るーすぼーい作品だったらとりあえずこれかなという出来。
個人的にはサチのシナリオが一番面白く、そこからはやや失速していた感があるが、基本的には面白かった。
作品の最大のトリックは主人公のラリった独白が、ラリった演技で姉に話しかけているものという点だろうか。先にG線をやっていたため、これは正直読めてしまった。「固定概念」は覆され、説明は負けフラグ。
内容としてはるーすぼーい作品で繰り返し描かれる「人間を切る」リアリスト的価値観VS極限状況で現れる人間の強さをドラマチックに演出するということの繰り返しに思える。
氏の作品は「名言」でよく知られていて、プレイ前にそういうものを読んでいたため、現実主義を描く自己啓発的側面が目立つのかなと思っていたが、むしろそのような価値観が最後には否定される人間肯定的な価値観が前面に出ている点は意外だった。
個別ルートについて感想を述べていく。
まずサチルートについてはサチの自堕落で他責的な描写がリアリスティックだった。とくに札束を投げ一度は決意を固めるものも結局すぐには性根を正すことができないという部分はかなりうまく描かれていたと思う。その態度も最後の最後に覆り、しかしそれでも達成は叶わず、それでも前を向いて生きていくことを決意するという描写は胸に来るものがあった。
灯花は決断できず「子供」であり悪い大人にいいように操作されてしまう様、虐待の連鎖などの描写などは上手く描けていたように思えるが、研修行きの中断や実の親の更生(これは嘘であった可能性も示唆されているが)などが都合よく描かれ過ぎており、また間延びしている感もあった。
夏咲ルートからはだんだんご都合主義が増していき、最後の姉ルートはあまり印象に残らなかった。
どれも最初に述べた展開を繰り返すという部分が大きいのであまり面白く感じなかった。るーす作品が初めてだと叙述トリックで感動するのかもしれない
あと無駄なSF小説描写も情報統制が行われている伏線だと思っていたのだが、これは単にそういう演出ということでやや拍子抜け。
良い点を付け加えておくと地味にキャラクターが可愛いと思った。シナリオゲーとされているけれどそういう点も高評価を受けている理由の一つに思える。ですです。
なんやかんや言って初心者から幅広くお勧めできる良いゲームだと思う。