天使と悪魔というより、神vs平民のお話
一つの側面から語ることが難しい作品。
少なくともイチャラブゲーではなく、かといってインテリ向けのお話ではないのは確か。
あとはまあ、ライターの言う通りに多分に中二成分が含まれている、といったくらいか。
さて、これは本編でも語られていることだが、メインヒロインは天秤に乗せられた対極存在ではなく、似たもの同士ということ。
各ルートがそれを示すように、基本的にヒロイン・愛生と映瑠による「神の視点」によって物語は展開される。
彼女らの倫理こそが絶対であり、彼女らの予測こそが未来であり、彼女らの運命こそが「セミラミスの天秤」そのものである。
故あって、物語はどう転んでもご都合主義的な方向に転びがちで、それを危惧しての各BADENDともいえるだろう。
冒頭で天使と悪魔と書いたが、蓋を開けてみれば占術研は悪魔の集団に他ならない。
愛生という、一般の倫理感から大きく逸脱した考えを持つ異端の悪魔を受け入れている時点で同罪。
客観的に物語を見られるプレイヤーにとっては、彼女らの行動は酷く奇妙な光景に映るだろう。恐らくはそれが正しい見方だ。
通常、物語はバランスによっては成り立たない。
それはさながら天秤のように、「釣り合いの取れた状態」というものは、何者かが操作しない限りは滅多に起こり得ないもので。
例えばこの「セミラミスの天秤」が、更なる「神の視点」によって語られているとしたら?
物語上に登場する全ての人物は、「神に与えられた神の視点を持つ者」と「それ以外の者」に分けられるのではないだろうか。
はてさて、いったいどこまで掘り下げればいいのやら。「神の視点を与えた神」である塔子まで?それを更に与えたもうたライターまで?
それともそれとも・・・
結論は出ない。厄介な作品を残してくれたものだ。
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全然関係ないんだけど、今回は桐谷女史の声に萌えられなかった。
良い意味で落ち着いてきた?それとも低い声役には合ってないのか?