傑作。この作品に出会えて本当に良かった。
本作では「親子の確執」「人間不信」「富豪ゆえの葛藤」など、ヒロインが様々な苦しみをかかえている。こういった不条理を簡単にクリアしてしまわないところがよい。例えば、殿子ルートではエンディングまでいっても、殿子と両親との関係が完全に回復したわけではないのである。「全てが癒えるわけではない。しかしヒロインと主人公は共に成長し、最後には救いがある。」こういったシナリオ運びには非常に好感がもてた。
本校系と分校系でライターが異なり、雰囲気はかなり異なる。別のゲームのようにも感じられる。ただ、切り分けは上手くいっているので、ストーリーの不整合が気になるレベルでは無い。エッチシーンの数の違いにはびっくりするけれど。
ストーリー展開は精緻そのもの。ヒロインと主人公、それを取り巻く学生たちの心情が美しく描写されていく。読んでいて飽きることが無く、次へ次へと進めてしまう。それを彩る優しい音楽も素晴らしい。
ある特定のルートに入っても、他のキャラクターも主人公の影響を受けて少しずつ成長していく様子が描かれているのが好印象。
どのキャラクターも魅力的。特に殿子の魅力は群を抜いている。何も見ていなかった彼女が、主人公を「友達」「お父さん」と認識し、次第にそれが恋心に変わっていく様は本当に可愛らしい。芯が強く心優しい内面が、言動ににじみ出ている。
みさきちや栖香も良い。それにしても、栖香ルートのエロは異質だった（苦笑）。生真面目な栖香がエロエロなのはそれはそれでよかったが。エッチシーンの枠を分校系が独占していた。もう少し本校系に配分があってもよかったかな？
総じて、高い評価を受けるのも当然と思える内容だった。