クオリティの高い群像劇だが、傑作にはあと一歩及ばない気がする。
渋谷を舞台に展開される壮大な群像劇。様々な人物の思惑や行動が一本の線としてまとまっていく快感は素晴らしい。
しかし色々と不満点はある。
まずシステム面は正直つまることが多く、打開も難しくて総当たりをする必要があるため、何回か攻略を見る羽目になった。あまりゲームとしては面白くないし、システムの面白さはなかった。特に亜智が理不尽にタクシーに轢かれる展開とかはあまり必要性を感じない。マルチサイトを活かした展開としては例えばEveとかの方がずっと感じが良かった。
舞台設定的には渋谷という街があまり活かされていない気がする。特に「封鎖された渋谷」というパニック要素を想起させる部分が本当に最後の方だけであり、期待外れの感じはあった。
また伏線が沢山張り巡らされ回収されていくというパターンの話は、終盤に近付くにつれ、余ったパズルのピースから展開が予測できてしまうという問題がある。類似の作品では最終盤に叙述トリックなどの大ネタを持ってきて、盛り上がりを演出するケースが多い気がするが、この作品は割と淡々と終わってしまうため物足りなさを感じた。また様々なものが無駄に伏線になっていると、他にも不自然なアレは伏線ではなかったのか?というチェーホフの銃的な不満もついて回る。個人的には飛行船とかは大ネタなのかなと思っていたので、肩透かし感を持った。(他には姉妹で服の破れている個所が同じことだとか)
地味に御法川実が気に入っている。この手のキャラクターは最近は不快要素として敬遠されることもある気がするけど。トリックスター的で時に道化のような行動をとりながら、情熱を持っていて、人の心をかき乱していくことで物語を駆動していくキャラクターというのは面白い。