前作リパブリカよりもコンパクトに主題を扱っているのは良かった
ループを日常的にする人類を題材としたSF。そこでは母親の死すら大した意味を持たない。
前作リパブリカにおいてはこの世界が日常的にループする世界であることが最後の方に語られるため、この設定の面白さが活かされていなかったように思えるが、今作においてはループ設定を前面に出した展開となっており前作よりも楽しめた。
作中では天使によるパターナリズムを受け入れるべきか否かにまつわる討議がなかなか印象的。こrはギャングスタリパブリカよりも「悪」に関する討議として印象的なものがあった。ギャングスタリパブリカにおいては「悪」に関する議論が深化されるのかと思ったのだが、そこは極めて表層的な結論(≒世間の抑圧ってクソだよね)に至っていた気がするのでその点に関しては本作の投げかける視点や議論はもう少し深化したのものだったように思える。
またループを日常的にする人類は人生の多様性を受け入れることができる一方で、責任感や人生の一回性を忘れてしまい享楽的に生きるようになってしまうとの議論はなかなか面白い。
そして現在のみに生きる人間はやがてヒトではなくなってしまう、ゆえにアマネはその根本原因たるループを取り除こうとする。これはエロゲーVS現実の比喩ともいえるだろう。
そしてこの二項対立に対して時守叶はむしろ、その二項対立を投げかけて来た相手の人格を尊重する態度をみせることで、
その二項対立をうやむやにし、最終的には人格の滅びを受け入れてしまう。
人格とは遡行的に感情を再構築したもの、言うなれば地の文であり、もともと存在しないものであった。ゆえに人格の消滅は嘆くべきものではない。そこにアルカディアがあると本作は結論付ける。
正直人格のない社会に関してはあまり理解が及ばなかった。
なんというかキャラクターに対話をさせることで哲学的な思索を行う小説ともいえる。なんか永井均とかがやっているのでそういう路線を元長は目指したらいいのではと思ってしまう。エンタメとしてはやはりダメ。
KOEなんかでも話題になっていたが、日常描写の病的な面白くなさは意図しているのかとすら思えてしまう。これは未キスなんかからもまるで進歩しているように思えない。
CG数が足りない未完成に見えるのは元長ファンにとっては気にならないだろうが、どうもシャールカが寝そべっているCGなど本当にとってつけたようなCGも多い。今回は一本道であったこともあり、これだったら小説でいいだろうと思えてしまった。