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yatsuさんの勝 あしたの雪之丞2の長文感想

ユーザー
yatsu
ゲーム
勝 あしたの雪之丞2
ブランド
elf
得点
95
参照数
484

一言コメント

暖かい、家族と友達と恋人達の物語。 ボリュームも満点で、思った以上に楽しめました。学園もののライトノベルとかが好きなら、充分に満足出来る作品だと思います。(軽くネタバレです→)

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

気にはなっていたけれど現在のエルフの情況から、ずっと放置していた作品を先日購入しました。(滅茶苦茶安くなっていたので……)

 ルートによっては、「(選択肢の)正解を選ぶのとそう大差無いのになんでこんな展開になるのか」っていう不条理さは(更に攻略の難しさの不条理さも)ありますが、非常に良くできた作品だと思います。人と人との繋がりが結構密で、前作をしているとさらにおいしさ倍って感じです。

 上に挙げた以外に大した不満点は在りませんが、少し。
 ヒロインは五人いますが、残念な事に雪之丞シリーズとして今作を見るなら、その内の二人はちょっと割りを喰らった位置づけに有ります。
 それと誰が使うのか一生ものの謎になりそうなあそこアップモードの存在の継続。
 権蔵(勝)による晶子凌辱妄想の存在。等くらいです。

 良い点は沢山有りますが、何と言っても丁寧に作られている事でしょう。学園ものなので、学校での妹と友人達との日常がメインに話が進んでいくのですが、それに劣らず家での会話もふんだんに用意されています。父親の出番は少なく描写も少ないのですが、母親は毎日のように画面に現れ、主人公と掛け合いをして、その心情をこちらに伺わせてきます。掛け合いはそう面白い物ではないのですが、エロゲでは、家族の描写が極端に少なく、ただの主人公の付属物的なものとしか描かれていないものが蔓延している中で、一際輝いているように思えます。その為か、学園生活が微妙にリアルで、権蔵やあきらとの掛け合い、晶子への軽口、こちらもどれもそう大した物ではないのに、自分の高校生時代を彷彿とさせて、思わず噴き出してしまったりする事が多くありました。
 主人公が将来の事や気になる女の子の事で悩みまくるのですが、それもきちんと描かれていて、その焦燥や不安に懐かしさを感じると共にこちらも胃が多少痛くなるのが難点ですが……
 登場人物も一癖も二癖も有り、そして魅力的で、主人公も中々の好人物として描かれており、楽しい学園生活、というのが充分に満喫できると思います。ちょっと主人公の設定が特殊で、ボクシングに対する情熱に置いてけぼりを喰らうとは思いますが。

 前作をしなくても楽しめると思いますが、前作のあの鬱屈した雰囲気をこれでもか、と味わった後で今作をすると感慨も一入です。 雪之丞ワールドを締める最後のエンディングも、また実に納得の行くもので、満足に充足感を得られる物となるでしょう。

 久々にこのゲームをプレイできて良かったな、と思える作品に出会えました。(なんでこの作品をずっとほったらかしにしていたのだ、と自問自答)
 6,500~7,500円。この値段で買っても、損した気にはならないと思います。(私は3,000円でワゴンに入っていたのを買いましたが……)