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xianxianさんのL.G.S ~新説 封神演義~の長文感想

ユーザー
xianxian
ゲーム
L.G.S ~新説 封神演義~
ブランド
オトメイト
得点
70
参照数
429

一言コメント

主人公である天才仙人・楊栴は、妖怪線人を倒し封神計画をすすめることを命令を受ける。その人界の混沌の中で、成長し、心惹かれる存在を見つけるという乙女ゲー。「新説」とついているように、かなり斬新な解釈で原典を改訂しています。楊センを女性にして、妲己が男性化している時点で驚きです。ただ、原典よりはジャンプで連載されていた藤崎竜版「封神演義」からもってきたのだろうなと思わせる設定が多く見受けられました。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

アニメのような話数形式ですすみます。大体、1話1時間ほどで終わります。2クールの設定で、個別ルートに入る8話あたりでOPが変わります。2クール設定で行っているために、かなり展開が急で、細かいイベントや日常パートの描写がやや不足な印象を受けます。12話くらいで無理に詰め込まず、24話くらいのボリュームで作れていたら、名作になっていた可能性もあるとは思いました。逆にいうと、もっと日常パートやイベントを増加できるために、FDやアニメなどでいくらでも話やキャラの追加ができるということでもあります。それなりにキャラ萌えできます。太公望や姫発などは個人的にかなりキャラ萌えできました。
個人的な不満としては、対象年齢の低さからでしょうが、やや糖度低めというか、恋愛での描写に色気が足りないように感じました。また、天化ルートなどで一日千秋の読みを「いちにちせんしゅう」にしており、漢字などでは対象年齢低いだろうからとクリエイター側が簡単なものにとりかえているものがあり、甘やかしみたいなことをしなくても別にいいのにという不満をもちました。
また、用語解説でわかりやすくなるのはいいのですが、武器を獲得する意味がなく、宝貝図鑑などはあまり意味がない機能のように思えました。もっとも、封神演義の世界設定をなんとなく伝えるような意味としてはあるかもしれません。とはいえ、武器や宝貝もかなり大幅なアレンジを加えているので、真にうけるのはよくないです。主人公のヨウセンは「三尖刀」とが武器とテキストではなっていますが、投げる武器になっていて、武器としては「刀」というよりは「飛圏」の一種になっていますし。
タイトルページに「軌跡」というおまけページがあり、攻略状況により、色々追加されます。細かい内容は後述。

・限定版(蘇妲己以外のSSと、ラフ画像付「小冊子」。特典ドラマCD「妲己先生の人生相談室」付属)
・歌(1期OP「POLARIS」(歌:Gero)、2期OP「世界の果てで」ED「水鏡」(歌:織田かおり))

主人公が「仙人」ということで、外見はオッパイ魔人な大人の女性風ですが、性格的には子どもで中性的なタイプで可愛く、好印象です。イメージとしては、十二国記の陽子から男らしさ成分が薄れたような感じでしょうか。天帝の娘で地上に落とされて、醜く、妖怪化した設定があり、黄帝の娘の「魃(ばつ)」の神話を混ぜているようです。中央に雨が降りやまない問題など蚩尤(シユウ)旗の伝承と被る気がしますし、封神演義だけではなく、黄帝と蚩尤の争乱の神話なども混ぜている印象を受けました。

攻略対象キャラは5人で、「玉鼎真人」「太公望」「黄天化」「姫発」「蘇妲己」。ロックがかかっているので、すぐに攻略できないキャラもいますが、ネタバレ具合からすると、オススメな攻略順は、姫発>黄天化>蘇妲己>太公望>玉鼎真人。玉鼎真人は一番オリジナル要素が強いシナリオかもしれません。そのため、シナリオ攻略はラストがいいと思います。
キャラ造形でいえば、太公望や玉鼎真人などが顕著ですが、ジャンプ連載していた封神演義の影響が強い設定を引きずっています。太公望が騎馬民族出身で一族が滅ぼされたことや、玉鼎真人がヨウセンの育ての親で、剣の達人で、命をかけるほど弟子を愛していること、天化がめんどくさがりの性格や姫発のちゃらんぽらんに見えて、臣民思いの設定なども漫画版の影響のように思われます。
意外な設定といえば、原書のほうだと、天化は短気で、戦場だとプッツン気味になる設定がそういえばあったはずですが、それをああいう設定に変化してくるとは思いませんでした。そのあたりの大胆な改変が個人的には面白かったです。

シナリオは古代ぽい中国ということや王朝の変更ということで、王である姫発やチュウ王などがおいしいところがあり、十二国記をもう少しわかりやすく、エンタメぽくしたような所があるようにも感じました。シナリオ進めていて、少し面白くない理屈言っているなと感じた所がありまして、モブキャラが「王は一番汚れ仕事を民のためにやるのが義務だ」といっているところで、その理屈は正しいにしても、だからこそ「臣下は王に苦痛と汚れ仕事をさせないように最大限努力する義務がある」ことを指摘したくなりました。その反論がないと、上の立場の人間に責任や努力ばかりおしつけて、下にいる人間が努力や責任をとらない言い訳に使われることになります。エンタメであるゲームでそんなこと指摘してもしょうがないといえばそうなんですが、リアルで大人になっても、この手の言い訳と責任押し付けをする人に意外と出会うので、創作でもそのあたりは描いて欲しいと思います。個人的な不満ですけどね。

