主人公の魅力、コメディはトップクラス
プレイしてから結構時間は経ちますが、主人公の面白さ&かっこよさは今でも記憶に残っています。
衣笠氏の作品と言えば、主人公に魅力があるのが特徴ですが、本作の海斗はまさにその中でもずば抜けてカッコよくハイスペックな主人公と言えます。エロゲ史上カッコいい主人公と言えば?と言われると、この作品の主人公を上げる人も多いでしょう。
所謂「実力を隠している最強系主人公」で、本来の実力は人間の域を超えるレベルの戦闘能力を備えていて作中最強の実力、精神力の強さも異常、趣味が読書で一度読めば大体忘れずに知識として吸収する頭の良さ、ギャグもこなせるノリの良さ、一部を除いて誰にでも好かれる人間性、巨根、イケメン、全てにおいてハイスペック。
だが、禁止区域出身者は表の世界では人間として扱われない事から自身の素性を隠して生活しているので、周りからは素行も成績も悪い不良という認識を持たれているというラノベの俺TUEEE系主人公によくあるような設定ですが、特に理由なくハイスペックという訳ではなく、心身共に化け物じみた強さにはきちんと納得できる過去があります。
こういう自分勝手で素行の悪い主人公は、書き方次第ではものすごく不快な主人公になりかねないですが、海斗は作中でも麗華が言ってるように、全然不快感はなく、魅力的なキャラ(特に男キャラ)を書くライターの実力が伺えます。主人公の性格を活かしたヒロインやサブキャラとの絡み方が面白く、ギャグセンスも高いので作品を勧めていくに連れ、ヒロインより主人公の方が魅力的になってきます。特に尊やツキとの絡みが最高、麗華とのやり取りも面白くて相性抜群だと思いました。
選択肢の使い方も面白く、それを選んだ後の海斗の行動も毎度笑わせて頂きました。
一般、18禁問わず、自分が今までしてきたゲームの中でここまでかっこいいと思えた主人公はなかなかいません。
主人公が気に入れば、間違いなく楽しめる作品ではあります。
と、主人公の魅力を語りましたが、主人公がカッコいいからこそ、このシリーズには残念な部分が多々ありました。
それも作り直しを希望したい程に酷い部分が。。。
1番は、物語の畳み方です。共通の日常シーンは尺も多く取られていて、ライターもノリノリで書いてるなっていうのが分かる内容だったのですが、本来一番盛り上げるべき終盤のクライマックスパートの描写がとにかく雑。
2作目のFDまでは基本的にコメディ中心で楽しめたので、3作目の終末論では、過去編で張られた伏線や、主人公の設定を活かした、格好良くて熱い活躍を丁寧に描いてくれることを期待していましたが、物語の核心部分、禁止区域が大きく関わってくるのがほぼ終盤で、そこからは進行もかなり駆け足というか、高速のように進むので終わった後のカタルシスが何もない。むしろ、え?これでこのシリーズ終わり?となんとも言えない気持ちになる。一応麗華√では禁止区域で無双はしていたが、今まで禁止区域特区の人間はヤバイ的な書き方していたのに、幹部クラスもあっさりポンポン倒していくので、燃焼しきれず。前作から因縁を持たせて最終作でも散々ヘイト溜めてたアキラもいざ戦うとただの雑魚で手負いの海斗に瞬殺だったのでちょっと拍子抜け感が。。。
2番目は、攻略キャラが無駄に多すぎる。攻略出来るキャラが多いこと自体はむしろいい事なんですが、それは一つ一つの√が丁寧に描かれている場合ですね、終末論の√はどれも肝心の後半部分が雑すぎる。麗華と薫とかほぼ同じだし…むしろ攻略キャラ増やしすぎたせいで全て駄目になったんじゃないかと思うほど。
これなら攻略キャラは麗華、尊姉、薫、舞、朱美の5人位に絞って各ルートをもっと丁寧に書いてくれた方が良かった。
沙代とかマコトとかなんで出した?ってくらい意味のないキャラだったし。
キャラが多いのは華やかになるし話も広がるけど、出すだけ出して掘り下げきれず、物語本筋上での役割すら与えず持て余すくらいならいないほうがマシだよ。
3番目が攻略キャラが多い割にHシーンのやる気の無さ、シーン自体は全キャラ合わせるとそこそこあるけど、ひたすら同じような喘ぎ声が続くだけで、まともにシチュエーションを書く気がないように感じた。自分はこの作品は途中から主人公目的でプレイしてたので、あまり気にしなかったけど、本来エロゲに求められるエロ目的で購入するのはオススメ出来ない。
3部作という事もあり、期待値が高かったので終末論の後半部分にはガッカリしましたが、今でも主人公の魅力とコメディ部分だけは数ある作品の中でもトップクラスの出来だと個人的に思っているのでこの点数です。
転結部分、禁止区域が関わってからの戦闘描写やキャラクターの心情等を丁寧に書いてくれたら傑作になりえる内容だったと思うととても惜しいシリーズでした。