ジャンル:人生蹂躙ノベル 誰の人生?→みつ希の人生。誰が蹂躙するの?→プレイした僕
エピローグまで見て虚脱感に襲われて、一気に寝てなにもかも忘れて、こんなゲームプレイしたこと忘れて
感想も書かず、エロスケのIDも消して全てなかったことにしてしまおうと不思議な衝動が頭の中で大きくなった。
でも見ないふりと言うのもこのゲーム、いや、藤みつ希という女の人生に対しての冒涜であると考え直して何か書こうとしている。
いきなり話が脱線してしまうのですが、皆様「絶歌」はご存じですか、例の「元少年Aの手記」です。
僕はあちこちで反応を見てはいてもどうしても少年法の庇護の元のうのうと暮らすクソガキと、下衆な出版社に金を落とすのが嫌で、買っていないのですが、未読の分際でも筆者のクソガキに対してこう言いたいんですよ。
なぜ人を殺してはいけないか。
それは、他人の「可能性」を、他者が故意に奪う権利はないから。
クソガキはとりあえず今も生きていて、自慰みたいな自伝出したり、僕の罪は生涯償えないくらい大きいんだ~~~だの、自己陶酔したり自由に出来る訳じゃないですか。
殺された方は当たり前だけど出来ないんすよ。
たとえ死んだ方が世のため人のためという極悪人でも、
今すぐ死にたいと思い詰めてる不幸な人でも、どんな人だったとしても、第三者がいきなり殺してしまったら
不幸な人は、数日後には立ち直って楽しい日々を送るかもしれない。
極悪人は心を入れ替えて人のためになることを始めるかもしれない。
そういうかもしれないが全部根絶してしまうんですよ。
その可能性の搾取こそ、僕は殺人の一番の罪だと考える。
なぜこんな話をするかというと、このご主人さまにあで、エンディングのスタッフロールが流れるまでを見て思い浮かんだのが「絶歌」を取り巻く環境のことだったんです。
いきなり話が脱線してもうし訳ない。
みつ希のご主人様・・つまり由貴にとっての父で、浅見にとっての上司であった男は、みつ希の視点では強烈に美化されている。
あとあと暴露される内情で彼が救いようのないダメ男だというのがわかる。
だからといって、みつ希から彼を奪ってよかったかというと、全然そんなことはなかった。
不倫を楽しみ、家族に心を開かないクズ父親でも、みつ希にとっては唯一の理解者だった。
部下の金に手をつける最低の人間でも、みつ希にとっては大切な恋人だった。
彼が金銭横領の件で社会的に制裁を受けたりしたならば、みつ希の精神だってあそこまで行ってしまうことはなかったと思うんですよ。
全てが暴かれる前に、由貴が衝動的に奪ってしまう。
だからいろんな事情は隠され(あるいは闇に葬られ)、
断片的な情報しか入ってこなくなり、みつ希の精神は混迷を極めた。
由貴の罪は、理解できないものを短絡的な行動で『消した』こと。
浅見の前では「守る」と言ったくせに、その後の由貴がみつ希に対してなんのアクションも取らなかったのは、
予想以上に、発狂したみつ希が、手に余る存在だったからでしょう。
そこで由貴の思考は、生きるため、自己保身のためのいいわけと軌道修正を始める。
浅見が最後のプレイ中に指摘したことそのまま。
殺人自体がどうしようもない修正不可能な事実だったとしても、たとえば由貴がそこで一念発起してみつ希の【ご主人様】として君臨していたらどうだったろうか。
日々錯乱していくみつ希の部屋に入り込んで
「終わったことで泣くんじゃねぇ!」あるいは「ヤツは俺が殺した。なぜならお前を愛しているからだ!」
とレディコミの間男みたいなセリフで愛をささやき、その後に「姉さんは俺が守るよ(はぁと)」とダブルバインドし、仕上げに「オラオラ!親父のとどっちがいいんだ?ああん?!」と日々、みつ希がダメ親父のことを忘れるくらい犯しまくれば、なんとか、なった・・のかも・・・しれない。いや、童貞の小学生男子には無理か。
じゃあパターン2として浅見があのとき由貴を助けるのではなく即座に通報し、豚箱に(小学生だし少年院か)入れられた由貴を見送りつつすぐさまみつ希にアポを取っていたらどうか。やあお父さんのことはご愁傷様です。ところでキミ、お父さんとヤリまくってたんでしょ(はぁと)とかなんとか言ってつめよって、錯乱するみつ希がダメ親父のことを忘れるくらい犯しまくれば、なんとk・・いや、うん、これなんとかなるじゃん。なんとかなったじゃん!これにしよう!ゆにっとちーずさんこのアナザーシナリオ書いてくださいファンディスク作って、ロリみつ希がヤングな浅見とドスケベセックスしまくりの救済ルートをお願いします!!!!!!!!
