恋愛ゲームとして質が高い。シンプルで王道だからこそ面白いと思わせる作品。
里伽子というグランド√はあるものの、内容に明確なキャラ格差はない(Hシーンも平等)なので、どの√も満遍なく質の高いシナリオが楽しめる。
問題に悩み、乗り越え、成長していくシンプルな構成だからこそ、ライターの質が問われるなと思う。キャラゲーで総合的に面白いと思える作品は本当に貴重。
個人的に玲愛が一番好みだった。一見不愛想だが、お節介で努力家、そして恋愛には不器用。見た目の属性からして、今プレイすると古典的と言えるヒロイン。しかし、だからこそ良いんだと声を大にして言いたい。原点最高。彼女とファミーユ本店を再建する流れは、お店ものとしても一番好きなエンド。
「お前の周りの世界は…お前が考えるよりも…ちょっとだけ優しいんだよ」という台詞にグッときた。
逆に最後まで苦手だったのは由飛。とにかく図々しく、人の話を聞かない自己中。仕事のミスも多いのに反省の色なしと良い所がない。主人公には明確に贔屓されており、和むとか謎の理由で許される展開にイライラさせられた。歌って接客する場面は、思わず画面をパンチしたくなる。いくら歌が上手くてもNG。まあそのようなネガティブ要素は、天才型の子らしい性格とも言えるので、キャラとしては造詣が深いと思う。
しかし、そもそも歌が上手い=喫茶店の店員という部分に、因果関係が皆無だから違和感がある。
これがアイドルや歌手なら理解できるが、歌に惚れたので喫茶の店員として採用する展開は意味不明。設定としては上手く機能していないと思う。しかし制作としては、このシーンに自信があるようで、OPやアフターストーリーのオチにも使われている。それと彼女の個別√は、決して出来が悪い訳ではない。玲愛のピアノ演奏の場面で感動できたので、十分満足できた。
他に気になった点として、恵麻√のラストで、里伽子が本店に復帰する場面。腕の件を考えると違和感がある。
また、里伽子√は、恋愛の成就に怪我の完治という範囲で終わっており、ファミーユ本店を再建する話がない。最後の攻略が推奨されているヒロインだけに少しモヤっとした。
システムは快適で、とくにBGMがアレンジverと選択できる点は良かった。途中で変更できるので、マンネリ化せずにプレイできる。
古典的でありつつも、今プレイしても遜色なく楽しめる作品。まさにお手本になる理想的なキャラゲーと言える。