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yamatsubameさんの面影レイルバックの長文感想

ユーザー
yamatsubame
ゲーム
面影レイルバック
ブランド
ハイクオソフト
得点
75
参照数
2210

一言コメント

まあ、良くはないですね。ありがちな学園げーにはなっていませんが、何とも言い難いですね。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

 率直に言って、フルプライスの出来ではないと。
 そもそもプレイする前からゲームへの期待値を全力で削ってくる。箱を開けた瞬間エロゲに見慣れたアンケート用紙の姿はなく、次回作を出すつもりがないのか、今作は投げやりなのかと、あらぬ妄想を膨らませてしまう。インストール画面で出てくる容量は2.3GB、おいおい「さくらさくら」より小さいサイズってどういうことだよ、技術の発達ってすごいなぁなどと思わず現実逃避もしてしまう。
 だが、ひとたび起動すれば10周年記念作という金のロゴ文字がくっきりと表示され、エロゲでは稀なアイテムモードという回想とは別のシステムを発見させられる。面影という前作をそれとなく意識させるタイトルからも、過去の楽しいエロゲを思い出させられた気がして、ああそうかやっぱり自分は期待してるんだなと、思わず微笑んでしまう気持ちに駆られた。
 
 それでも内容は残念だが、テキストの人称がバラバラという破天荒。これをオリジナルティなんだ自分に言い聞かせれば、受け入れられなくはないのだけれど、やはり正志の性格にはコイツ誰なんだよと頭を抱えてしまう。特に悲惨なのは妹のなのはで、前作では正志の服を恥ずかしそうに掴む写真が暴露されたり、弁当にメッセージをつけるなどという奥ゆかしいアピールが印象が強かった。が、成長の前にはどうしようもなかったのか、奥ゆかしさは影をひそめ、押しの強い純粋無垢な明るい妹にクラスチェンジしており、イメージと違うギャップには狙いが何なのかと小一時間かけて問い詰めたい気持ちになった。ついでにテキスト浸過率0を初めて使った。

 もっとも、期待したのでこういう悪い部分が目についてしまったが、単体でみるとそれほど地雷ではない。容量のわりには(いや、公式のCGに夏祭りとクリスマスのCGが載っていて、夏冬と1年を通したゲームになるのかと思ったら、まさか夏編とおまけの冬編に分けられているとは思わなかったが……)それなりのボリューム、また綾とメイドにルートがあるという嬉しい誤算、ED後に内容密度の濃い後日談が用意されていて、それなりに力を入れていた様子は伺える。学園モノのありがちハーレムでお茶を濁さず、男のキャラを立てて物語性で勝負しようとしていたことも、個人的にはポイントが高い。さっきから、全然埋まらない最後のCGを埋めるまでは、アンインストールしないぞというぐらいにのめり込んでいる。
 
 誤算で綾が良いキャラをしていたので75。がっつりアニメにはまってるキャラは正直引くけど、その手前で止まっているキャラが良い味出すとは思っていなかった。「さくらさくら」の誰かが登場する、あるいはなのはのルートがあれば更に良かったけれど、まあさくらFDよりは納得できる出来だったのでこの点数。極端にハズレではない。

 ストーリー紹介から文章に不安を感じていた。名作を作ったブランドなので、そういうことにしておく。