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wakaepicさんの11eyes -罪と罰と贖いの少女-の長文感想

ユーザー
wakaepic
ゲーム
11eyes -罪と罰と贖いの少女-
ブランド
Lass
得点
82
参照数
309

一言コメント

3days後にプレイして比較した感想。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

本作は『3days』の後半パートを、発展させて煮詰めた作品という印象。全体的にクオリティが上がっており、特に立ち絵のモーションは素晴らしい。また『3days』では説明過多でテンポが悪かったバトルパートが比較的改善され、読みやすくなっている。演出面もチープさはないので、雑念なく『11eyes』の世界観に没頭できる。しかし特出した部分もあまりなく、悪い意味で「無難な作品」になってしまった印象。
突っ込み所は多いが勢いがあり、意図しない形でインパクトを与えた『3days』と比較すると、どうしてもパンチが弱く感じる。好きだったグロ要素(CG)がなくなった点も残念。敵も数は増えたが、ヴァルター程の印象深い悪役はいない。

また、クロスビジョンが上手く作用していないように感じた。主人公以外の視点で見れる点は良かったが、正直これ必要か?という内容も多く、却って作業プレイ感が生じてテンポが悪くなったように思う。チャート全体が表示される弊害で、日付を見るといつシナリオが終わるのか、わかってしまう点も痛い。赤い夜のコンセプトは素晴らしかっただけに、もう少し改良して欲しかった。

主人公が赤い夜での経験を通じて、今までの自暴自棄な考えを改め成長していく過程は良かった。
ヒロインに関して、ゆかが苦手で最後まで受け入れられなかった。人に気を遣わせる割に図々しいし、性格の悪さも半端ない。今まで周りに多大な迷惑かけておきながら、主人公以外の人間はいらないという考えを最後まで改めない。手に入れた力も、私利私欲の為に使い切った挙句、最終決戦前に離脱とは無能の極み。誰かこいつを裁いて欲しい。まさに救いようがないヒロインと言える。自分はたまきが苦手なので、最初の印象から察していたキャラクターではあるが…予想を超えて不快だった。ペン蔵という癒し要素がなければ、挫けていただろう。

雪子はキャラクターとしては好みだが、主人公か賢久、どちらかと必ずくっつく仕様にモヤモヤさせられた。それはヒロインとしてどうなんだ。そもそも賢久×雪子がお似合い過ぎて、主人公とのカップリングに違和感がある。
美鈴は頼もしく主人公の師でありながら、ちゃんとヒロインとしての可愛げもあるので、非常に好感がもてる。菊理も姉属性としては弱かったが、全体的に癒された。

しかし、どのヒロインも個別√が後日談程度の内容しかない点にはガッカリした。それとアブラクサスの力で全て解決してしまう結末は、都合よすぎて微妙にスッキリしないから、もう一工夫欲しかった所。

設定を生かした王道バトルものとして普通に楽しめたが、もう少し尖った面も欲しいと思わせる惜しい作品。元々『3days』のホラーサスペンス要素が好きなだけに、バトルに比重を置いた作風は少し残念だった。