ちょっと勿体ないよなあ……
「結婚」も出来るし妖怪も進化できるし開眼できるし……とあれもこれもと詰め込みさらには画風も大幅変化、声優陣も従来でぼの巣製作所ではあまり見なかったところを揃えてくるなど本当に盛りだくさんだったのだが、肝心のシナリオの中身が若干肩すかしだったのが悔やまれる。
・シナリオ
シナリオの大まかな構造は大体どのルートも共通で、ちょこちょこっとヒロインとの個別のイベントとエンディングがあるだけ。一ルート目はその時間のかかり具合に若干面食らったが、二周目以降で既読スキップを使うとあまりの短さに困惑しきりである。
従来のシナリオがあってなきがごとしみたいな状況からすればかなりの改善なのだが、兎に角「結婚」出来るのにその前も後もイチャラブ要素が全く足りてない。四六時中おつとめをしているような有様で、それはまぁ、今までなら良かったのだろうが、折角「結婚」できるんだからがっつり取り入れてやって欲しいと思う。
その結婚にしたって、ヒロインが「自分の気持ちに嘘つかない」というので、恋愛感情自体は主人公にあるのだろうけど、兎に角追い詰められた状況下でパワーアップするためにやむを得ず感が拭えない。
そんなわけで兎に角勿体ないなあと。折角なのだからもっとゴリゴリイチャラブイベント詰め込んで良かったのよ。これは神楽シリーズと違うんだから…。
・原画
ガラッと変わって従来のでぼの巣製作所の絵に好意を抱いていた人からすれば疑問符しかないだろうなあとは思う。私も最初かなり心配していたが意外と気にならない。最初の方にちょっと「おやっ?」と思うのはあるが。後半にいくにつれてちゃんとしてくるし、これはこれで悪くない。
・システム(ADV)
基本システムはいつもの「でぼの巣製作所」のもので、オンラインアップデートなども実装されていてその辺は有り難い。解像度が流行のモノより一段階低めの1024×576(ウィンドウ起動時)なのは少し疑問があるが……。
ADVシステムは必要にして十分であるし、キーボードでも操作でき「あれができないこれができない」がなくて快適だと思う。
・システム(RPG)
詳しい解説は省くが、開眼と妖怪集め・妖怪進化が目新しいか。後はIZUMO4などでもあったフィールドを歩いてコマンド選択式の戦闘を重ねる形となる。エンカウント率はそこまででもないが、数も多いし固いので一回一回の戦闘が長引きやすいかもしれない(Ctrlキー押しっぱなしで高速化できる)
〔戦闘〕
他の批評を見るとここがしんどかったというのを見たので一応。
指摘されているように属性有利・不利が著しく響くほか、敵の即死技はガンガン効く(なおこちらのは殆ど効いたためしがない)という状況ではある。基本方針は違う属性(出来れば反対属性)の妖怪の両方に全体回復技を覚えさせておくこと、ヒロインの属性を問わず兎に角覚えられる限り属性をバラす(各々最大効力のものだけ残す)ということになる。
8つしか技が覚えられないのだが、これは結婚前後問わない。結婚しても技を一つ覚える(主人公は強制、ヒロインは開眼による=運任せ)、でイマイチパワーアップした感じがない。特に主人公については威力だけを見るなら結婚により覚える技より開眼による奥義のほうが強い。ここは結婚と連動して覚えられる技が増えるなどしたほうが良かったかもしれない。
あと全体的にMPの消費無く使う技の威力は極めて低いためMP回復薬が必須だが値が張る。面倒くさいが一周目は金集めに奔走することになるかもしれない。
〔開眼〕
開眼自体は中々斬新なシステムだと思うが、装備などに影響されるとはいえほぼ運任せなので、嫌う向きもあるかもしれない。そもそも後半では全然開眼してくれないし、その必要性、つまり開眼して新規の技を閃くことで危険な状況を脱するということも殆ど無いのだが。
〔妖怪関係〕
これも出現する敵妖怪に属性的な偏りがあるような気がする(きちんと統計調査したわけではないのであくまで感触なのだが)ので当初は妖怪を集めて進化させることに熱意を燃やしても、SクラスないしAクラスが集まればそこで進行上は問題が無くなり、どうでも良くなってしまうかなと。実際私の場合天邪鬼(女の子みたいな見た目で可愛い)と雪女(可愛い)でずっと最後までクリアできてしまった。しかも後半捕獲できないのが増えてくるので(アヤカシ散華にいたような見た目をまとう「絡新婦」とか)ちょっと寂しい。やり込み要素としては十分色々あるので興味ある人は是非に。
・キャラクター
春廻ちゃんマジエンジェル。コレ言いたかった。
・アペンドによせて
春にアペンドディスクが出ると言うことで、しかも三姉妹+春廻ちゃんの内容を取り込んでいるそうだから、ここで書いた欠点は埋められることと期待したい。
色々言ってきたが、これもひとえに神楽花莚譚以来、シナリオの内容的拡充に努めてきたであろうということを踏まえての言及である。折角結婚が出来るシステム・ストーリーなのだから、そこを活かしてくれればと悔やまずには居られない。先にも述べたが「神楽と違うのでは」。神楽ならずっと戦闘戦闘&戦闘でもいいのだが、恋愛を経ての結婚という家庭を強調するゲームであるのだから、それは良くない。要するに、結婚前後で特に大きな変化がないのが一番痛いので、ここさえ直ればと思ってしまう。アペンドでそのあたりちゃんと補強されるのであればこれはすばらしいことだと思う。それ以外の部分は主人公の行動原理や背景、「運命を選択するRPG」のキャッチコピーに違わぬ作品だと思って高く評価している。