今プレイすると古臭さを感じる。だが癖のない文は読みやすく、物語は軽快に進行するので次第に慣れる。とにかくシステムが悪く、個別後ほぼ作業プレイなのが致命的。お店を舞台としたキャラゲーとしての完成度は高いだけに惜しい作品。ド級に面倒なヒロインを愛せるかで最終的な評価が分かれる。
キャラの属性や一部の演技に古臭さが見られ気掛かりだったが、ライターの力量か早い段階で物語に没入できたので、気にならなくなった。
ヒロインは美里√が、本人の成長からの事件を乗り越える王道展開で良い。さやか√は他と比べると内容が薄く不遇。真子も雑な扱いだが、主人公が店舗経営に対し悪戦苦闘する内容もあり、お店ものとしては非常に良かった。すずに関しては、まず高校生という設定に違和感がある。同級の雨宮の感じからしても中学生が妥当だろう。内容としては妹である事への葛藤という部分は良かったが、ラストの籍を戻すという展開は意味不明だった。翠は負けヒロインとしての完成度が高くて良い。
メインと言える香奈子だが、彼女の面倒な性格とゲームの攻略難易度が、きちんと比例している点は非常に面白い。内容としては主人公と翠を含めた3人で、足の引っ張り合いをしているだけなのだが、それだけに根深く妖精による救いの手がなければ、最終的に結ばれないという鉄壁っぷりを発揮している。
なんて扱いにくいヒロインだと思いながらもゲームとしてはラスボス感があるので、攻略自体を楽しめたし達成感はあった。
本作一番の問題といえる選択パート。序盤はイベント発生が多く仕事をしている感が味わえるので、楽しんでプレイしていた。しかし、個別に入ってからイベントは数回しか発生しないのにも関わらず、ほぼ1か月分選択させられるので、作業プレイ感が高まり苦痛だった。
更に攻略する際、ヒロインによって場所はほぼ固定化されるので、選択による楽しさは皆無。ただ無心に日付を進めるだけの作業となる。この薄い内容なら6月以降も律儀に毎日進める必要はないだろう。適度に日にちをスキップしてテンポよく進めて欲しかった。
また、シナリオライターが途中交代である事への弊害か、時系列が変で整合性がとれていない部分もある。
過剰選択によるテンポの悪さがなければ、良作キャラゲーになっていたと思える惜しい作品。
香奈子さんの面倒くささは良くも悪くも心に残る。