バランスのとれた良作だと思った
素点だけみると他の方との対比でそれほど高くないように感じられるかもしれないが、私は(個人的)中央値が比較的低くかつ分散が小さいので、70台後半以上を付ける作品はどれもかなり高い評価をしたものである。この感想では、どこを高く評価し、どこで点数が伸び切らなかったかということに力点を置いて書いてみたい。
私は、三角関係、鬱系のゲームがいずれもちょっと苦手である。この作品は、その要素を含んでいながら、好きなゲームの仲間入りをすることになった。
多くの方の評価が高いのも頷けるものの、ドロドロした成分が強いのも事実。完全に万人受けするかまでは「?」なところもあるので、苦手な方はプレイをよく検討されることをお勧めする。
あくまで個人的なものだが、推奨攻略順は以下の通り。伏線回収の関係上、ある程度決まった流れに沿ってプレイしたほうがより作品の味わいが増すはず。
ic(当然だが必須)→千晶・麻理・小春(個人的には千晶→麻理→小春の順を推す)→雪菜normal→(ここまでのどこかでデジタルノベルを必ず読んでおく)→※
※ここからは好みで
1、雪菜が好き、ほっこりした終わり方が好き
(1)かずさnormal→かずさtrue→雪菜true
2、かずさが好き、ぴりっとした終わり方が好き
(2)かずさnormal→雪菜true→かずさtrue or
(3)雪菜true→かずさnormal→かずさtrue
というところだろうか。私は千晶→麻理→小春→雪菜normal→上記(3) の順に進めた。
この作品の最大の魅力は、卓越したシナリオ構成力だと思う。本作のように長い作品だと、「ここは書かなかったほうが効果的だったのでは?」とか、「結局あの部分の記載には一体どのような意味があったんだろうか」(あからさまな伏線未回収)とか、「あえてこれを書いた意味は?」(読んでいて不快になったり、テンポが落ちてしまったり)ということがたまにみられる。しかし、この作品は、シーン毎にきちんと意味があり、無駄が無く、意外なところで綺麗に伏線が拾われていく。icを含め全体に一貫性があり、読みごたえもあって、素晴らしかった。シナリオ構成点は、プレイした作品の中でもかなり上位に位置づけた。
シナリオ内容についても、高い得点とした。全体的に、何度も鳥肌が立つ良いストーリーだった。やはり主に雪菜・かずさルートが評価されるだろうし、私も良かったと思っている。それに加えて、小春ルートも彼女の信じられないほどの愚直さが丁寧に描かれていて非常に気に入っている。小春エンディングは描き方が見事だった(エンドロールの間に1年経っているとは、数分間完全に騙された)。
テキストも秀逸だった。これだけ長い作品でありながら、次へ、次へと読みたくなり、べったりこの世界にひたっていたくなるような出来栄えだった。また、重い雰囲気のシナリオを時折入るギャグや軽快な会話、ときにはたった一言の台詞で緩和し、暗くなりきらないところが見事だった。これがなかったら、テーマがテーマなだけにプレイがしんどくなってしまったかもしれない。
ただ、ちょっと納得がいかないのが「かずさtrue」。いくら主人公との関係で雪菜に大きなアドバンテージがあったとはいえ、かずさの扱いは不遇に感じられた。これも一つの綺麗な終わり方だとは思うが、やはり「3人はずっと一緒」という大きな条件をクリアしつつ、なお主人公の傍で微笑むかずさも見てみたかったというのが正直なところで、かなりモヤモヤしてしまった。雪菜trueとかずさtrueの差をどう捉えるかは本当に人それぞれだと思うが、私としてはもう少し2人のエンディングのグレードを合わせて欲しかった。
音楽や歌も効果的に使われており、一つ一つのクオリティが高く、加点要素となった。
グラフィックについては…うーん……ちょっと立ち絵も含めて不自然なものが散見された印象。システム関係も使い難いと感じた箇所があった。長い作品だからこそ、システムはより快適であってほしかった。
「かずさtrue」の部分と、グラフィック、システムについては、(私の)採点表通りある程度ダウングレードしたため、現時点で殆どの方がつけている90台以上にはのらなかった。ただ、全体的によくまとまった良作であると感じた。