善悪相殺を見事に描いた作品。話は重く非常に長いので、腰を据えて臨むべき。有名な作品ではあるが、初心者向けではないので注意。本作の特殊なシステムを最大限楽しむなら、ある程度他のゲームをプレイしてからの方がよい。
以下気になった点
・全体的に表現がクドい。作風なのはわかるが、テキストは説明過多でテンポが悪い。加えてバトルシーンの多くはインフレどんでん返しの連続なので、読んでいて疲弊する。
・一部ルビの表現がサムい。熱いシーンでもダサい横文字ルビで、没入感が削がれる事もあった。日英混じりのセリフまわしはアメリカ侵略後の世界である事を表現する為なのだろうが、自分には合わなかった。
・システムが全体的に微妙。頻繁に使う身としては、スペースでテキストボックス消去は使いにくい。スキップの仕様も微妙で、超速にすると画面が固定化され経過が一切わからなくなり不便。起動してからタイトル画面に行くまで地味に長く、もどかしく感じた。音が短くループするバグもたまに発生（win10対応版使用）
良かった点
・一貫して善悪相殺を描き切っている。それを活かしたシステムも見事で、好感度をあげ過ぎると攻略NGになる仕様には恐れ入った。
・どの登場人物も個性的でよい。各人物が掲げる理念は賛否両論で、誰が正しいと論じるのは難しい。だからこそ善悪相殺と繋がる。
・景明から滲み出る狂気の描き方が上手い。英雄編で一条の表情を綺麗と感じるシーンやエロシーンの豹変ぶり等、ヤバい奴の伏線は十分張っていたと思うので、ラストのオチには納得がいく。自身の狂気（悪）を認める事は簡単なようで難しい。本当の意味で悪鬼となった景明が始動して終わる展開は非常に痺れた。
プレイ後はなにより疲れたという気持ちが先行する大作ではあるが、一貫性があり突き抜けているので心地よい余韻に浸れる…そして我が身を振り返られずにはいられない。合わない部分も多々あったが、制作陣の魂を感じた。