個人的には序盤の方が好きで、終盤のゴテゴテの設定には失速感を感じてしまった
CASE-1~CASE-3 は結構楽しめた。
どれも平凡なのかもしれないが、どの物語もキャラクターが立っていて、明確な主題もあって、演出も充実していたように思える。
翻って、この作品に高評価を与えているCASE-0についてはなんかいろいろ微妙と感じてしまった。
人工都市の陰謀論的世界観もあまりうまくつられているようには思わないし、仮想への移住を易々と受け入れるスピード感も正直言ってついていけない。
終盤の集合無意識から、世凪仮想の神として復活させるというのも正直言ってそれは本当に世凪なのかという疑問が浮かんでしまう。(終盤で本物の世凪が仮想の中では実在しているかのように描かれているが、それならば復活に至るまでに主人公の語りとイメージ形成が必要というのもあまりよく分からない。)
全てを覚えていてしまう主人公といずれ記憶を喪失してしまう世凪の対照というのは面白い気もする、記憶を失うことを理解してしまうので喪失に至る物語しか書けない世凪というキャラ付けも面白かった。
なぜここまで不満に感じるのかと考えてみると地下都市のディストピア設定があまりうまく作りこまれているようには感じなかったためだろうか。ディストピア設定は世凪を通した仮想空間の構築の為にも「必要」な設定ではあるのだが、作品が全体として作りたい設定と逆算で作られているように感じてしまう。CASE-0を通じて、このような作為感を覚えてしまい、イマイチ楽しめなかった。
要するに設定にキャラが振り回されているように感じてしまったということにまとめられるだろうか。
人に勧められない出来ではないが、滅茶苦茶面白かったかというと、終盤の失速感を感じる作品ではあった。とはいえグダグダと引き延ばさずすっきりと終わる読後感は多くの作品より優れているように思える。
背景美術、音楽などの作りこみもクオリティが高い。
ただセーブボタンが小さすぎるUIはわかりにくかったので辞めて欲しい。