英国女王の信頼を受けた伯爵令嬢エミリーは「女王の探偵」という称号をもらう。そして、探偵を育てる学園に通いながら、事件を解決していく中で、名探偵の子供たちと親交を深めていく話。良作。制作は花梨。
個人的な満足度でなら、アマゾンで5ツ星評価つけてもいいくらいです。
点数が低いのは、18禁要素無しと、ゲーム性の低さのためです。あとは、気にするほどではないですが、強制スキップができないなどのシステムの使いにくさがいくつかあったためです。
ここ最近は、悪くないけど期待していたほどじゃないなーという乙女ゲー多かったのですが、今回はかなりはまりました。
基本的なシステムは、選択肢を選んで、好感度などをあげていく方式のシステムです。選択肢は時間制限などがあり、推理しているかのような緊張感を少しは感じさせるようなものになっています。
ミステリーとしては本格ものではなく、オマージュ的なものを入れながら謎を簡単にしたもので,「名探偵が多すぎる」を子供向けととられてもおかしくはないものです。
そもそも、探偵の子供たちで、探偵の卵という設定なので、登場キャラたちが未熟なのはそれほどおかしくはないです。
むしろ、未熟だからこそ、いろいろ悩み、葛藤して、成長しようとする若々しさが物語の魅力となっています。
そうした中で、ちょっとづつ仲間としての絆を深めていくのが魅力的です。
ミステリ要素を含んだ青春ストーリーというほうがいいかもしれません。
少し幼い感じのキャラクター絵のせいもありますが、全体的に極端な悪人の描き方をしていないため、NHKの子供向けアニメかハウス劇場のような印象を受ける作品となっています。
話数形式の形をとっているのも、そうした印象を強めているのかもしれません。
ワトソンルートでは、「なぜ気づかない?」という疑問もあるのですが、アニメ的お約束として、
ゲームでは表示されなかったけど、「マスクで顔を隠して、声色を変えていた」と脳内変換をしておくことで無理に納得させておきましょう(笑)。
話自体は良作で、今作で築いた仲間との絆を元に、さらなる事件に挑む話の続編も作れそうで、期待したいところです。
物語の前提として、今作で登場する名探偵や怪盗の子息が同時代に生きているという大改編や銀髪の日本人とかがいるので、現実的な19世紀世界というよりは
別世界だと考えたほうがいいでしょう。
そもそも、ルパンとホームズで本来は20歳差があり、ルパンは車や潜水艦も使い、第一次世界大戦くらいまでを活動のメインとする20世紀を舞台にする怪盗だったりします。
その他の探偵も大体、10年から20年くらい活動時期がずれます。
時期的な話だと、ブラウン神父のほうがまだ適任だとは思うのですが、日本での知名度とかキャラの動かし方で不便なのでしょう。
ただし、ライターさんは、元となるミステリ小説を読み込んでいるのか、登場人物たちのエッセンスというか本質的なところはよくつかめていると思います。
ホームズの妹「エノーラ・ホームズの事件簿」やホームズの姪「クリスティ」などのシリーズなどがありましたが、そういう作品をイメージするといいかもしれません。
主人公のエミリーも、頭がよいというよりは、善良な積極性や行動力、無茶な行動や周囲への信頼といった面で事態を動かすというタイプで、好感がもてます。
「私はどんなものでも食べて生き抜いてみせるわ!」と豪語するお嬢様(?)なので、馬鹿にしていいのか、逞しさに感心していいのか迷うギリギリ手前くらいですが。
母親が「女王の友人」で「多くの問題を解決した」という、三浦真奈美さんの「女王陛下の薔薇」シリーズのような主人公だった背景を背負っていて、そのせいで実力以上に評価されています。
まじめな話、爵位や財産、親の七光りで評価されている面もあり、純粋な探偵の能力は低いです。
ただし、これは悪い面ではなく、「純粋な探偵能力」とは「真実を暴くだけで、人を救えるものではない」とされるミステリの常識に対して、
気持ちや財産の使い方で「人を救える探偵」としての面を強調するタイプのキャラ造詣だと思われます。
鈍感でありながら、善意を信じて積極的に無謀な行動をとるので、「なぜ執事さんが口やかましくなるかわかる気がする」と作中の人間にいわれまでするお嬢様です。
そして、この主人公の性格が、物語を明るく前向きなものにするのに一役買っていると思われます。
