ロンドンを舞台とした雰囲気のよい作品。評価が分かれる内容だが、デザインと世界観に惹かれてプレイしたのなら、大きく裏切られる事はないと思う。シナリオは謎が多く、文章の癖も相俟って難解。ゲームパートで入手できるボーナスCGは見応え抜群なので、是非コンプを目指そう。
本作に於ける「可愛さ」の表現は、外見や仕草に見られる萌えという感じではなく、内面的な属性によるものが大きいと感じた。
その代表格といえるMだが、話が進む度にどんどん愛らしいキャラクターになっていく。当初の支配的な印象とは違い、実はお姫様属性なツンデレであり、最終的には彼の事を微笑ましい目で見ている自分がいた。
また、主人公のメアリも健気で可愛いキャラクターだった。まず金髪碧眼属性というだけで、個人的には満点。エロが薄い作品だが、ゲームパートにて毎回疲弊し息切れする彼女を見ると、そんなことはないのではと思ってしまう。
シナリオに関しては、漆黒の題に恥じず常に謎に包まれており、終盤にならないと筋が見えてこない作りになっている。なので、反復表現を多用するテキストとの相乗効果で、中だるみしやすく話毎のカタルシスは薄い。作品の雰囲気が合わないのなら、読み進めるだけでも苦行になると思う。
また話の大筋には関わらないとはいえ、元ネタを知らないとモヤモヤする部分も多い。ホームズの身体能力を表す「バリツ」(彼が習得している架空の武術)や終盤で発生するホームズとモリアーティー教授の会話に登場する「ライヘンバッハ」(原作ではライヘンバッハの滝で2人は死ぬ)
結末に関してだが、シャーリーの記憶喪失にはモヤモヤさせられた。これではまた違った形で悲劇が起こりそうな気がしてしまう。加えて彼女に関しては謎が多く、メアリに渡したお手製携帯は何故怪異に反応するようになっているのか最後まで不透明。そもそも彼女の行動原理に関しての描写が薄めだったので、内情を知りたかった者としては非常に残念だった。他にも細かい所でわからない点が複数あるが、あまり話の筋を追い過ぎずに雰囲気を楽しんだ方が良いのかもしれない。
ゲームパートはテンポを考えると、前半後半に分けなくても良いのではと感じた。ゲームとしての完成度は低いが、ボーナス入手を考慮してプレイすると、パズルゲーとしてそこそこ楽しめる。ボーナスCGはラフ画、ミニ漫画、ポスター/パケ画と盛り沢山、ファンとして大満足の内容だった。