「はぴねす」足りてる?―はぴねす!の正統なる後継者と、ウィザコンの雰囲気と
◆ はぴねす!の正統なる後継者として
本作のキャラクターは(おそらくは)意図的に初代はぴねす!にかなりの部分対応するように設定されている。
神坂春姫と姫川花恋、柊杏璃と桐ヶ谷璃乃は纏う雰囲気も似通っている上にCVまで揃えられている。また高峰小雪と九重楓子も然りである。小日向すももの役割は一条熾月・瑞月に分有されているというべきだろうか。サブキャラクターの布陣も、何となくはぴねす!に似通っていて、プレイしてすぐに「はぴねす!」の後継者であることをひしひしと感じさせる。
シナリオもその意味で魔法を通じて問題を解決し、純愛系のHシーンも多めというういんどみるのコンセプトに沿ったはぴねす!の続編であることを強くうかがわせる。名前だけ借りた、適当な続編では無いのだという強い示唆だ。やや青臭くても、一定の解決法でオールハッピーエンドで締めるのもはぴねす!らしい。
◆ ウィザーズコンプレックスの雰囲気を纏う作品として
一方で本作のシナリオライターにはういんどみるOasisの前作である「ウィザーズコンプレックス」を担当した元長柾木も加わっており、ウィザーズコンプレックスの雰囲気も垣間見える。成長することに強い指向が見える。この辺りはウィザーズコンプレックスの拙レビューにて指摘しているので(https://erogamescape.dyndns.org/~ap2/ero/toukei_kaiseki/memo.php?game=22662&uid=winsvr2008r2)そちらを参照されたい。
他方で、ウィザーズコンプレックスほどストレスフルな雰囲気で無いのは、ウィザーズコンプレックスが対立を通じた成長を描き出すのに対して、はぴねす!2が協調を通じた成長を描き出すことにあるのではないか。この構造の差異は、自然とウィザーズコンプレックスほどのギスギス感を生み出さない。ある意味幸せに満ちた雰囲気に上手く成長に対する指向を載せてきたと言えるのでは無いか。
◆ はぴねす!との異同について
先に指摘したように、本作ははぴねす!の正統な後継者でありながら、ウィザーズコンプレックスの雰囲気も見える作品である。故に、はぴねす!との差異も自ずから生じる。特に分かりやすいのは本作にとって魔法はクリティカルな要素であると言うことだろうか。はぴねす!のときは小日向すもも、つまり魔法がシナリオで発生する問題の解決に関与しないルートがあったのだが、はぴねす!2では終局的には魔法を全員で使うことになる。そのあたり、魔法が別の世界からの事象を引っ張り出してくるものであるという本作の設定が作用した差異であるといえようか。
◆ 結論に代えて
本作は正当にはぴねす!の後継者であり、幸せに満ち満ちた温かな雰囲気を纏う作品であり、その基盤のうえにウィザーズコンプレックス(なのか元長柾木らしさなのかは筆者には判断しかねる)の雰囲気を載せた作品である。その構造故に、ウィザーズコンプレックスほどのストレスフルな雰囲気はなく、徹底してイチャラブらしい、幸せな空気を感じられる。はぴねす!の題に沿った作品であったと言えよう。
◆ 補遺 ADVの特性と本作
本作では魔法は別の世界から事象を引っ張り出してくる作用であると理論づけられる。ゆえに、グランドルートまでの花恋・璃乃・熾月・楓子のルートはそれぞれ別の世界の出来事とグランドルートで位置づけられ、指輪の力でそれらの記憶を継承し、最終的な≪災い≫の解決と至らしめるという構成になっている。それはまるでADVの特性―選択肢によってルートが確定する―に紐付いており、ADVとしての特性と、作品構成を上手く結びつけることができたといえるのではないか。