんだろう?もし本当にそうだとすると、やっぱりサクヤってすごいよねw

 自分は、ハッピーエンド大好き人間だし、個人的には、ちゃんと苦労している人のもとには奇跡というものが起きてほしいから、多少のご都合主義はぜんぜんOKのスタンスなんだけど(なろうは嫌い)リンゴとか結構ご都合と言える要素があったのは確かだから、そこが苦手な人は評価が落ちるだろうね。
 
 あと、ユネとサクヤのアフターがほとんど一緒なのも仕方ないとはいえ残念だったかな。
 そういえば、ループが何回もできるから、緊張感がないという意見も見たけど、正直自分は、かなりユネの状態が怖かったし、個人的には終盤までユネが犯人説も本気で思ってたから、緊張感は普通にあったwでも、主人公があまり有能ではないので緊張感が薄れてしまったというのは少なからずあるのかもしれないね。

 2周目を友人と一緒にやっていたのだけど、序盤がすごい退屈だと言っていたので、本作の様な、序盤は伏線張りに徹して、後半の一気の回収を楽しむみたいな作品が苦手な人は向いてないとシンプルに思うね。個人的には、この形式はとても好みだから、大満足だったけどねw

まとめ
 人生初のエロゲーとしてプレイした本作だけど、一番最初からこのクオリティに出会ったおかげで、今の自分はエロゲーに夢中ですwでも、逆にこのクオリティの作品には残念ながら現状出会えていませんw
 最後に、なぜ97点なのか。マイナス面をはるかに凌駕するプラス面を持っている本作を99点、何なら100点をつけてもよかったんですが、残念ながら、自分の中ではこの作品と競合してしまう作品を知っています。それは、自分の100点のうちの一本である。
STEINS; GATE です。
 この二つの作品。構成が似ています。序盤は世界観の説明や伏線を張る段階なせいで少しつまらない。しかし、中盤からの怒涛の展開。そして、最後は大団円と。とても似ています。
 二つの作品を比べた時、両者とも優れているところはもちろん違います。しかし、個人的にはSTEINS; GATEのほうがご都合主義がなく、欠点が無いと考えます。したがって、99点、100点はつけれないと思いました。
 そして、自分には、本作の主人公があまりにもシナリオに操られてるように感じてしまい、97点としました。
 この作品をSTEINS; GATEより前にプレイしていたなら、もっと高い評価だったかもしれませんね。

しかし、まぎれもなく自分がやってきたエロゲーとしては一番であり、ノベルゲームとしてみても一番です。