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wakaepicさんのキラ☆キラの長文感想

ユーザー
wakaepic
ゲーム
キラ☆キラ
ブランド
OVERDRIVE
得点
90
参照数
297

一言コメント

シンプルな青春バンドものだと思いプレイすると、重いシナリオに裏切られるので注意。黒い感情や理不尽を浴びながらも、懸命に足掻く主人公とヒロインに心がうたれる。倫理観の欠如が随所に見られ人を選ぶが、ハマる人はハマるタイプの作品。旅行に行きたくなる。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

以下気になった点
・主人公の性格(倫理観)に難あり。不法侵入は当たり前、故人の部屋を粗探しの為に許可なく漁り、貯金があるのにも関わらず妹のゲームを勝手に売る。口も悪さも相俟って少しイライラさせられた。とくに樫原√ラストのHシーンはタイミングといい完全サイコパスだろう。まあ全体で見れば一部に過ぎないのが救い。
・ライブ中のCGは使いまわしが多い。
・一部とんでも(オカルト)展開がある。特にきらりのギター関連の話には違和感が拭えなかった。

良い点
・「うつ病(適応障害)」「発達障害」「毒親」といった扱いにくいテーマを真摯に描いており、どれも造詣が深い。誉め言葉だが、嫌な人間の描写に長けていると思った。親子間の内情をリアルに表現しており、読んでいて心が痛くなる。個人的にきらりの父の内情や、親のゴタゴタに巻き込まれる千絵の反応は印象深い。自分ではどうにもならない出来事に、心が疲弊していく感じがリアルでよい。感情の描き方が丁寧だと思う。
・きらり√、フェスでのライブ中にゾーンに入っていく演出が素晴らしい。ライブの臨場感をノベルゲームで上手く表現していたと思う。
・バンドの要素を取り入れた作品として、楽曲のクオリティが非常に高く、現在でも古臭く感じない。

青春バンドものを志向するオバイブと瀬戸口氏のビターなシナリオ、各要素が融合し一筋縄ではいかない作品になったと思う。バンド好きは勿論のこと、世の中の理不尽や自身の特性に苦しんだ事のある人には刺さる作品。