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wrydreadさんの夏音 -Ring-の長文感想

ユーザー
wrydread
ゲーム
夏音 -Ring-
ブランド
Breeze!!
得点
98
参照数
487

一言コメント

音に満ち、音に従事した至高の”心の抜きゲー”

長文感想

『夏音』のタイトル通り、この作品の魅力は”音”に凝縮されている。
それはタイトル画面からして溢れているのである。
まず起動する。この段階で一つの感動がある。
メーカーロゴが表示され、作品ロゴが表示される、次にスタートメニューが表示されるのだが、
ゲーム中の喫茶店の背景をベースに水色のスクリーンを掛け、ブロック状のボタンが表示される。
作品ロゴは小さく、左上に添えられるだけだ。
波音がわずかに、それも室内で聞くような、そう、喫茶店の立地条件を考慮した音質で波音が聞こえるのだ、わずかして、ラジオをチューニングするようなノイズと歪んだ音、そして流れ出すベイサイド風の静かなBGM、ややもして、食器やカップ、フォークやスプーン・ナイフなどを動かす音が聞こえてくるのだ。そう、このタイトル画面に既に「海辺に構える喫茶店の主がラジオをかけて、仕事を始める」という物語がこめられているのだ。
このトラックはOSTには収録されておらずこの演出のみに使われるスペシャリテなのだ。
SEは夏に聞くことの出来る音、風鈴やとんびの声で溢れ、BGMはBossaが中心になる。
特にBossaの曲名の構成は非常に巧い。
みとせのりこの『Promenade』を筆頭に、少しだけ歩を早めてその道を折り返す『Re:Promenade』、その名の通り穏やかな日常を彩る『優しい生活』、
その日常に甘んじるように日々を重ねる『Cosi e la vita!』。
この作品を味わうにはBossaのアイデンティファイを得ることから始まると言ってもいいぐらいである。

またキャラクター達の何気ない日常会話の中にも音楽に関するモノが盛り込まれている。
それも、80'sや90'sに青春を持っていたオッサンホイホイなネタが。