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winsvr2008r2さんのシロガネ×スピリッツ!の長文感想

ユーザー
winsvr2008r2
ゲーム
シロガネ×スピリッツ!
ブランド
戯画
得点
69
参照数
203

一言コメント

「こんなもんじゃ終われないよって底力を見せてやれ!」―急に面白くなる、ジェットコースターみたいな作品

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

◆短評
細かいことは気にするな。「可愛い女の子(得物あり)がたまに迷いながら、それなりに強い主人公とバディを組んで勝利を勝ち取る」というプロットが好きかどうかだ。

この作品の感想は上記に集約される。繊細に事細かく各ルートの気になるところを論う作品でもない、というのが正直な感想だ。部活帰りに友人と食べる、中華料理屋の味の細かな善し悪しを論ずることがないのと同じことだ。
細かいことを言えばきりが無いのだけど、終わってみれば何か良かったじゃん。面白かったなあ。そういう感想になる作品。ただしその境地に至るまではなかなか盛り上がりが乏しい。「雨降って地固まる」の雨が降り始めたあたりから物語が走り出して、各ルート正直問題の解決は結構突飛だったりするんだけど、ガーッと駆け抜けてはいエンディング。助走期間が長いので、その前に嫌気がさしちゃうかもね。……完全に学生時代の文化祭だなこりゃ。


◆各ルート評
・愛:最初にプレイしたルート。正直顔芸ヒロインだしゲスい発言の連発で「あこいつは色物やな?」って決めてかかってたんだけど意外や意外。ちゃんと王道してる。ヒロインの可愛らしいところもちゃんと見られて、Good。

・千景:ナイフ使いの後方支援メインなので、まあ、展開的にはどうしてもちょっと鬱々とした空気が流れるけど、そう長続きはしない。ちょっと異色ではあるけど、そこはシロガネ×スピリッツ!、これも後半ガツンと盛り上がってくる。というかまさかの本編中に姉妹丼付きでマジか?ってなってしまった。想定外だったけど、良かった。

・雪菜:一番王道な幼馴染み感で行くのかと思ったら、急に鬼気迫る表情をするわ、暁月に行くわでまあ忙しい忙しい。だけどちゃんと思いだしたよ、っていう結局の着地点は王道か。最後一人だけ「勝負!」で締めるのも彼女らしい。Hシーン、水着分岐で2回分に勘定するのはやめてください……。

・真咲:愛のルートの時点でなんか含むところがあるし、こりゃ対立するボスは剣崎アリスで確定でしょうねって思ってた通りの展開ではある。他方で、追い詰められてるのは分かるけど、急に我を失いすぎだし(でもここの一色ヒカルの演技は必聴だと思う)、主人公お前も暁月に行くんかーい、って思った。夏期合宿以降の展開が一番好きだったかもしれない。可愛らしい真咲が見られるので最高。

◆やっぱり、Adolescence Locatorがゲーム本編を如実に現してると思う。I've sound×戯画×KOTOKOとしては珍しく(唯一?)青春バリッバリの疾走感たっぷりのこの曲は、実は4分を切っており、THE BIBLE収録曲のなかでも上位1割に入る(戯画の曲では「言弾 -KOTODAMA-」を除けば1位)短さ。でもなんかそんなことを感じさせないこの濃密さは、青春ってこんな感じだよなあっていうのを体現していると思う。
ゲーム本編も青春の良いところはこの短くも濃い時間なんだよなっていうのはよく感じた。

「イタイツライって泣いてる暇も無いくらい 青春って忙しい」その通り。

◆書き忘れ。OPでラスボス感バリバリに出してた御剣(田中幸子)、OP流れる頃には既に倒されてるし不幸すぎる……。愛のルートなんか完全に居なかったかのような扱いだったしな……