個人的にダントツでキャラ萌えしたのは姫発でした。「そのままの君でいいんだ」なんて自己嫌悪に陥ったりする思春期の人間ならともかく、リアルで言われたら寒い台詞だと思うのですが、状況によっては、とってもグラッと来る台詞でした。姫発は、フェミニストという設定か、落ち込んでいる時に言ってほしい言葉を投げかけてくるようなキャラなので、ルート中かなり好感があがると思います。また、わかりやすいツンデレキャラが太公望で、こっちもかなりいいです。ラストでは、執務室で押し倒そうとしていて、何してるんだー(笑)とちょっと思いました。私的なツートップはこの二人ですが、他のキャラも悪くないです。ただ、天化はなんというか、他のキャラが年上タイプで主人公をフォローするのに対して、主人公がフォローにまわる、口の悪い年下後輩キャラぽい感じなので、庇護欲あるタイプじゃないとあまり好感もてないかもしれません。

□軌跡(オマケ)
○画総鑑賞(CG鑑賞と関連シーン再生)
・玉鼎真人/28枠(戦闘用CGのみ1枠、キャラクリア達成おまけシーン付CG1枠)
・太公望/37枠(CGのみ1枠、キャラクリア達成おまけシーン付CG1枠)
・黄天化/25枠(CGのみ1枠、キャラクリア達成おまけシーン付CG1枠)
・姫発/24枠(CGのみ1枠、キャラクリア達成おまけシーン付CG1枠)
・蘇妲己/19枠(CGのみ1枠、キャラクリア達成おまけシーン付CG1枠)
・その他/49枠(オール画像達成CG1枠)

○動画鑑賞/8
「開幕1・2」、「玉鼎真人閉幕」「太公望閉幕」「黄天化閉幕」「姫発閉幕」「蘇妲己閉幕」「活動漫画閉幕(途中話数ED)」
○用語解説
○宝貝図鑑
○音楽鑑賞/28曲(OP.ED無し)
○結末一覧/22(バッド含む全ED)
1「思えば思わるる」、2「柳暗花明」,3「世はすべてこともなし」、4「花鳥風月」5「屋烏の愛」、6「比翼連理」,7「愛は惜しみなく与う」、8「一期一会」、9「かごの中の鳥」、10「掌中之珠」、11「能ある鷹は爪を隠す」、12「待たれる身より待つ身」、13「画竜天晴を欠く」、14「今日の後に今日なし」、15「風前のともし火」、16「毒をもって毒を制す」、17「言わぬが花」、18「身から出たさび」、19「うまい話には裏がある」、20「捕らぬ狸の皮算用」、21「井の中の蛙大海を知らず」、22「月日変われば気も変わる」

○赤精子のお店(特典)(攻略キャラ5人分)
「秘密言語・壱/弐(愛のささやきボイス)」「秘密画像(音声付おまけカット)」「秘密劇場(4コママンガ)」「秘密ノ巻物(キャラSS)」

(共通ルート)
序章「逢縁奇縁」
第1話「蝴蝶の夢」
第2話「嘘から出た実」
第3話「月に叢雲 花に風」
第4話「因果は車の輪の如し」
第5話「勝てば官軍、負ければ賊軍」
第6話「雌雄を決す」
第7話「砂上の楼閣」
(玉鼎真人ルート)
第8話「生は寄なり 死は帰なり」
第9話「遠ざかる程想いが募る」
第10話「目は心の鏡」
第11話「一寸光陰」
第12話「泥中の蓮」
最終話「柳暗花明(仙人ED)」、 最終話「思えば思わるる(妖怪ED)」

(太公望ルート)
第8話「君子危うきに近寄らず」
第9話「青天の霹靂」
第10話「鳴かぬ蛍が身を焦がす」
第11話「鏡花水月」
第12話「覆水盆にかえらず」
最終話「花鳥風月( 仙人ED )」 最終話「世はすべてこともなし( 妖怪ED ) 」

(黄天化ルート)
第8話「一日千秋の思い」
第9話「雨は天から涙は目から」
第10話「明鏡止水」
第11話「和風細雨」
第12話「運を待つは死を待つに等し」
最終話「比翼連理( 仙人ED )」 最終話「屋烏の愛( 妖怪ED )」

(姫発ルート)
第8話「千里の道も一歩から」
第9話「凌雲の志」
第10話「及ばぬ鯉の滝登り」
第11話「努力に勝る天才なし」
第12話「人事を尽くして天命を待つ」
最終話「一期一会( 仙人ED )」 最終話「愛は惜しみなく与う( 妖怪ED )」

(蘇妲己ルート)
第8話「臥薪嘗胆」
第9話「落花情あれども流水意なし」
第10話「花は折りたし 梢は高し」
第11話「金蘭の契り」
最終話「掌中之珠( 仙人ED )」最終話「かごの中の鳥( 妖怪ED )」

(声優)
紂王(西田雅一)、赤精子(内匠靖明)、黄飛虎(伊藤栄次)、黄帝(須藤瞬)、コウ天犬・柏天君(幸地真作)、董天君(増田雄市)、よう天君(石原大彦)、ジョカ(互野ちひろ)、綱川博之、石上美帆、KITARO、木村里見、佐藤勝巨、寺井沙織、古俣麻弥、長瀬祐、楳澤啓幸、

(シナリオ)
砂原有季、星宮えりな、夏野そら、六条真琴、烏れいこ