自己犠牲するような余裕もないような弱い人たちの物語。テーマ(真剣なツンデレ)もテキストもシナリオもよく練りこまれているし、プレイ後の余韻もよく楽しい夢想に耽れるが、エロゲーというメディアの強力な武器である、ヒロインとの「対面性」というか、一対一で関係を結ぶ感覚というか、要するに萌え、が弱い。良くも悪くも小説的というか散文的。それは何よりもまずグラフィックの貧弱さが原因だが・・・
・・・シナリオも関係があると思う。家族という共同体の空間を作る試みである共通パートがシナリオの大部分であること(8割くらい?)、個別ルートでも恋愛というよりはなし崩し的な信頼による結びつきで話が進むことなど。それがテキストでそれこそ小説のようにきれいに描写され切ってしまうので、「他者」としてのヒロインの存在感は弱くなる。
「最果てのイマ」では同じ「聖域」をテーマにしながらも、出発点も違うし、シナリオ的にうまく「他者」も盛り込まれている感じがした。絵もいいし。新作だからちょっと贔屓してるかもしれないが。
いずれにせよ、グラフィックと演出がもっとましならばだいぶ違った作品になったと思う。あ、でも、テキストがあまりに読みやすくてそれ自体で完結してしまっている感じがするから違うのかなあ。
ともかく、そのことと各ヒロインのキャラがよく立っていることは別の話。
特に末莉と真純と司には生々しいリアリティを感じた。
共通パートで各ヒロインが生々しかったのは、司のツン状態が十分な説得力を持って描けていたからで、ライターの力量に感心する。
春花は声優の演技があまり気に入らなかったので、絆箱をインストールする前にやっておいてよかったかもしれない。
青葉も声優の演技というか、一部のつっこみ的なセリフがあまりキャラにあっていないような気がしたので、声なしでやってもよかったかも。個別ルートもエンディングも面白かった。
真純は、少し似た性格の女性にかつて付きまとわれた(ただし真純より10歳以上年上)トラウマを思い出したorz
一番気に入ったのは一番最初にやった末莉ルートで、末利の個性とストーリーに強烈な印象を受けて、プレイ後、数日、本気で寝込んでしまいました。
この点で、「家族計画」は私にとって唯一の鬱ゲーです。
今度は声ありでやってみます。