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xezldwr24さんのWhite ~blanche comme la lune~の長文感想

ユーザー
xezldwr24
ゲーム
White ~blanche comme la lune~
ブランド
ねこねこソフト
得点
62
参照数
3706

一言コメント

主人公と恋愛する攻略対象が半分以下

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

 私の場合、事前の各種告知から受ける作品のイメージと、プレイした実感はかなり異なったものだった。様子見の方は、色々情報が上がってくると思うので、本作が肌に合うかどうかよく検討したほうが良いかもしれない。

 回想欄にHシーンがあるのは、マリカ(1回)、ブリジット(3回)、クレア(1回)、ほたる(3回)、カナン(2回)、ミサ(1回)の6名(ただし、クレア以外はおまけでもう1つずつあり)。このうち、主人公(サイガ)と恋愛をするのはマリカとブリジットのみ。
 クレアはセトと、ほたる・カナンはレンと、ミサはフォレストと結ばれることになる。特に、ほたるはサイガの妹という位置づけを与えられていながら、唐突にレンにもっていかれる。恋愛という側面のみから切り取れば、特定の「主人公」がいるとは言い難い。あまりみられないスタイルの作風である。他のサブキャラが「攻略」するのが許容できるか、というのが第一の評価の分かれ目になると思う。

 この作品は単なるロリゲーではない。マリカ・ブリジットにはロリキャラである必然性がある。ロリの部分に過剰に期待して購入すると失敗するし、逆にそのイメージだけで敬遠する必要もないかと思う。
 「長命人」という、我々より寿命の長い人々の存在。彼らが長命人ゆえに直面する困難や病理。共通パートや過去部分で示された設定はとても興味深いものだった。「共に生きる」ことの有り難さ、難しさを考えた。しかし、各個別ルートが必ずしも共通の認識のもとに構築されていないように感じられ、全体を通じた作品の一体感が弱く、テーマの押し出しがいま一歩だったように思う。シナリオを書かれる方が複数いることのデメリットが大きく出てしまっている印象だった。共通部分で構築した世界観は良く、過去話にも光る部分があっただけに、締まりの悪さが残念だった。
 
 個別だと、カナンルートが良かった。確かにレンとくっつきはするが、その理由もはっきりしていて納得できるものだったし、物語の展開も良く、終わり方も非常に綺麗だった。ブリジットルートも悪くなかった。ストーリー自体はそれほど起伏が無いが、マリカ・ブリジット姉妹のもつ「無垢」さがこのルートで語られることによって、最も重要なマリカルートの深みが格段に増している。こなすべき役割をきちんと果たしたルートだったように思う。
 非常に残念だったのがほたるルート。他のキャラクターと結ばれるのであれば妹として登場させる必要が無かったのではないか。また、展開が急で話についていけないまま、いつの間にかレンとくっついた感が否めない。ミサルートも、単体としてみれば「長命人」として人間社会の中で生きていく難しさを描いたものとして興味深かったが、いかんせんルート自体が浮いていたように感じられた。

 この作品をより深い共通認識のもとに製作するか、少ないライターさんが書かれればより良い物になったことが期待できるだけに、非常に惜しく思われた。残念ながら、私の中の期待値を上回ってくるものではなかったといえる。