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winsvr2008r2さんのウィザーズコンプレックスの長文感想

ユーザー
winsvr2008r2
ゲーム
ウィザーズコンプレックス
ブランド
ういんどみるOasis
得点
85
参照数
840

一言コメント

「多感な魔女達」の成長を追いかける、ある意味では正統派なストーリー。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

「怖いもの見たさ」というのは、購入前の正直な感想だった。何せ、「未来にキスを」や「ギャングスタ・リパブリカ」を担当した元長柾木と、「プライマルハーツ2」や「ワールドエレクション」の近江谷宥の合同であり、さらに、「萌えとHで風力発電」を掲げているういんどみるOasisというブランドでの作品だったのだから。

多忙もあって、体験版を全くプレイしないまま、発売日を迎え、ういんどみるLiveへの期待に胸を膨らませながら、2ヶ月ほどかかってやっと全部プレイできた。1ルート目の神楽坂鳴が終わったところで、これはかなり良いのではないかと感じるようになり、最後に持ってきたアイリス・ラインフェルトのルートでそれは確信に変わった。

一言の欄で書いたように、基本的な軸は、各々の成長にあるように見受けられる。西塔と東塔の生徒会役員は、それぞれ上手くカウンターパートとして機能しており、ヒロインにとってはあこがれであったり、或いは乗り越えたい・乗り越えねばならない壁であったり、また或いは超然とした一葉でさえも、その成長の糧としてメリッサが欠かせなかった。これらは極めて明瞭に対照的に描かれていて、彼女たちの成長をよくよく感じることが出来た。青春ストーリーというのはまさに言い得て妙だと思う。青春という時代は、身体的にも、人間的にも成長する期間なのだから。

しかしながら、アイリスのルートを除いては、あまりに西塔役員が「話を聞かなさすぎる」のが鼻につく。いや、理由は分かる。彼らは得たい果実に対して極めてストイックであり、故に、非常に視野が狭くなっているのであろう。アイリスのルートではその辺り皆成長していくので、その為の「伏線」とも理解できようか。

或いは、マリア・ラインフェルトの態度の冷たさを問題にする見方もありうるだろうか。気にはなるが、教育者としての理性的な面に光を当てれば、理解できなくはないのではないかと考える。それに、アイリスやマリアの母子関係に深く踏み込んでいけるのは、アイリスのルートだけなのだから、それ以外ではこの辺りの不器用さが目立つのも、やむなしといえるだろう。

構造的には、確かに女性しか扱えない技能が、主人公だけは使えるという特異な環境でのストーリーなのだから、既視感があるという批判もありえようか。尤も、この構造性はシナリオ全体を通じて透明化されていく。なぜならば、本作のシナリオは、あくまでも魔法生徒会大戦による各々の成長に力点が置かれていて、この構造性に由来する衝突だとか、ハーレムだとかは存在していないからである。

全体を通じての感想をもう一つだけ述べておきたい。怖いもの見たさを書いた要因の部分は、本作では極めて控えめだった。だが、「成長するヒロインたち」を強く感じることが出来たのは、とても良かったと感じる。


以上が、概ね本作を私がひいきの引き倒しをするほど好んでいる理由である。