本編+FDで一つの作品。両方プレイしないと世界を把握できない。
本編+FDのパック版が販売された現在では、特別の理由がない限り両方プレイしたほうが良いと思われる。本編は重要な伏線の一部を未消化のまま終わってしまい、回収をFDに委ねているところがあるためである。FD無しなら得点を大幅に減点していただろう。
これからのプレイを検討している方に対しては、(プレイスタイルの好みにもよるが)まとまった時間が取れるときに、一気にプレイすると良いのではないかと思う。この作品は、1つのルートだけでは完結しておらず、特定の話で出てくる伏線が意外なところで解決されたりする。最後のほうまで分からないことも多い。しかも、「あ、ハイハイこれ複線ね」という、プレイヤーの暗黙の了解に訴えかける分かりやすい伏線だけでなく、後から種明かしをされてみて「ああ、あれってこういうことだったのだ」という分かりにくい伏線も多い。私自身がそうだったのだが、チマチマプレイしていると、伏線が何のことだったのかを忘れてしまう恐れがある。突き抜けるように読み進めるのが本来は良いと思う。
というように書いてはみたものの、本作の欠点は、シナリオの長さと、ルートによって散見される冗長なテキストだと思う。プレイ時間は長い部類のゲームで、どうしても中だるみしてしまう。テキストも平板で、辛い人にとっては序盤~中盤は本当にキツイと思う。しかし、この作品は最後まで辿り着かないと評価し得る程度まで全体像を把握できない。合格・不合格、以前に、「却下」となってしまう人が一定数出ることが予想されるのはこの作品の弱みであろう。非常に勿体ないといえる。評価の高い王道のゲームのように思えるが、見かけ以上に人を選ぶのではないか。中盤までで悪印象が決定的になってしまうと、おそらく取り返しがつかないのは難点。
しかし、中盤までを過ぎると面白くなってくるし、人物の相互の連関や物語の全体像がみえるようになってきて楽しい。伏線を綺麗に、丁寧におさめているところも好印象だった。FDまでオールクリアしないと勿体ない。
この作品で私が注目したのは、「星」をテーマにしていて、それを正確に表現しつつ、キャラクターや物語にうまく絡ませている点である。そういう意味では、天体観測が好きな人、地学・物理の知識がある人は、より楽しめる気がする(そうでないから楽しめないという訳ではない)。
関連して、背景の星空。普通のゲームだと、黒い画面に、適当に点を散りばめるか、オリオン座などの有名な星座だけ書いてお茶を濁しているような作品も多くある。舞台が大都会のくせに、ロマンチックさを追求する努力(?)のあまり、星が考えられないほど大量にみえて不自然に感じられるものもある。しかし、この作品は季節ごとに移ろいゆく星空を、かなり正確に表現していることがみてとれた。マニアックな星座も省略せずに書かれていたし、天体の相対的な明るさも比較的正確。見える星の数も自然だった。また、音楽や声優さんの演技とマッチして、その醸し出す雰囲気が神秘的で好印象だった。天体サークルをメインに据えたことに相応しい内容で、好感を持てたことは、加点要素とした。
キャラは、王道のようでいて、なかなかに好みが分かれるような気がする。私も、一部キャラクターに思うところが無いではない。この部分は、「行動原理がそもそも意味不明(or生理的に不快)」というように、どうしても強い感情論が先に出てしまいそうな気がするので、あまり深く踏み込まないことにする。
個人的には、良かった点として
・最近あまりみられなくなってきた、「ツンデレ×ツインテ×縞パン」(こもも)ってやっぱり最高だな、と確認したこと
・メアの腕をぎゅっと胸元で抱え込むような仕草の立ち絵に萌え転がったこと
を挙げておく。こもものHシーンでは、もっと縞パン強調してほしかった。色違い縞パンの差分があっても良かったなぁ。
総じて、この作品の中央値は高いが、高い評価を付けているユーザーさんの意見も、低い評価をつけているユーザーさんの意見も、非常によく理解できる作品だったように思う。
繰り返しになるが、作品に対する「正当な評価」(良い評価と悪い評価とを問わない)をしてもらう段階に辿り着くまでの道が険しいことが、この作品の惜しいところであろう。