ループものとしての完成度は高い。突っ込み所は多いが、それにより本来の意図とは異なる形で、独特な魅力をもつ作品になった。
前半は正統なサスペンスホラーという内容で、OPが流れた時の瞬間風速っぷりは素晴らしい。また、梨花とのファーストコンタクトは飛び降り自殺中に、目が合うというイカした演出。既に亡くなった美柚に会う為、1日早く死んで日程調整する等、ループものだからこそ可能な描写が多くて良かった。うんざりするくらい死んで繰り返すのがループ系の醍醐味だと思うので、個人的には〇。
問題の後半パート、内情は知らないがあまりに毛色が違うので、自分は別ライターが書いたのかと思った。専門用語を連発する陰陽師大戦の勃発に戸惑う。思い返してみれば、月子初登場時にそのような片鱗が見られたのだが、彼女のキャラ的にそういうものかと流してしまっていた。まあ毛色が違くても話が面白ければ問題なかったのだが、肝心のシナリオは残念な仕上がりとなった。
過去編は説明過多で無駄に長いのに、ヴァルターとの最終決戦からは駆け足で展開が雑。奈々子は美柚の唯一の友人と描かれていた割にほぼ出番はなく、不自然なくらい言及もされない。納期の都合上カットしたのではないかと疑う出来。CGは後半になるにつれ崩れていくが、これに関しては話も負けず劣らずの調展開なので、違和感なく調和していた。とくにヴァルター最期のCGはインパクトが凄まじく夢にでそうだ。正直後半の展開に関しては真面目にやっているのかギャグなのかは判別しにくく、プレイヤーの解釈に委ねられる。
しかし作品全体の雰囲気はよく、タイトル画面のデザインの良さは秀逸。シナリオ、ヴィジュアルともに独特なパワーがあるので、超展開にノレなくても奇ゲーとして最後まで楽しめる。