「涙は見せず上を向いていこう 追い風に乗って叶えてみせる」―山あり谷あり、紆余曲折を辿っていくストーリー
榊原ゆいの歌う「Little Wing」が好きで、前々から所有はしていたのだが、心が温かくなるような作品はないかと探している折に何とはなしに始めた一作であった。
作品は全体的に少女の恋愛ものというよりは、フォルテールを通じて友情を如何に育むかという趣が強い。特に序章ですくね様との恋愛模様一直線で行くのかと思わせて、紆余曲折を経て各ルートを進んでいく形になる。
〇各ルート
(a) 幸村ちほ:Rhapsody
Rhapsody(狂詩曲)の名が正しく妥当するような、振り回され振り回しの連続で自分も中々胃が痛くなるシナリオであった。後半部のちほちゃんの激烈な感情はよく分かるのだが、なんでまああの胃の痛い前半に更にこれを突っ込んでくるのか……。
(b) 天野まり:Rondo
他のルートでは概ね嫌味なキャラとして登場する(特に幸村ちほルート)まり様だが、意外や意外個人のルートでは可愛いモノでは無いか。いやしかしああいう言動をする理由もこのルートを通じて分かるし、その影にある本当のまり様とのギャップが今となっては死語となった「萌え」の感情を生み出すよう意図されているのかもしれないが、それにしても他のルートにおけるまり様の癖が強すぎる。
(c) 高屋すくね:Nocturne
前半部は「よもやこういう展開か、ああやっぱりその通りか」と思わせるような展開なのだが、この展開にしたとして、他のルートですくね様のこの解離性同一性障害は放置されるのかと思うと、なんだかいたたまれない気持ちにもなる。あとは如何せんかぐらに対する拒絶の意思が強くて結構辛い。
後半部は中々に甘い展開なので、耐えきれば、とも思うのだが、前半で延々かぐらを拒むすくね様とを見せられ、ゆうなさんを通じた問題解決の描写が短いため、途中で打ち切る人もいるのではないかという印象がある。
(d) 二条院琴美:Bel canto
琴美さんのルートが一番スッと読めるシナリオで、好みだった。このシナリオがあればこそソルフェージュをプレイして良かったと思える。しかしここでも織歌&未羽との軋轢を見てしまうので、渋い顔になってしまう。しかも手の甲にキスをしたあとの展開なんだが……。
(e) 二波織歌・上月未羽:Capriccio, La Falia, Scherzo
まり様の性格が他のルートに比してかなり角が取れており、やや駆け足感はありつつも、読後感はいい。
(f) 総評
すくね様のルート以外でのかぐらは、わざわざ海外駐在中の両親を説得して帰国したとは思えないほど、多少濃淡はあるとは言え、すくね様への描写が少ないのは気がかりな印象をうける。「えっそんなにスパッと割り切れるんだろうか?」という気がするのだが、毎日目まぐるしく生活していく中で、やむを得ないことなのだろうか。
〇 La finale、Sweet Harmonyは良いのだが、そこまでにたどり着くまでがなかなかに山あり谷ありである。個人的には琴美ちゃんのルートがお気に入りで、このルートをプレイできたのは良かったと思う。他方で、かぐらの性格に起因することがおよそ明らかであろう各ルートでのヒロイン間の軋轢は、しかしそこまで入れ込む必要があったのか、正直なところ悩ましく思える。