近年読んだゆずそふとのシナリオでは頭一つ違うぐらい良かった。ブランドを変えて出しているのも毛並みの違う作品という意識があってだろうが、惜しいのはゆずそふとに期待している層が望むものになっていない。あと、主題歌が何度聞いても飽きないぐらい良い。
個人的にはすごく満足が出来た。
朝しか活動出来ないヒロインと夜しか活動出来ないヒロインに秘密があり、掘り下げることで主人公やヒロインの感情表現がより豊かに表現されるという、いわゆるキャラゲーとして会心の出来に思える。
ヒロインの秘密といっても、中には救いようがなくシリアスなものだったり、解決が困難なものもあり、展開が引き締まっていた。
神様が宅急便で送りつけられたり有名校の男子生徒と入れ替わっちゃうような面白展開ではなく、脳を題材にしたSF世界観を元に起こってしまった悲劇がメインストーリーになっているのも良かった。
ゆずの中では「コードを解読せよ!」がキャッチコピーのゲームが一番好きで、世界観はすごく似ていた。
繰り返しにはなるが、引き締まった世界観に可愛いキャラが感情豊かな表現を爆発させるキャラゲーとしては、かなり良い線行っていると思う。
特に気に入っているのが、メインヒロインが社会の悪を肯定する発言をしていたところだ。
盗撮や個人サイトを批判するのではなく、それに自分の経験から基づいた共感を示し、かつ理解されたい=理解されなかった後ろ暗さを持つヒロインは今のエロゲだと結構斬新で、社会的な切り口が気持ちよかった。
それに対するいわゆる悪役の説明も、わりと納得のいく話だったが。
惜しむべくは、これを悪と切り捨てて、正しさだけをぶち込む主人公が残念すぎる。
犯罪は許せない=理解出来ない、弱さが元に彼女の人格を奪ってしまった=その罪を告白出来るのか、この思考回路があまりにも痛恨だった。
18禁スレスレのシナリオを読みに来る連中は正しい話が読みたいと思っていないし、まして説教のような話を苦痛に思う。
この主人公は終始正しい行動と正しい正論しか言わず、ダークヒーローの要素が一つもない。
イチャラブゲーならまだしもエロなしのシナリオゲーなのだから、もっと後ろ暗い部分に切り込む展開を見せて欲しかった。
それを主人公がやるべきなのに、特に城門の後ろ暗さを理解もしなかったことは残念極まりない。
だから終盤の展開が淡泊に見えて仕方がなかった。ありきたりな展開になることが見えてしまったから。
シナリオゲーは作者が一人の方が、信頼出来る気がする。
複数ライターだと責任の所在が不明なので、どうしても出来が荒くなっている印象がある。
個人的には(繰り返しにはなるけれど)ゆずそふとの中ではE×Eが一番好きなので、この作品はわりと良かった。
残念なのは、せめて18禁要素は入れとけよという、これは姿勢としてエロゲは切り捨てますみたいな所が見えてしまう。
盗撮を肯定することはないし一回もしたことはないが、そういう趣味も理解出来るという主人公であって欲しかった。
この手の主人公がハーレムを形成する話はありふれ過ぎているので、この作品はもういいかなと思う。
そうは言いつつ、改めてこの作品は本当に良かった。ここ数年単位でみて、印象に残る作品だった。
それは単純に、ヒロインが好みだったというそれだけの話かもしれない。
ただ刺さる人には刺さるので、自信を持ってオススメしたい。