外道を行くという基本コンセプトながらも、シナリオの熱さは王道だった。序盤から終盤まで楽しめた、魔族と奴隷の復興の物語。
King Exitも楽しめたので、今作品への期待も高かったが、予想を上回る面白さで最高だった。
地下の暗黒大陸に閉じ込められ、絶滅を待つしかないと思われた魔族の反逆の物語。デスポリュカを魔族の理性とし、世界征服を始める。
King Exitをプレイした後なので、そのストーリーを頭の裏で思い出しながらプレイしていた。洗脳されてしまったら解除できない永久洗脳や、人の女性を母体として魔族を生み出すといった非道な行いをするかもと予想していた。しかし、魔族を率いるデスポリュカが優しい魔族だった。だから、生き残れる必要最低限の悪で済ませ、できる限り平和で、正しい世界を目指す。
征服される側の世界といえば、奴隷制度が蔓延り、貴族や王族といった上流階級の人間は下々を圧迫する政治を行なっている。デスポリュカらは、そういった歪みを正すような形で侵攻していく。その過程で、虐げられてきた人々から心強い仲間ができる。かくして世界で1番強い帝国の喉元にまで刃を伸ばしていく。
そして皇帝との最終決戦へ。
皇帝は永い時をかけて人類を平和に導こうとする「祝福」なる存在だった。しかし、「祝福」は人類のさがそのものが恒久的な平和を作り出せないと気付き、ディストピア的世界を目指すようになる。そのやり方は最早「呪い」とすら言えるものであった。
デスポリュカらは、「祝福」の根源を知り、それを乗り越えようと撃破する。そうして世界平和を成し遂げるのであった。
達成感に満たされて眠るデスポリュカ。ふと寝床を襲う者が。そいつはデスポリュカを殺すことで人類にとっての平和を作ろうとする救世主とも言える人物であった (キャラデザや口調からして、King Exitのグイーネだろう)。彼女に追い詰められてしまい、瀕死となるデスポリュカ。他の魔族も窮地に陥り、非道に手を染める。そのままデスポリュカは友人リリィキラーと共に結晶となり、傷が癒えるまで眠る。
目覚めたときには100年もの時が経っていた。魔族は絶滅したこととなっている。世界征服を達成したのに、結局魔族を絶滅から救えなかったと失意に沈む。そんな時に、仲間の声がする。彼女が眠る前の仲間が匿っていた魔族だった。ほんの世界の片隅で、地上で、魔族は未だに生き残れていたのだった。
以下各キャラへの思い出
《デスポリュカ》
愛すべき魔族少女ポリュカちゃん。デビルスマイルがこわかわいい。序盤から容赦なく王様を殺しにいくが、根は優しく争いが苦手。でも魔族を救うために全力なので必死に戦う。本当に熱い娘で、仲間のことを裏切れない、見捨てない。残酷な世界を征服すると一緒に救おうともする。彼女がいるからこそ、Demons Rootsは名作であり、大好きな作品になった。
彼女に関するストーリーで好きなのは2つ。
1つは三章終盤。リリィキラーにしていた、ポリュカが道を外しそうになったらポリュカを殺すっていう約束。信頼してた人物に裏切られ、人間不信になるポリュカ。永久洗脳と産場を起動すると決断する間際に、リリィがポリュカの心臓近くにナイフを刺す。ポリュカに迫られる選択「約束なんて捨てろ」「約束をまもれ」。ここに作品に通底するテーマを感じるほどだ。たとえ言葉の上での約束にしても、価値があるものだ。「約束をまもれ」を選択したのち、狼狽する魔族たち。魔族らにポリュカの命を託す。魔族らもポリュカの命を殺るのは嫌だと。ポリュカを生かすのだった。
もう1つ五章の入り。皇帝に囚われ陵辱されていく。仲間を救うために皇帝に嫁入りすると決めたのだが、皇帝は裏でポリュカの仲間を虐殺しようと計画していた。ポリュカの絶叫が皇帝の城に響き渡る。そしてやってきた結婚式の日。皇帝に誓いを立てなければならなくなった、その瞬間に仲間からの助けが。そして世界の支配権を巡った最終決戦の幕が開ける。
これらの展開が本当に好き。なぜって、ポリュカが今までしてきたことが最高に輝いたからだ。人間たちと仲良くしようとしてきたこと、蔑まれていた奴隷たちにも分け隔てなく接して行動が、ポリュカの絶望を救った。彼女がゲームの世界の人たちに愛されていたとわかるシーンで、胸が熱くなった。
《残滓メビアス》
魔族最強戦士でかっこいい目玉親父。途中からはゲオルギース父こと騎士団長と合体したりと苦労人。それまでも、いるだけで安心する男だったが、正式加入してからの安心感は大きかった。
最終決戦にて、帝国最強の騎士と激突する。一度戦い、死の淵にまで追い詰められた男との決闘。メビアス単体でのリベンジマッチ。このとき、合体していた騎士団長もまた不意打ちで彼に瀕死に追い遣られたため、2人ともに再戦にかける想いは大きかった。そして、一度してしまったら戻れなくなる分離をし、メビアス、騎士団長のタッグで破ったときの達成感はとても大きかった。
