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walnutさんのCHAOS;HEAD NOAHの長文感想

ユーザー
walnut
ゲーム
CHAOS;HEAD NOAH
ブランド
MAGES.(5pb.)
得点
59
参照数
129

一言コメント

陰謀論と厨二病という、さじ加減の難しいラインをうまくクリアしている

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

「ニュージェネレーション」、通称ニュージェネという猟奇的な連続殺人事件が起こる渋谷が舞台。主人公の西條拓巳は、しかし怖くて近寄らないようにしようとする。が、現実は非常なことに、悲劇の方から拓巳に近づいてくるのだ。事件の裏では妄想を現実化するギガロマニアックスという特殊な人間と、人に知られぬまま支配を獲得しようとする権力者の存在。鍵を握るのは拓巳らしい。というのが大筋。

拓巳を追い詰めようとする謎の「将軍」ってのも出てくるが、そもそも周り全部が謎なので何もわからない。そんなまま進んでくのです。

ヒロインというか個別が存在するのは6人。それとノーマル、バッド、トゥルーの計9エンド。後ろ3つはあんまり変わった感じがしない。

メインのルートは、将軍が真の西條拓巳で、妄想で作られた西條拓巳が覚醒して陰謀論的な敵を打ち破る内容だ。主人公がだめすぎて目も当てられなかったが、一度やる気になると普通にかっこよくて好きになっちゃった。バッドは陰謀論を打ち砕くのに失敗する。でも最後はヒロインの殺される。なんで?トゥルーは殺されなくて済む。よかったね。それだけだったから、色々と個別を見た甲斐があまりなかった。

リミ√は、あまりメインと変わらなかった印象。拓巳がすべきことをリミが代わりにやったって感じ?でも、リミしか頼れないしリミと一蓮托生みたいな気持ちになっときながら、拓巳は一生頑張ろうとしないダメっぷりが一貫していて良かった。突き抜けると良さになるって本当なんだね。

ゆあ√は、ゆあと思っていた存在が実は最初の事件の被害者であるミアと自覚し、代わりに死んだ姉のために自分も死のうとするが、拓巳の見せた自殺する妄想で死を擬似体験し、死ぬのが怖くなり、それを拓巳に受け入れられて生きようとするところで終わる。まあ、順当。求めていたしよかった。

七海√は思い返すと一番良かった。拓巳が見ている七海は妄想上の存在で、現実には別にいて、黒幕に囚われている。右手を切断されている。悲しいね。現実逃避した拓巳によって、妄想上の七海を実体化スレスレまで持ってく。それで現実の七海とぶつかってしまう。でも渋谷を地震が遅い、自分も瀕死になってなお拓巳は現実逃避し、七海の妄想に逃げる。この清々しい逃げの終わりが気持ちよかったのでヨシ!

あやせ√は最早電波。あやせの見るセカイが他の人と違うのはわかったが、でも心が死んだヒロインから、剣を回収してノア2をぶった切るのは、思い切りが良くてむしろ笑えた。

セナ√は陰謀論の様相がさらに深まった。世界観理解に大事だろうけど、何も信用できなくなる。この知っちゃいけないものをしるぞくぞく感は楽しかった。

こずぴぃ√も好き。元から暴走気味なこずぴぃが本当にぶっちぎれて気持ちよかった。末が拓巳と一緒に終わりゆく自分たちを感慨深げに眺めてそれっぽいことをいいながらFinってのがいい感じだった。

全体的に陰謀論と厨二病をうまいこと調合してっていう感じ。絶妙にゾクゾクしてカッコいいと思えるライン。そこがよかったけど、微妙にひと押し足りない。