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whipさんの魔女と剣と千の月の長文感想

ユーザー
whip
ゲーム
魔女と剣と千の月
ブランド
KAI
得点
90
参照数
13617

一言コメント

(※5/12大幅追記)メインヒロイン7人を全裸まんぐりでズラっと並べて子宮姦&子宮に直接卵植えつけ、産卵させて出産させて全員まとめて苗床化。素晴らしすぎる全滅ENDです本当にありがとうございました。いやー壮観だった。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

 毎度おなじみ戦うヒロインがアレな感じな目に遭う陵辱ゲー。タイトルやパッケージだけ見ると萌えゲーに見えないこともないのも毎度おなじみ。萌え絵でハード陵辱は貴重なのでその時点で自分の評価は高くなりがち。感想にも点数にもそれなりにバイアスがかかってるものと思われる。
 項目ごとに適当な感想を。

【ストーリー】
 かなり頑張ってる。というか相当頑張ってる。ヒロイン陵辱ゲーのストーリーなんてエロシーンのおまけでいいんだよというスタンスが主流の昨今、それなりのストーリーを描こうしているメーカー自体がそもそも貴重。というかもはやここくらいじゃないだろうか。
 前作のペンデュラムでもそのへんの熱意だけは伝わってきたのだが、残念ながらシナリオライターが力不足だったため実現はできていなかった。その点今作は相当進化したと言っていいだろう。やはり和泉万夜はプロだ。必要な伏線をきっちりと撒き、安易すぎると感じさせない範囲できれいに収拾を付けている。
 第二部終盤からの展開は読み物として普通に面白く、熱くなれる場面もちらほらあった。ストーリーの出来はメーカー過去作の中でもダントツで一番だろう。ヴァルプルギスシリーズ最終章として、いい感じに終われたんじゃないでしょうか。

 とはいえ粗もある。自分が最初から最後まで気になってしまったのは、主人公・澪の成長についてだ。
 戦闘人形として生み出された澪が他キャラとの交流を通じて人間として生きる喜びを見い出していくのが本作のキモになっているのだが、このへんの描写が全体的にペラい。
 ぶっちゃけ「このくらいで人類守りたいとは思わんやろー」と思ってしまったのも事実なので、一番盛り上がるべきクライマックスでいまいちノれなかった。描こうとしてることはよくわかるのだが、そこに至るまでのバックボーンが薄くて若干上滑りしていたというか。「何度犯されても戦い続けてきた」という野太いバックボーンに支えられた久遠のエピソードの方がはるかに説得力があったため、そのへんとの対比で余計に薄く感じたのかもしれない。

 そもそも沙耶香が澪を起動したという初期設定自体がまずかったと思われる。
 自分たちの都合で作っておいてすまなそうな顔で「ごめんなさい」「悪いとは思ってるわ」「身勝手なことをしているのはわかってる」と周囲のキャラたちが繰り返すシーンは・・・うん、なんというか、あかんだろうこれ。どう見ても純然たる身勝手だし、こんなんじゃ澪と他キャラが交流しようがない。初期の気まずさが災いして関係性を碌に進められないまま最後まで来てしまったというのが正直な感想である。
 完全に後知恵で申し訳ないが、このへんの問題は「澪は千堂が勝手に起動した」という設定にすれば大体解決したのではないだろうか。沙耶香たちは起動をためらっていたけれど千堂が独断で行ったことにすれば、沙耶香の「ごめんなさい」という態度もそこまで身勝手には見えなくなる。作中に溢れる欺瞞感も薄れ、澪と他キャラがもっと自然にコミュニケーション出来てたんじゃないかと。
 というか背負わせなくていいヘイト要因をヒロインたちに背負わせる必要はないと思うんですよマジで。作品のテーマ的に必須とかなら別だが、そうじゃないなら男キャラにでも背負わせといた方が万倍いい。千堂は終盤に株上げイベントも用意されてるし、いろんな意味で適任だったろう。それから話の流れ的に割りを食うポジションにいるとはいえ、今作の沙耶香は全体的に無能すぎたような・・・アルフォンソ関連の清算はよかったんだけどねー。

 最終シーンにかかわる一番重要なポイントの描写に齟齬を感じたので、物語としてまとまってはいるけれど名作にはなりきれなかったというのがストーリー全体の感想だ。上でも書いたように久遠編とも言うべき第二エンドの方が、バックボーンがしっかりしていて面白かった。トゥルーエンドが同じくらい面白かったら名作と言ってよかったと思う。本当にあと一歩という感じで惜しい。


【エロシーン】
 質・量ともに水準は満たしてる。ここのメーカーのゲームは価格帯のわりにシーン数が少ないのが特徴みたいになっていたので、そこが改善されていたのは純粋に嬉しい。ただ、キャラの多さがメリットにもデメリットにもなっている感じ。
 Hシーンの構造としてはメイガスオーダーが全滅してヒロイン7人全員の末路を描く大きめのバッドエンドが3つと、ヒロイン数人が犯されて終わる小さめのバッドエンドがいくつか。それに加えて本編中で仲間を庇うために捕まったりするHシーンもちらほら。絶望感あふれるバッドエンドもいいけど、本編中に不可避のHシーンがあるのはいいよね。「ここは私に任せて先に行って!」を敢行したイスカを見た瞬間パンツ下ろしましたよハイ。あぁ^~イスカ最高なんじゃ^~