《リリィキラー》
サイコパスキャラであり、中盤の展開で大きく化けた猟奇殺人鬼。変わる前も後もどっちも好きだよ。
序盤監獄の中で出会い、国の征服を手伝ってもらうのが最初。その後に、ピアノ演奏を聞かせたり飯を食わせたりしたら、めちゃくちゃポリュカになついて、中身(物理) を見たいとか言う。怖い。かわいい。その後しばらく、仲間になったり離れたりを繰り返しながら世界征服に付き合ってくれる。
四章中盤。リリィ含む、高い戦闘力と底無しの生命力を持つ永遠人形に追い詰められてしまう。彼女らは歴代の賢者たちにより徹底的に痛めつけられ人間性を失う。その第一号がリリィだった。彼女は昔王族だったが、何者かによって死に晒されたのちに、幽閉されて永遠人形の実験台にされたのだった。彼女の原初体験には、黒いたまねぎのような魔族がいた。彼女と友達になり、いろいろと逃げ回っていた日々。追い詰められ、ポリュカがそのかつての友達と分かったとき、100年の時を越えた再会を果たす。リリィがときどき口ずさむ詩は、「花の詩」という、ポリュカが最後の使徒として目覚めるための詩だった。最後の使徒として目覚めたポリュカはその力で永遠人形を呪いの生から解放していく。このシーンで流れるBLOSSOMが名曲であり、熱い展開に涙が止まらなった。
リリィの過酷な人生を見ると、ポリュカとの再会があの監獄であったとはいえ、 運命的とも言える。Demons Roots屈指の名シーンを担った重要キャラだった。
《アンジュ》
平和主義的な奴隷騎士。序盤から終盤まで場を和ませてくれるキャラだった。
アンジュのもっとも印象的なシーンは、洗脳されて魔族を暴走させたあとの話。発狂剤を水辺に流すことで、魔族を追い詰めるよう洗脳されてしまったのだ。彼女に本質的な罪はないだろうが、やはり行動してしまった。正気に戻ったあとに、良心の呵責に耐えられずに飛び出したのちに仲直りしたシーンは良かった。
やはり序盤から仲間なだけあって、愛着のあるキャラです。
《カリンカ》
剛腕系のポンコツ剣闘士。義理に熱く、バカで、会話などに良いテンポを作ってくれた。
彼女は剣闘士という、剣を使って見世物の戦いをする奴隷だ。圧政のもとで虐げられてきた存在だが、鬼神と呼ばれた彼女の母の意志を継ぎ、剣闘士とそれ以外という階級区分を打破しようと必死に生き続けていた。だからこそ、彼女が王を打ち倒すシーンはとても熱かった。
その後にポリュカの仲間となり、持ち前の絆意識の高さから風通しをよくしてくれました。
《サラーサ》
毒舌系魔法装置ちゃん。壁に埋まったようなデザインがエロくて好き。
魔法防壁ルクルックにてトップクラスの成績を修める魔法装置ちゃんであった。しかし魔法装置は魔法を使える子供を洗脳に誓い教育をすることで、都合のいい肉壁にするようなものであった。母親のおかげで付けてもらえた精霊のおかげで外の世界を知った彼女は、ルクルックを壊してくれる何かを待ち望んでいた。が、『King Exit』という未来を予言する書で、ルクルックを革命できたとしても、引き金となった魔族が滅亡してしまうと知るのだった。そのことをポリュカらに伝えた上で、決まってしまった未来を覆すために頑張る、という経緯のキャラだ。
達観して生きていながらも、やはり少女で、ポリュカに感化されてからはポリュカにベッタリでかわいい。ツンデレが属性としてハマる言葉なんだろうけども、なんかズレてる。
《ダイアナ》
FBI捜査官とかいう、どう考えてもファンタジー世界にそぐわない異世界人。基本飲んだくれでだらしなさそうに見えるが、要所々々で場を締めてくれるクールなやつである。
彼女は外伝でスポットが強くあたる。元いた世界では麻薬王として君臨した父親を、正義のもとに殺そうとする。殺せたと思ったにもかかわらず、異世界に誘拐されてしまう。父親も未だに生き残る。娘として再び追い詰めるという話。しかしながら、父親を正面から撃てなかった。娘として育てられた情が残っていまう。この情が人間らしくて最高なんだ。最後にしっかり乗り越えてくれたところも本当に好き。
《ナージェジタ》
王位継承戦に敗北して男の娘になった帝国王子。親族に騙された末に奴隷とされてしまう。彼を騙したものは次期皇帝の座に就く。
そういうわけで、ナージェは次期皇帝さんを倒すのを目指す。倒したあとは皇帝が悪と気付き、妥当皇帝となる。
ダイアナを好きになるものの、外伝の最後でダイアナが死んでしまい、失意に沈む。しかし、ラスボス戦直前にてファと特別な精霊石の力で過去に飛び、ダイアナを救う。「こんな奇跡なら何度起こったっていい」と泣きながら笑う姿がとても輝いていた。
《まとめ》
前作『King Exit』をしっかり活かした物語であり、その上でとても完成度の高いシナリオだった。瞬間的に熱く感動的なシーンがちりばめられているため、序盤から終盤までずっと楽しんで遊べた。最高のゲームをありがとうでした。