個人的な攻略キャラの好感は、ジャック>ワトソン=明智>ホームズ>ルパン。ルパンも魅力的といえますが、ほかのキャラほど強い葛藤や成長をしていないので、少し落ちるイメージです。
ルパンはなんというか、最初からある程度精神的な完成がされているために、他のキャラのルートで「壁役」としているときは魅力的ですが、自分のルートだと見せ場が弱い印象です。
ちなみに、最初は外見やらで、いかにも駄目そうだったジャックが心を開いて成長していくのが、魅力的で、一番好きになりました。
二人合わせて、黒社会コンビなので、「ノワール」組という感じでしょうか。
最初のほうで、NHKアニメか子供向きみたいなことを書きましたし、そんな印象与えるつくりですが、けっこうその当時のイギリスの問題や、現代に通じる「悪い」部分も描いています。
たとえば、ジャックは貧民街の生まれで、そこでの苦労やコンプレックスを背負っています。明智は「外国人」ということで「差別され、正当に評価をされないこと」の苦しみを、
ホームズは「親の七光りからの影響」を、ワトソンは「できる友人や仲間との能力差」に対して悩んだりします。
19世紀を舞台にしながら、現代に通じる社会や個人の問題も盛り込んでいるところが感情を揺さぶれてよい物語となっています。
また、敵となる登場人物やサブキャラも魅力的な人間として描かれていて、好感がもてる丁寧なつくりになっています。
最初に執事から質問が出されるのですが、その時に「落ちているお金拾ったが、それを交番に届けるか?目の前の貧しい子供に与えるか?」と
「愛する人が重い罪を犯して、死罪を免れないが、一緒に逃げるか?自首を勧めるか?」という質問が出てきます。
この質問はどう答えても、攻略不可能になるとかではありません(ちょっと相性でクリアしやすさに差はでるようですが)。
これ、けっこう作中の登場人物たちの行動や考えとからむ重要な考え方です。
どちらかというと、「冒険小説」ということで、犯罪者でもあり探偵でもあったルパンシリーズの根底にあった考えかただとは思います。
以下は、自分の考えであり、違う考えを持つ人もいるとは思います。
1「落ちているお金拾ったが、それを交番に届けるか?目の前の貧しい子供に与えるか?」
これはなんとなく感情的に目の前の子供を助けるにしたくなります。しかし、それは本当に「正しい」でしょうか?
その拾ったお金が闇金融からお金を借りて、もう追い詰められた人がなんとかして工面した返済のお金という場合はどうでしょうか?
そのお金を使ってしまえば、目の前の子供を助けるかわりに、誰か別の人を不幸にするかもしれません。
たとえ、善意でも、考えなしの行動は、人を不幸にするかもしれない。人を助けるならば、誰をも不幸にしないよう広い視野をもつことや行動の責任をとらないといけないということです。
2「愛する人が重い罪を犯して、死罪を免れないが、一緒に逃げるか?自首を勧めるか?」
これも、自分の好きな人や大切な人なら、そちらを優先して罪に目をつむる方を選びたくなります。
しかし、それは本当に選んでいいのかという点があります。「殺人は、その人間の未来の可能性を奪うからこそ、もっとも重い罪」という考え方もあります。
そこに、どんな理由があろうとも、個人の感情や都合で逃げようとすることはやっていけないと思います。
もし、誰もが、自分の都合で殺人を正当化して、法を破ることを選んでしまったら、社会はなりたたなくなってしまいます。
法の枠内で闘うことを選ぶべきであって、破ることを選ぶべきではありません。破ることを正当化したら「卑怯者」になります。
作中では、「生まれ」でいいわけした「ボーロック」などがこれにあたります。自分が悪いことをすることに対して、言い訳をして、責任をとらないとああいう人間になるというひとつの例です。
逆に、ジャックは「責任から逃げない」ということで、魅力的な人間として描かれています。
ちなみに、上2つは、どちらも、私の考えで選んだ場合は、損をします。それは「賢い」とはいえないですし、「現実的」ともいえないかもしれません。
しかし、これはこの作品のルパンがホームズにいう台詞に通じます。
「自分の戦い方に誇りを持っている。」
「勝負において、大切なものを見誤ることは絶対にしたくない。その結果がたとえ敗北だとしてもね」
たとえ、それが「損」でも「負け」でも、選ばないといけないというありかたもあります。
