ErogameScape -エロゲー批評空間-

xlさんの偽りの教室の長文感想

ユーザー
xl
ゲーム
偽りの教室
ブランド
Dark Side
得点
80
参照数
1328

一言コメント

「校内で人殺し」という設定を十分に生かしたサスペンスの快作です。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

まず、普通の学生であり、ただの心優しい女の子であるメインヒロインが
不幸にも誤って人殺しになる、という設定が斬新で、ツカミはばっちりです。
主人公は彼女をかばう共犯者となり、常に周囲の疑念の目に晒されながら学園生活を
続けることになります。
一般的なエロゲーの主人公は、善良な人か、非道な凌辱者か
割りと立場がはっきりしているものですが
基本的には善良な一般人でありながら、犯罪者として追い詰められていく、という
主人公は珍しいと思います。
「もしも自分が犯罪者になったら…?」という得難い興奮に
ついつい先の展開が気になって、作品世界に惹き込まれてしまいます。
超能力などが無い、現実に即した世界観なので、死体処理についての相談や、
疑いからの言い逃れなどの会話内容が、妙にリアリティがあってドキリとします。

このゲームの最大の見どころはキャラクターに秘められた狂気でしょう。
徐々に不審な挙動を露わにしてゆく者、ふとした瞬間にガラッと豹変する者、
各種取り揃えられていて飽きさせません。
表面上は学園生活ですが、いつ誰が狂気を見せるのか、常に不安と緊張感が漂います。
どんでん返しや、苦いバッドエンドが随所に用意されているのも良いです。
バッドエンドを迎えても、フローチャート機能でシーンの繋がりが分かりやすいので
やり直しもそれほど苦になりません。

ストーリーは牽引力があるのですが、エロの方は導入が強引なものが
見受けられます。一定の質と量を持ったエロを投入しようという制作側の姿勢は
エロゲーとして好印象ですが、せっかくストーリーが良いので
エロとのつながりを、もう少し自然にして欲しかったです。
エロ自体はCGの塗りにクセがありますが、構図もエロく、数もあり、
なかなか良いです。

総じて、背徳と狂気を描いた力作です。
終わったあとに心に残るものがありました。