ネタを知らずにプレイすれば大地雷だろうけど……。
寝取られでもガチグロでもなく純愛美少女ADVをウリにする戯画、今作ピンク髪ロングの女の子と朗らかな活発さを感じる茶髪の女の子がパッケにいて、小さなさくらんぼという可愛らしいタイトルから、当然そういうゲームだと想像する。
つまり、キャラゲーの萌えゲー。多少シナリオに重み軽みがあれど、結局キャラの魅力を推すようなゲームに感じる。そう、雰囲気からはそう感じる。事前にレビューを読み、シナリオに難点があることを知らなければ、当然キャラゲーを期待して買ってしまうだろう。シナリオライターも無名だし、戯画というブランドイメージからも地雷はありえても純愛を逸れることはないと推測してしまうだろう。
ああ、ご愁傷様である。キャラゲーを期待し買ってしまった18年前の人たちはご愁傷様。
どう考えても問題になるのは【王詩千晶シナリオ】である。
主人公の幼馴染である王詩千晶。
フルートが非常に上手く、音楽の先生による個別レッスンも度々受けていた。
同時に、その個別レッスンの時に見せる千晶の表情が、女の子のそれであり、主人公は自分に向けられることのない表情に胸を締め付けられていた。
つまり主人公は、千晶が音楽の先生を好きだと勘違いしているのである。
そしてある日、主人公は嫉妬を爆発させてしまう。
音楽の教師が好きなんだろう、二人きりでレッスンまでしてと。
嫉妬を吐露する主人公に対して、千晶が侮蔑の表情で一言。
「そんな風に思って私たちのこと見てたんだ…私たちはそんなんじゃないのに…」
千晶は音楽を上達一心で練習に打ち込んでいた。
音楽に対して真摯な気持ちで取り組んでいたが、その健気な精神を蔑ろにされ、あげく恋愛という目でしか見られていなかったのである。
そこに千晶は失望を隠せないでいる。
音楽が上手くなりたいだけなのに、なぜそんなことを言われないといけないのかと。
千晶の言葉を受けた主人公は、海より深く反省する。
嫉妬で気の狂った発言をしてしまったと謝罪する。
言うべきことはではなかったと。
素直になれない二人のすれ違いが生んだ悲劇である……。
……と、思われたが、実際は違う。
千晶は本当に音楽の先生を好いていたのである、
文化祭が終わると二人がキスをするような演出があり、千晶は先生と二人きりで旅に出ようとする。
当然、さすがに二人きりの旅行に関しては主人公が暴れる、やっぱり千晶は音楽の先生が好きなんじゃないかと。
そして千晶が反論、で根底にある理論がこれ。
「私は康一も音楽の先生もどっちも好きなの! どっちかなんて選べない!」
……いやまぁ、うん、そっすか(笑)
結局先生と一年かけて旅行に行き、帰ってきて千晶が自分の想いを康一に告白し結ばれるというED。
これが本当だから地雷のゲームだ。
初見でこれを目の当りにしたら、大暴れして当然という結末である。
まぁしかしシナリオの流れからすると、実はかなり自然な流れでもある。
千晶はシナリオが始まる以前、康一の両親の死に関与した大きなトラウマがあった。
そのトラウマを克服するよう、逃げるよう、メキメキ上達したフルートを教えたのが先生なのだ。
つまり、先生とは恋愛ではないにしても、深い師弟を超えた関係がある。
だから久しぶりに再会した康一はむしろ部外者であり、簡単に千晶と恋愛関係になれる立場ではないのである。
千晶にも義理人情があり、自分を支えてくれた先生を裏切れないというしかるべき感情がある。
結論として一年かけて音楽の先生を好きになれず先生ドンマイ(笑)と片し、むしろ本当に大切な人を振って康一の元に戻ってきたという純愛に感動するか、あるいはクソゲーじゃんで終わるかは読み手次第のところもある。そういうフォローも出来なくはない。
しかし、いずれにせよキャラゲーではないし、千晶を好きになれる要素(外見がかわいいという理由を除いて)がひとつもない(かわいいという理由を除いて)。
しかも実際クソゲーである。