こんな考えは全部無駄で実際のところは、どうにもならなかった。
ならなかったけど、でもね、たとえ無駄でもこういうことを考えないと頭がおかしくなりそう。
いい歳したオッサンがね、みつ希のこと思うと泣けてきちゃって・・・・。
あんまりに悲しいよ。藤みつ希・・・・あなたは悲しい人だ。
作中のみつ希は、笑顔と言ったら、困り笑いのようなぎこちないものか、人を小馬鹿にしたようなものしか見せない。
エンディングの絵で、おそらく大好きな父と過ごしている彼女の満面の笑みと、
それ以降の、シールみたいに張り付いた作り笑いしかしなくなった姿を見てしまうと、もうどうしようもなくなった。胸が痛い。つらい。叫び出しそうになる。
奪われた親父の命と同じく、みつ希のあの笑顔だって戻ってくることはない。二度とない。
ふと立ち返って公式を見てみるとジャンルは「人生蹂躙ノベル」。
みつ希が、由貴や、母親(そして、父親)によって、蹂躙された、という見方も出来るし
浅見が、みつ希と父親によって、蹂躙された、とも見える
だが、みつ希の人生をこうして眺め、肯定でも否定でもなんでもこうやって言葉にして意見をすること自体が、大きな蹂躙に思える。
なんで自分含め様々な人がこの批評空間やアマゾンレビューでゲームや本に対して辛辣なことを言えるかというと、それが商品で、こちらは買ったからだし、
なにより、フィクションだとわかりきっているからだ。
「こんなことはありえない」
「こんなのはウソくさい」
ていう批判が出来る。それがいい結果につながることだってあるだろう。
「パコられ」のときは、痛々しくリアリティあふれた話だと思いながらも、心のどこかで距離を置いていたから、
(パコられのレビューで書いたけど)途中で「彼女の人生は物語じゃないんだぞ」と主人公が不安になるシーンでハッとした。
でも、最後には主人公惇が責任を持ってくれ、僕には君を背負えないと自分の意志で言ってくれたのだ。
だから僕のような者はゲスにもレビューをして点数をつけた。
他のプレイヤーだって、あのつらすぎる話を、なぜ受け入れているかと言うと、それがあくまで、最後には惇が幕引きをしてくれる他人事だったから、なんだと思う。
この作品には、その惇に該当する人物がいない。
みつ希という女の子が生まれて、そして死んでいくまでを、僕は第一線の傍観者(変な言葉ですが)として見るしかなくなった。他の人に責任転嫁できない。
それも人ぞれぞれで、彼女の人生に対して「ふーん」という気持ちだけの人もいるだろうし、そっちの方が精神的に健全なのだろうと思う、エロゲーの女の子にいれこんで泣くよりは・・・。
だが、一度でも感情移入し、引き込まれてしまったら、もう、他人事だなんて思えない。
まるでこの少女を小さな頃から知っているかのような錯覚を抱かされ、彼女を追いつめていった世界に対して義憤のような憎しみを持ち、そしていくら憎んでも世界が変わることはない、というあきらめを持つまでを、何度も何度も反芻しなければならない。
だって、アンタ。
「売春婦」というあだ名を、イジメでつけられて、悲しむのではなく、
「売春婦は自分で自分のお金を稼いでいるから偉い。早く大人になって本物の売春婦になりたい。そうすればいじめられることも親に怒られることもなくなる・・・・」
こんなふうに考えちゃう小学生女児を、あんた、笑えるか?
イジメられているだけなのに、あだ名のせいで「性的逸脱行為の可能性」だとか言われて、小児精神科への紹介状なんか出される少女を、あんた、かわいそうだね、で片づけられるか?
親に連れて行かれた精神病院で、ボケて変なことを叫び出す老婆を見て、「ああなるまえに早く死ななきゃ」なんて思い詰める女の子を、あんた・・、いや・・・。
そんな生き地獄みたいな世界で、自分の話をまじめに聞いてくれる人がいたら、そりゃあ、すがりつくだろう。
かけがえのない存在になるだろう。
それが彼女にとっては(とてつもなくダメ人間な)父親だったという、ただそれだけの話。
怒っていいはずだ。
あれだけ搾取されてきたのだから、みつ希は怒って、
たとえば「ととの。」の美雪みたいに、HAIN劇場の銃持ちみたいに、怒り狂って、この世の男や画面の前のプレイヤーに怒鳴り散らしていいはずなのだ。
なのに・・・
「この世界に、心から憎む悪者なんて存在しないのだ」
そう言ってどんな悪人でも、時間がたてば許すことができてしまう、いやな言い方をすれば優しい心の方を憎んだ。
「馬鹿な私が許しちゃう前に……」
悲しい、悲しいよ。
みつ希あなたは悲しい人だ。なぜ由貴を憎まない。
その場でカタキを取るべく殺したってよかったはずだ。
・・・・いや、違うか。
たとえ一時の憎しみで殺しても、その後は延々と「愛する人がいない地獄」が続くからか・・・・。
彼女にとって、死者はあくまで死者で、
かたきなんてものは、生者のための方便でしかないと、馬鹿になりきれないあの精神で、わかっていたのか・・・。
最後に追加されるスタッフコメントを読むと、しばらくゆにっとちーずの活動は休むそうだ。
ある意味安心かもしれない。
残念だしまた戻ってきてほしいとは思うが、こんな作品を作りまくっていたら、なにかが壊れてしまうだろう