生きる意味を探していくよくまとまった一作。キャラクターが魅力的。
「生きる意味」というのをヒロインと探していく物語だったと思う。
主人公のアイデンティティの揺らぎがヒロインと共に過ごす中で丁寧に描かれおり面白かった。
カイムは牢獄での生活を経て幻想にすがってはいけないといったことを強く信じるリアリストであるかのように描かれる。
一方で彼は兄の残した「立派な人間になる」べきであるという言葉をに縛られており、ある種の理想との葛藤を起こしている。
中盤、彼は、実のところ「牢獄」から出ていくことさえ可能なのにもかかわらず、そうしようとせず、むしろ「牢獄での苦しみにしがみついている」点をイレーヌに指摘される。
結局彼が牢獄で用心棒をやっていたのは暗殺をしていた時と変わらず「できる」ことをやっていたにすぎなかったのだ。
最終的には自分が生まれてきた意味であったり、なすべきことというのは「選べばいい」ものであるということに主人公は気づき、ティアを救いに向かう。
結局ティアは消滅してしまうわけであるが、一応天使の言葉のままに人間を滅ぼそうとしたティアを目覚めさせたという点で主人公の成長には意味があったのだろう。
ティアはなぜあそこまで夢に見た自分の使命に対して準じているのだろうか。結局、それを選び貫いていくことこそが人生であると理解しており、そこが主人公と対になっているのも良かった。
ラストについてややあっさりとしすぎではないかといった批判、世界を選ぶかヒロインを選ぶかというのはまあ使い古されたテーマではあり、伏線や謎の解決においても目を見張るものはなかったようには思えるといった批判は考えられるが、全体のまとまりにおいて白眉という印象。
キャラゲーのオーガストというべきか、すべてのキャラクターが魅力的だった。特にエリスの病み方はなかなか面白かった。「ヤンデレキャラ」はパターン化され人気を博していた気がするが、なんというかエリスの病み方は真に迫るものがあった気がする。