このへんの考え方は、原点のルパンにあるもので、強い組織と結びつくのを拒否して、平和のために生きようとするルパンが
「きみに現実を見る目が欠けているのは残念だが」とかけられた言葉に対して、「理想主義のほうがずっとすばらしいさ」と返事をしています。
そのへんの登場キャラの骨子がしっかり原典から引き継がれているところが、この作品を単なるパロディではない魅力あるお話にしています。
ほかでは、貧しい子供たちの教育にルパンが熱心だったりするところも、ルパンジュニアにひきつがせています。
気なるところで、ルパンジュニアのお母さん予モデル予想です。
「お姫様だが大胆」「子供を生む」という部分からは「カリオストロ伯爵夫人」の「クラリス」を連想しますが、
「共同で盗みを働く」「早死に」という設定は「クロチルド」を連想します。
いろいろかけあわせたオリジナルヒロインでしょうか。
まあ、原作ルパンがそもそも二股かけたり、50前まで恋愛して落ち着かないので、新ヒロインが出てきても別におかしくないのですが(笑)
音楽は、OPの元気な曲やEDの落ち着いた曲、作中で使われる曲などとてもよい曲です。
しかし、ハドソンとマープルはキャラソンまでありながら、あまり活躍をしないのは、ちょっと意外でした。
マッケンジー先生とかも含めて、続編で活躍してほしいです。特に、今作は、SADENDのほうは、悲恋というか、フラグ不十分で恋愛関係にまでならなかった的なオチがほとんどなので、
そうした展開で、続編作ってほしいです。ただし、ジャックのも、執事ルートで。執事として側にいながら明晰な頭脳と戦闘力でカバーするような続きみたいです。
(共通ルート)
0「プロローグ」、1「ハリントン学園の入学」、2「お茶の時間にご用心」、3「異端児の生徒ジャック」、4「怪盗ルパンの予告状」、5「俺がホームズ!?」、6「東国からの留学生」、7「狙われたハドソン」、8「先生の失踪!」、9「ピクニック・パニック」
(ノーマル/マープル友情end)10「お茶の時間は終わらない」、(ホームズ&ワトソン友情end)10「爆弾狂騒曲」
(ホームズルート)
10「霧中のベーカー街」(ホームズサイド)、11「容疑者ホームズの苦悩」、12「チェックメイトは夜明け前」、13(sadend)「背中を見つめて」、13「モラン大佐の復讐」、14(happyend)「裸足の淑女と無造作紳士」
(ワトソンルート)
10「霧中のベーカー街」(ワトソンサイド)、11「霧のイーストエンド」、12「再戦!ワトソンvsジャック」、13(sadend)「想いを祈りに変えて」、13「最初で最後、最低の行為」、14(happyend)「約束の指輪」
(ルパンルート)
10「盗まれた宝物」、11「瞼の向こうの温もり」、12(sadend)「薔薇の花束を君に」、12「届かない手」、13(happyend)「騎士の誓いの口づけ」、14「裸足の淑女と無造作紳士」
(ジャックルート)
10「闇夜に潜む切り裂き魔」、11「貴方のいない学校」、12「犯行予告」、13(sadend)「英雄は胸の奥に」、13「霧が晴れる前に」、14(happyend)「永遠の夜に抱かれて」
(明智ルート)
10「連れ去られた明智」、11「明智への弟子入り志願」、12「黒魔術結社の罠」、13(sadend)「託された栞」、13(派生・小林end)「胸いっぱいの感謝を」、13「船上の対決」(happyend)14「海の上、月の下で」
(グランドルート)「ロンドン・アンダーグラウンド」
※音楽関係のおまけはなし(CD購入するしかないです)
○EXTRA
・Graphic
1、Graphic(ホームズ:13枠/31枚、ワトソン:25枠/41枚、ルパン:14枠/33枚、ジャック:14枠/24枚、明智:14枠/26枚、その他:25枠/95枚)
2、Background(48枠/70枚)
3、Movie(4つ:OP、ED、ノーマルエンド(歌詞なし)、グランドエンド)
・Scene(110シーン)
・Item(収集したアイテムを鑑賞します)/20個
・Voice(保存したボイスを再生します)
原画:三村ナツ ライター:雪薄
(その他声優)
佐々木篤(ベックフォード伯爵)、宮下雄也(モラン大佐)、大石達也、有瀬雛奈、●岐紹未、奥正史、原英士、山口正秀、入江玲於奈。
(学校法人文化学院声優科)
下川草介、小島早希、谷川誠、野辺健太、宝田美穂、吉田来実