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yamatsubameさんのもののあはれは彩の頃。の長文感想

ユーザー
yamatsubame
ゲーム
もののあはれは彩の頃。
ブランド
QUINCE SOFT
得点
94
参照数
1908

一言コメント

個人的にものすごく評価が高い。当初かなり感情的に書いてしまったので、まとめ直した。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

 このゲームの面白さは次に何が起きるか分からないワクワク感。
 まず舞台設定がスゴロクで、サンプルがないため展開が読めない。
 敵が誰なのかも分からず、展開によって仲間も敵も180度変わる。
 この世界で勝つことが、本当に勝利なの?という疑問が、最終ルートを終えるまで拭えない。
 このような前例に見ない展開が、手に汗握る展開をもたらしている。

 よくヒロインがなぜ主人公を好きなのか分からないという意見もあり、それは良く分かる。
 しかしこの作品を好むユーザーは恋愛に重きを置かず、シナリオに惹かれている。
 だから登場人物が誰が好きで嫌いかは些細なことで、とにかく犯人と結末だけに惹かされ続けている。
 おそらく製作者も恋愛にさして興味がなく、恋愛要素がシナリオを盛り上げるための舞台装置でしかない。
 サブヒロインの一人がヒロインになっていないのは不可解だが、それでも完成品として出したのは、このゲームがユーザーにヒロインを攻略させるためのゲームではなく、シナリオを楽しんで欲しいという意図で出しているからなのだろう。

 特にポイントが高いのが男キャラを上手く使えていること。
 昨今、親友ポジションを出さなかったり、女性に転換させたり、逃げる。
 男を上手く描かなければシナリオが盛り上がらない。
 なぜならエロゲにおいて女性キャラは無条件の仲間で、男性キャラは敵あるいは親友だからだ。
 もう暗黙の了解として、エロゲにおいて、女性キャラが主人公に惹かれることは確定的である。
 だから、男性キャラを上手く描かなければ、敵がいなくなるためシナリオが盛り上がらない。
 敵がいなければ努力して栄光を得る、このプロセスがなくなってしまう。

 最後に、主人公がモテモテであることが不思議であるという意見を多く耳にするが、個人的には納得出来た。
 それは主人公に好感が持てたからだ。
 いつも明るく前向きで、状況を打開しようとし、打算がなく好感の持てる好青年だった。
 人生においてどん底を経験し、今を笑って生きる人間は、強い。
 些細なことで迷ってしまうのは、自分も含めてね、心が弱い。
 もうこれ以上下はないと笑って生きる主人公は、憧れのようなものも感じ、心の強さを感じた。