理不尽な世界で生きる意味を問われるキャラたちに心が打たれた
序章はその雰囲気の良さとさまざまな騒動で気を引き、先が気になるよう、少しずつ謎を詳らかにしながら新しい謎を用意して飽きさせず、終盤の劇的な幕引きで感動に叩き込む様は見事。一心不乱に読み耽った。間違いなく名作。
現実はこれほど理不尽なことはそうそう起きないだろう。しかし、不遇な状況に立たされても生きる意志を見つけていくキャラたちの姿は、プレイヤーにとって励みになるものだ。
特に各キャラクターたちが生きるために拠り所にしてるものが1つずつ否定され、その上で立ち上がるところが好きだ。フィオネ、エリス、コレットとラヴィリア、リシア、そして主人公であるカイム。特に最後のカイムがヘタれてしまった後、自分の足で立てるようになったところは、強いメッセージを感じた。
宙に浮いていた人々がこの大地の上に足をつけて立てるようになること。ティアが犠牲となって果たしたその終わりから気付けることがある。
個人的には、ティアが犠牲になることに納得がいかないかもしれないと危惧していた。しかし、そこに至るまでのプロセスが明確で、ティアがカイムのためにという気持ちでやり遂げたのは間違いなく、十分に納得のいくものだった。キャラクターへの愛情すら感じる。
およそこれに比肩する体験はあと何度できるだろうか……喪失感でいっぱいになった素晴しい作品。