ErogameScape -エロゲー批評空間-

wafuwafumasakiさんの乙女が紡ぐ恋のキャンバスの長文感想

ユーザー
wafuwafumasaki
ゲーム
乙女が紡ぐ恋のキャンバス
ブランド
ensemble
得点
78
参照数
1397

一言コメント

なんか色々言われてるけど、個人的にはお気に入り

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

ライターの騒動に関しては、評価の対象にしてません。
その辺を切り離せないのは、むしろ作品を出してくれたメーカーに失礼だしね。

愚痴はほっといて、作品の評価をしましょうか。
メインヒロイン(大嘘)に、桐谷さんをよく使う気になったなと感心。
入学するまでの分岐ともいえない分岐で、各キャラのシナリオに移るあっさりタイプ。
個人的には芸術の世界に復帰させないように奮闘する、しーちゃんシナリオが一番好きでした。
最下位はアナ姉です、好きな人はごめんなさい。
正直、嫌々描かされてるようにしか見えなくて、シナリオの終わらせ方も消化不良。

主人公がシナリオ内で、一番絵を描きたくて描いてたのは千晴の時かな。
そこから幸、怜奈、アナ姉の順。

割とどのシナリオでも、幸に見破られてるのは比較的珍しい。
あっさりバレたのは、体臭の関係なんだろうかと推測。
シナリオ65点、桐谷さんの主人公起用5点、怜奈シナリオでの杷虎の男らしさ(褒め言葉)に5点ってところかな。
紫月のけなげさにもあと3点入れておくか。

ここからちょっと追記分

この作品、エロゲとしてはちょっと変なテーマを掲げてると思います。
キャラゲーでもないし、絵を題材にしつつもその方面どっぷりでもない。
だって、『瑞木信が如何に幸せな結末を迎えられるか』なんだもの。
それらについては至る所で散見される把虎のセリフや、モノローグなどで垣間見える。
だからこそ、信が絵を描いても描かなくても全面的に協力をしようとする紫月の事を評価したのだし。
ただ、紫月エンドが必ずしも幸せでないのはちょっと皮肉。

怜奈エンドは割とバッド気味の終わり。
怜奈は救えたものの、画家として表に引っ張り出された分、必ずしも自分が描きたいときにだけ描けば良いというのを守られるかどうかが怖い。
絵自体も、作中で把虎が批判してるように、他者を助けるために筆をとるのが信にとって本当に幸せなのかは懐疑的。
そんな世間との軋轢の中で自分を保てるのか、自分が出てしまったことで把虎に起きた事をこの先も受け止め切れるのかといった当たりも心配な点。

紫月、幸エンドあたりも自身の問題は結局、作中では明確に解決はしなかった。
怜奈エンドほど深刻ではないものの、数年後にまた岐路に立たされそうではある。
ただ、怜奈エンドよりはどちらも幸せであるのは間違いない。

千晴エンドは自分から望んで筆を再び持つ事ができた点、描きたいものができた点で信にとってはある意味最高のエンドである。
それまで育ててくれた把虎の不都合な事実を世間に晒す事もないし、信が再び描く事ができたという事実は把虎にとっても幸せであるのだから。

アナスタシアルートでの信は、把虎の贋作を描くという、ある意味家出前の状態に戻るような最悪な進行。
そんな最悪の結末を望まないからこそ、把虎はSHINと書き加えたのだと思うし。
だからこそ、個人的にこのルートは納得いかないし、評価を最低にせざるを得ない。

いやほんと、エロゲにするにはあまりにも重い題材じゃないですかね。
そんな背景があるからこそ、キャラゲ、エロゲとして見ると低評価が多くなるのは自然だろうなあ。