海猫亭などに比べた「複雑さ」が私にはツボだった
この作品は、『レミュオールの錬金術師』や『海洋レストラン☆海猫亭』よりも色々なことに気を配る必要がある。考えながら進めないと行き詰まってしまう。この「複雑さ」が、人によっては好印象となり、反面難しいという悪いイメージにもつながるのだろうが、私は今までプレイした「犬と猫」の作品の中で一番のめり込んだ。
限られた財を複数の考慮すべき要素にどう配分するのか、という部分が大きくフォーカスされている点で、『海猫亭』等とは全く毛色の違うゲームである。
『海猫亭』が(個人経営の)「お店経営シミュレーションゲーム」なのに対し、『王国商店街』は「商店街運営シミュレーションゲーム」なので、社会現象としての要素が強くなったのかもしれない。その試みを高く評価したい。
この作品は、本当に考えなければならないことが多い。
プレイする前にカルマ司祭などから届く手紙をよく読み、一定の方向性をたててプレイすることが必要となる。商店街の経営が軌道に乗るまでは本当に難しかった。
序盤からゲームを円滑に進めるためには、政治家との関係を良くすることと、政治レベルを着実に上げていくことが大切である。そのためには、折角貯めたギルドポイントを大量に議員に貢いだり、増えてきた街の住人を「移民援助」の名目で差し出したり、ようやく溜まってきた£を大量に献金したりする必要がある。これと、商店街の発展を両立させるのは結構な労力を要するので、それが評価を分けている部分なのかなと思う。
しかし、ソフィア姐さんの目論見が達成し(笑)、政治レベルSの議会で多数が味方の状態を形成すると、そこからは本当に楽しくなってくる。図鑑達成率や地価のことは考慮する必要があるが、基本的には「こんな商店街があったら楽しいだろうな」という理想のもとに街づくりをしていくことができる。月2回、議会からまずまずの援助が来るので、政治がうまく回り出せばあとは比較的進めやすくなる。店舗も、検索条件を変更すればどんどん埋まっていき、運が良くないと新しい店が出てこないとか、そういう理不尽なことが起こらないのも良かった。
エンディング1(人口10万人)までは19年0季節(プレイ時間約22時間30分)、そこからは攻略サイトを見て、エンディング2(人口100万人)までは52年3季節(プレイ時間約63時間)だった。土日を3セット丸々もっていかれた。時間泥棒っぷりは相変わらずだった。
欠点というか、気になった部分を挙げてみると、「賢者の石」などマナの大量回復アイテムの自己生産が可能になるにはそれなりの時間がかかる→それまでは探索が思うように進まない→物資が慢性的に不足する→一部店舗が拡張できない→住民の不満が募る、という悪循環が序盤を抜け出してもしばらくの間続くことだろうか。魅力的な店であっても、なかなか広げられなくて苦労をした思いがある。住民の不満については、政治レベルが上がっていれば議会対応が可能なのだが。
また、ゲーム中で貰える「女神の鈴(欠片)」には上限があるため、街が完成形態になったときに、大幅に足りない理念が生じても取り返しがつかない、ということも挙げられよう(流石にやり直す気にはならない)。
加えて、これはこの作品のみならずこのブランドの作品の多くにいえることなのだが、最終的には上流階級向けの店(メニュー)を提供しないと採算があいにくい仕様になっている。全くもって個人的な意見だが、多様な人に来てもらえる商店街(店)であってほしいな、と思っても、なかなかそうはいかない。気にいった店舗やメニューが下流層向けだと、いずれは他の物に差し替えないと客層バランスがあまり綺麗でなくなってしまうので、「狸のソバ屋」や「夕凪書籍館」のような、いかにもボロイが味のありそうなお店(想像にすぎないが)が好きな私としては、残念なところである。
多少改善してほしい点はあるものの、本作から綺麗なバストアップCGも取り入れられ、ますます魅力的になった。コストパフォーマンスも高く、非常に良い作品だった。