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wysiwygさんのパルフェ ~ショコラ second brew~の長文感想

ユーザー
wysiwyg
ゲーム
パルフェ ~ショコラ second brew~
ブランド
戯画
得点
93
参照数
344

一言コメント

良かった。ただもうちょっと作りこめたのではないか。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想


タイトルは「ショコラの二番煎じ」というものですが、中身は決してそういったことはないと思います。
一番最後にも書くように、これは「雰囲気」ゲーです。
前作をやっていて、「Curio」という空間、彼らの「世界」に、何となく心温まる感覚を抱いた人は、是非本作もやってみてください。
しっかり受け継がれています。

<<シナリオ>>
皆さんも書かれていますが、
<ul>
<li>伏線の張り方が上手い</li>
<li>会話のテンポがいい</li>
<li>決して手を抜かない「丁寧さ」に、作り手の意思が感じられる</li>
<li>登場人物のキャラクターの描写が上手い</li>
<li>主人公がよく動く。確かに甘えてはいるんだけれども、それも度を過ぎることはなく、最後にはきちんと自分の意思で行動する。所謂「ヘタレ」ではない</li>
<li>前作のように「どうでもいい」キャラがいない</li>
</ul>
といった点がいいと思いました。

ただ、丁寧で上手いからこそ見えてくる粗が気になるのも事実です。
<ul>
<li>・エンディングの種類が多い。ただTrueを削っただけのNormal End(e.g. 里伽子)は不必要。どうせ作るなら玲愛や恵麻のNormal、里伽子Badのように全く別のものにして欲しい。</li>
<li>・場所選択&移動の前半と個別ルートの後半が「分かれすぎて」いる。</li>
<ul>
<li>・恋愛に至るまでの過程の描写が薄い</li>
<li>・前半に、その性質上キャラごとの一貫性が持たせられない。(間に他のヒロインのエピソードが入ってきてしまって流れが途切れる)</li>
<li>・前作からの改善の結果とは思うが、余計な箇所が減った分、シナリオの少なさが目立ってしまう</li>
</ul>
</ul>
といった原因により、いきなり12/24から始まったような印象が残ってしまった。

&lt;&lt;絵&gt;&gt;
絵柄そのものは確かに「退化」していますが、一枚絵の構成力は前作とは比較にならないほど高レベルになっています。(except Hシーン)
なので、まず前半のシナリオ量を増やし、その上で通常の一枚絵を(前半の)要所要所で入れるとよくなったと思います。
また、玲愛がいろんな表情を持っているのがよかった。
ねこにゃん氏にはこれからもっと腕を磨いて欲しいと思います。

&lt;&lt;音&gt;&gt;
I've sound produceの主題歌は鉄板です。滅多に外しません。今回も良い出来になってると思います。
視聴できるので是非聞いてみてください。

問題はEDです。
由飛Trueだけボーカル曲がかかるんですが、……正直微妙です。「歌が上手い」っていう設定がないと存在し得ない曲なんで、由飛ルートならありかもしれませんが「パルフェ」としてはないも同然です。
# 実際、かかるのはあそこだけですし。
いっそ、「歌が上手い」っていう設定を無視して、I'veにEDも依頼してしまえば良かったような気がします。
# 比較になってしまうんですが、「こなかな」レベルのEDがついてたら得点は100を超えてましたw
# 以上、儲の妄言でした...

BGMは普通です。普通のエロゲのBGMというところです。曲数も普通。
全体が高レベルでまとまっています。雰囲気にも合っていますし、文句ないです。
また、各ヒロインのテーマはなかなか上手く出来てると思いました。
あと、Music Modeで他作品から持ってきたBGMも聞けるようになっているのはポイント高いです。

声ですが………。
もうちょっと何とかならなかったのかと……。
里伽子なんてHシーンのとき声枯れてますよ……。
手抜かないで欲しいところです。正直言って聞いてるの辛かったです。

&lt;&lt;システム&gt;&gt;
文句なしです。
スキップも快適ですし、これ以上求めるものはないです。
# 何気にJoypadでも操作できるようになってますね。
CDチェックも毎回行う仕様ではないので、ドライブにもディスクにも優しいです。

&lt;&lt;総評&gt;&gt;
上手いですし、面白いからこそ粗が目立ってしまったのは本当に残念です。
当然、目立たなければいいというものではなく、更に上を目指していって欲しかったところです。
一部だけが突出していい出来のゲームが評判になることがありますが、これはその正反対です。
構成ではなく内容について希望を言えば、「Famille」っていう店、場所をもっと活かして欲しかったということがあります。
「Famille」、「ブリックモール」を中心に集まった「仲間」「家族」のお話なのだから、もっと「場所」をアピールしてもいいのではないかと。
# また、自分は巨乳は苦手なので、せめて貧乳と半々くらいが希望です。

……と、いろいろと問題点があるのは事実ですが、全体としてかなりいいところまで行っているのは間違いないです。
値段相応かそれ以上の価値はあると思うので、是非やってみてください。
体験版が気に入られた方なら間違いないと思います。





# シナリオについて追加。
# 以下、拙い文章なので伝わり辛い点があると思いますが、ご容赦ください。

全体が「家族」というテーマを派生させて描かれています。
戸籍上の関係が兄弟や姉妹、親子でなかったとしても、「Famille」や「Curio」を中心に集まった人々は、勿論「仲間」であるけれども、同時に「家族」を構成しています。
# 「家族」というよりは「一家」ですねw
ブリックモールに集まった人々が仲良くやっていくお話。
その誰かと誰かが恋に落ちると、他の「家族」は噂話で盛り上がったり、冷やかしたり、時には嫉妬をしながらも、最後にはきちんと自分の気持ちにけじめをつけて結ばれた二人を祝福し、生暖かく見守っていく。

これはまさに、そんな「雰囲気」「空気」「世界」を楽しむゲームです。
ふわふわしてて掴みどころがなく、形容することさえ上手く出来ないけれど、そこにいると何故か心地良く、温かい気持ちになれる。
「楽しさ」「悲しさ」「辛さ」「愛しさ」...
いろんな感情がそこにはあって、それぞれがばらばらにあると何も起こらないけれど、そういったもの全てが集まると、そこに「空気」が生まれる。
そして、それぞれを作っているのが「家族」と「家族」のエピソード。

一人一人が集まって家族を作り、出来た家族は一人一人を包み込む。

重要なのは、決して独り善がりになってはいないという点ではないでしょうか。
「恋愛は当人同士の問題」であるのだけれども、「家族」はそれにいろいろと介入し、「一人」の問題は「家族」の問題として受け止める。
主人公は「家族」に甘えるのだけれども、決して甘えすぎず、重要なときには自らの意思でもって行動し、そして結果を掴み取る。
「家族」はそんな姿を応援し、見守っている。