Le prince de l'Etoile
言わずと知れたアントワーヌ・ド・サンテグジュペリ『星の王子さま』をオマージュしたタイトルである。
なので、前提として『星の王子さま』を読み、かつ、そこで問われる”王子さま”の存在を理解していないと「?」となる部分が多い。
例えば、主人公が好かれる理由付けがある。これは、『星の王子さま』に登場する一文、”Elles seront toutes tes amies"、
”みんなきみの友達になる”という訳が多くなされる文で、これに本作の副題「Le prince de l'Etoile」と繋ぎ合わせる。
”王子さま”に対して”Etoile”という魔性を加えるのである。
主人公はやさしく、器量に優れ、口も巧く、容姿端麗、年齢を問わず女性に好かれるものとして描かれるのである。
彼が好かれる理由はタイトルを見た瞬間に判明するのだ。
更に付け加えると、彼を取り巻くヒロイン達は、彼の魔法に掛かっている状態にある。
あるルートにおいては、特定のヒロインと結ばれたことで彼の魔法が解かれ、ヒロインの好意の対象が移ったかのような
仄めかしがあったりする。
味わうべきは説教臭い台詞回しと美術への意識である。
これは『Routes』の頃からもそうだったのだが、Leaf(永田和久氏)では芸術や美術作品に対しての一定以上の意識がある。
ユーリルートではそれが遺憾なく発揮されている。その美しさの所以と魅力についてキャラクターにつらつらと語らせる場面は、
造詣に関係なく面白い読み物だ。
説教臭い台詞回しでは、普段「ヘタレ」の印象を植え付けられているヴァレンティーノのツッコミが鈍く光る。
作中では流されてしまうことが多いが、そのツッコミは実に冴えており、ヘタレという立場だからこそ見えてくる観点が活かされている。
ココの破壊力あり過ぎ。