原点回帰してくれて嬉しい。中毒性の高いやりこみ経営ゲー。やることは少し多め。
発売直後ということもあり、まだ完全にやりつくしたところまで到達していないので、暫定での評価を記す(もっとも、大幅な得点の上下動はないと思う)。また、納得できるところまでプレイしたら改稿する可能性がある。現在、プレイ時間約23h、作品内プレイ日数約11年4か月である。エンディングには到達している。
昨年の作品『ダンジョン少女』は、今までとは作風の異なるパズルRPGということで、異色な感じがした。評価はいろいろあって良いと思うが、私は「犬と猫」さんの中毒性の高い経営ゲームが好きなので、今年は原点回帰とでもいうべきか、懐かしい作風が戻ってきてくれてとても嬉しかった。
さて、これからこのゲームをプレイする方に若干ではあるがアドバイスをしたい。私が、プレイ開始時に欲しかった基本的な説明である。
上位のコンクールに入賞するためには、施設とスタッフのランクがより高くなっている必要がある。初めのうちは安いアクセサリーしか制作できないが、計画的に販売を進めてお金を貯めていく。そして、左側の「施設」をクリックすると、マリエちゃんのお店に様々な施設をおけるようになっているので、貯めたお金で施設枠を拡大し、技術・満足・人気をバランスよく上げていく。施設の設置にはcostがかかるが、大会の入賞で少しずつ溜まっていくので、効果の大きな施設を置くことを狙うとよい。
また、同じく「スタッフ」画面から、経営規模に即した人材を獲得し、人的にもレベルアップを図っていくとよい。ただし、スタッフは毎月給与が発生するので、身の丈に合わない雇用を行うと詰んでしまう。月収と見比べながら優秀なスタッフを見つけると良いだろう。
これらを組み合わせて行い、店とスタッフのレベルが上がってくると、自然に作れるアクセサリーのレベルが上昇し、ハイグレードのコンクール入賞を狙えるようになってくる。この好循環を発生させることを骨格として、他の要素も取り入れながら経営していけば、お店は上手く成長していく流れになる。
元々、このブランドの作品は「習うより慣れよ」というところがあり、やっていく中で学んでいくことの多い作風である。しかし、今回の作品は、過去作に比しても圧倒的に分かりにくい。やることが多いのに情報が一元化されておらず体系的な説明を欠いたこと、マウスを上に置くと初めて説明が出る事項も多かったことのほか、「何が分からないか」について作り手とプレイヤーの認識の齟齬が大きかったことも原因であろう。一定の減点事由とした。
もっとも、作者さんが早い段階からプレイヤーの意見を取り入れ、かなりの頻度で修正パッチを出されたことでかなり改善されているように思われる。このような姿勢はとてもありがたい。また、追加で作品ページ内に作成された「よくある質問と回答」は、是非とも読んでおくことをお勧めしたい。非常にわかりやすくまとまっている。これらの迅速な対応は、評価に値するものとして、かなり減点幅を圧縮させた。
本作は、基本的な仕組みが分かると一気に面白くなってくる。作品に没入できるし、あっという間に一日が終わってしまう時間泥棒ぶりである。
以前、私は「エリクシア」の感想において、「薬剤」のように質が上がったことがイメージしにくいものだと、プレイのモチベーションが保てなかった、という趣旨のことを記した。本作も、制作物は「指輪」であり、文字だけで記されると質が上がったことはイメージしにくい。しかし、この作品では、指輪と指輪を掛け合わせてより上質な指輪のアイデアを閃くという機能がある点、お店に出している指輪によって来客の反応が変化する点、良い指輪を出すことによって上位のコンクールに入賞できる点、などから、ゲームをつづけていくモチベーションになる種々の要素があり、飽きさせない工夫がなされていて好感がもてた。
マリエッタという、元々宝石や鉱物のイメージがあったキャラクターを主人公にしたことも、違和感なく「アクセサリー」というテーマで作品を成立させることに寄与しているのではないか。今までの世界観の積み上げが結実した作品として、良い効果を発揮していると思う。
関連して、新作だからといって新キャラを主人公とするのではなく、既出でファンも多かったマリエッタを主人公に抜擢したことは、高く評価したい。犬と猫さんの世界では、素晴らしいキャラクターが多く出ており、特に近年は、新キャラを出せば出すほど、光っているキャラクターもいつの間にか隅に追いやられてしまうという現象が発生している。サブ級にも素晴らしいキャラが沢山いる。マリエッタも、既出とはいえこれまで世界観の形成に大きく寄与してきたサポートキャラクターであり、そのマリエッタがとうとう主役を張っていると思うと感慨深い。既出キャラは、ずっと見ている分、思い入れも新規キャラよりずっと深くプレイできる。こういった、既出キャラの主人公化は大歓迎である。この流れが、まだ主人公になっていないニーネや、ヤヨイにつながっていくことを強く期待する。
ここ数年ずっと書いているが、ショートストーリーを中心に紡がれるイシュワルドの世界観は本当に素晴らしい。作品をプレイする目的の3~4割はSSにあるといっても過言ではないくらいである。今回も本当に良い出来で、過去の流れをおさえながら、キャラたちが活き活きと躍動しているさまはどのキャラクターも見ていて微笑ましい。
私は、ここのところ次第にニーネに心惹かれつつあるのだが、人見知りのニーネが自ら少し前に踏み出した物語は、読んでいてとてもほっこりした。
まだプレイ途中であるが、年に一度のイシュワルドの世界を思い切り堪能したいと思える作品に仕上がっていた。