 メインキャラが7人と多いだけあって、バッドエンドを迎えたときの全滅感は今までプレイした戦うヒロインものの中でもひとしおだった。複数のヒロインが同時に陵辱されているシーンが充実しているのも全滅感を増大させている。後半の大バッドエンドでは複数シーンが畳みかけるように連続するので、複数陵辱シーンが好きな人(俺)にはたまらないものがあったんじゃないだろうか。
 また、KAIの過去作には「なんでこのキャラとこのキャラの組み合わせなの?関係性薄くね?」という複数シーンがかなり多かったのだが、本作ではそのへんも改善されている。ちゃんと意図がわかる組み合わせになっているので、複数シーン好きとしては嬉しいかぎりだった。
 しかし7人まとめての陵辱シーンが3つもあるとは・・・気合入ってるなあ。

 上に書いたのはキャラが多いことのメリットだが、ここからはデメリット。
 キャラが多いため一人一人の掘り下げがどうしても薄くなり、結果として堕ちるのがかなり早い。どのヒロインも大体1シーンで折れてしまうのは残念だった。陵辱過程をスキップして始まった時点で折れてるシーンとかもけっこうあるし。ぶっちゃけ途中で出てきたモブ二人の方がメインヒロインたちよりよっぽど抵抗していた気がするので、亜瑠絵やイスカたちにももっと頑張ってほしかったところ。

 KAI作品の大きな特徴であるラプラスビジョンだが、今回は複数シーン限定。
 これはCGの枚数が限られてる中で出来るだけ多くのヒロインでラプラスビジョンを、と考えた結果だろう。賛否両論ありそうだけど自分的にはOKかな。ここに単独シーンが追加されてればなお嬉しかったのは間違いないが。
 声優さんは相変わらず頑張ってた。過去作を見るにイスカ役の金松さんがけっこう不安だったんだけど杞憂だった。絶叫シーンが上手くなっててびっくり。
 亜瑠絵とイスカがベヒーモスに腹ボコォされるハードシーンが個人的な今作のベスト。
 ただ、今回のラプラスビジョンはどのシチュも「置きにきた」という印象が強かったので、もうちょっとあっと驚くようなプレイがほしかったかもしれない。

 ラプラス以外のシーン全体の傾向としては、頑張ってシーン数を増やしたことの弊害なのかややマンネリ感があった。
 「とりあえず」の三穴責めが多すぎる。触手って穴があるから挿れとけばいいってものじゃないと思うんですよ僕は。
 何というか、三穴責め!三穴責め!三穴責め!ではありがたみを感じないのだ。このシーンでは前の穴をねっとり、このシーンでは後ろの穴をねっとり、このシーンでは胸をねっとり、このシーンでは子宮まで責める、このシーンでは満を持して三穴責め、みたいにシーンごとにテーマをしっかりと割り振ってくれた方が、少なくとも俺はエロく感じる。
 とはいえこのへんもヒロインが多かったせいなのかもなあ。1、2シーンで堕とす必要があれば、どうしても穴を埋めてしまうのだろう。

 あとはHシーンに入る前の敗北描写。これは声を大にして言いたい。「結論を言えば亜瑠絵たちは敗北した」ばっかりじゃねえかオラァァァンッ!?どうやって、どんなふうに、どう負けたか描かないと意味ないでしょ!ちゃんとボロボロに!絶望感たっぷりに!負けていく様子を描写してくれなきゃ!
 それがあるとなしとじゃ興奮度が段違いなのでマジでお願いします。本編中に捕まるシーンとかはそのへんいい感じだったのだが、肝心のバッドエンドの導入が淡白とは・・・ままならねーです。


【愚痴】
 全体的にモザイクが荒いのとピー音がやたらとでかいのがちょっと・・・。ヴァルプルギスのモザイクがどう考えてもでかすぎたのはよく覚えているが、他の過去作もこんな仕様だったっけ?とやや首を捻る。モザイク関連は改善されてた気がしたんだけど、なんで先祖帰りしちゃうのか。
 近年の抜きゲはそのへん行き届いていて当たり前という感覚があるのでなおさら印象が悪くなる。ストーリーにもHシーンにも気合が入っていただけに、画竜点睛を欠くという感じ。勿体ないなあ。

 ところで変身シーンがえらい劣化してたけど予算がなかったのだろうか。
 前作ペンデュラムの変身シーンが凄まじいクオリティだっただけに残念だった。主人公格の澪とつばめだけでもいいから用意してほしかったなー。

 あとは男性ボイス。そもそもいるのかこれ?
 ヒロインのボイスと被るとミュートにしててもヒロインのボイスを切っちゃうからくっそ邪魔だったんだけど。おまけにミュートでもきっちり音量ゼロで喋ってるらしく、オートモードでの待ち時間が無駄に長くなるし。男性ボイスを入れたいこだわりがあるなら、最低限のUIを整えてほしい。


【総評】
 いろいろと惜しかった部分はあるが、自分の中では傑作寄りの良作という評価。
 「ここをブラッシュアップしてほしい」という箇所がはっきり見えているだけに本当に惜しいのだけれど、三作続いたヴァルプルギスシリーズの大団円としては、及第点以上だったと思う。
 ヒロイン満載の全滅感は今回でたっぷり堪能したので、次は原点回帰してメインキャラ三人くらいの戦うヒロインものを作ってほしいなー。今度は少数精鋭をねっとりじっくり嬲りたいものである。できれば一年後くらいに・・・無理かな?