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vostokさんの新妻イカせてミルク! 団地妻、昼下がりの下半身事情の長文感想

ユーザー
vostok
ゲーム
新妻イカせてミルク! 団地妻、昼下がりの下半身事情
ブランド
アトリエかぐや
得点
80
参照数
1659

一言コメント

いとあはれなるよのなか。まさかアトリエかぐやの作品にチェーホフや源氏物語のような趣きを感じることになろうとは思わなかった。以下はプレイ日記です。またはしゃいでます。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

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 エロゲー論壇の話題、これはとても大事なことなので何か書きたいと思っていたが、それどころじゃなくなった。イカミルク心地よすぎる!Кагуя начинается! ほんとにいいのかこれで?まず美咲の立ち絵がいい。瞬きするし!この感じは天いな以来かもというくらいによい造詣。そしてBGMがなぜかシック!主人公の名前が変更可!もちろん自分の本名へ!なんか地味に痒いところに手が届く感じにレベルが上がっている。そしてアニメーションが素晴らしい。ニコニコに静止画のおっぱいを揺らす謎の技術が紹介されていたけど、あれを改良して体全体が動くようにしてある。かぐやに足りないのはアニメーションだとは思っていたけど、満を持しての導入ということだろうか。これでslaveと同じ土俵に上がれるようになってしまった。それにしても人妻でこれほど興奮するとは意外だった。人妻コスプレ喫茶2とは違い、これはきちんと人妻だ。主人公が学生ではなく社会人の営業マンなので、ちょっとリアリティを感じてしまうというのもあるのかもしれない。そこそこ描写がこなれていたりもする。あとで鬱になったりするだろうか。もともと目当てだった童顔ヒロインが元気系だったのは残念だが、これはかなり楽しめる作品になりそうだ。かぐやのゲームはマンネリという印象はなくなった。困ったのはパソコンのスペックが不足気味でしょっちゅうフリーズすることだけだ。これはどうしたものかな。

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 イカミルクの美咲がとてもいい。刹那的になってしまった人妻はエロいです。彼女たちの世界はとても小さくて、そのちっぽけな悩みに苦しむ姿はほほえましいというよりは滑稽なのだろうけど、こういう間の抜けた閉塞巻の中で生まれる刹那的な情感には独特のエロさがある。設定的に瀬里奈のように壮大な物語になることはありえないけど、序盤までやった印象ではとても細やかに作りこまれた可愛くてエロい、かぐやの稀代のヒロインという感じがする。

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 美咲シナリオ堪能中。こんなにメランコリックで美しいセックスはいつ以来だろう。腐り姫以来だろうか。泣きゲーとかの濡れ場で感情移入するならともかく、抜きゲーの濡れ場でここまでいとおしんでしまうとは思わなかった。一山超えて賢者化するとこの感覚が消えてしまうのが残念だ。本来エロゲーのエロシーンをこんな風に称えるのは滑稽なことで、このゲームのストーリーや設定自体はありふれた茶番だということは分かりきっているはずなのに。茶番だと分かっていても屈せねばならない現実がある。主人公は老練な営業マンのように描かれているのかもしれないが、売っているのはアダルトグッズだ。それでもやりがいのある仕事と思い込んで、プライドを持てると思い込んで、自分なりにかっこよく生きようとしている。美咲は小さな幸せすら手に入れられず、かといって心置きなく嘆けるような美しい不幸も与えられず、ただただ滑稽な恥にしかならないような失敗ばかり繰り返す。現実に屈する失敗者たちの物語だということは、これが三文芝居的なぶれた枠組みの中で展開されるために、二重の意味で失敗者たるプレイヤー(というか僕)の現実に作用する。さすがにアダルトグッズではないけど、僕は来期から異動でもっとペコペコちまちました商売をさせられることになってしまった。やりたかった仕事からどんどん遠ざかってきた。もう仕事に対して熱意はないけど、辞める覚悟はまだなく、いわゆる「バカになる」ことを強要するような職場なので、無理やり仕事を楽しんでやっているような「フリ」をしている。でも結局はフリに過ぎず、中途半端なので、「熱意」が足りなくて失敗して、いつも怒られてばかり。その意味では僕はいまだに社会人半人前だし、この作品の主人公よりも子供だ。その後ろめたさは、美咲をだます主人公の後ろめたさとある意味で相似だ。どこかで馬鹿げた失敗を少しずつ積み重ねてきてしまった結果、今ではもうきれいに生き直せるなどという若い希望は、あまり自信を持って言えないところまできてしまった。それが滑稽だとわかっていても、失敗者同士刹那的に寄り添って、零れ落ちていく若い頃の夢を惜しんでみたりする。現実に喜びがないから、馬鹿な二人でちょっとだけ夢を見てみるのだ。窓の外に向いた立ちバックの姿勢で愛し合う、失敗者たちに降り注ぐ夕暮れの光。ありがたいことにその光は優しいようだ。

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 久々にイカミルクを進め、ちょっと賢者モードになったところで胡散臭い分析を。

 調教ゲームはエッチシーンを中心に組み立てられているが、そのシーンは3つの要素から成り立つ。一つ目は調教前のヒロインや主人公の社会的立場とそれにまつわる感情的なニュアンス(ヒロインは家庭的な幸せを感じているか、主人公は自分の仕事をどう評価しているかなど)。二つ目はエッチシーンの官能性とそれにまつわる感情的なニュアンス(どれほど非日常的な快楽と美を得て、それに自ら圧倒されながらも飲み込まれていくか)。三つ目は調教によって生み出される新たな社会的関係とそれにまつわる感情的なニュアンス(「ご主人様とケツ穴雌奴隷」などの上滑りした現実感に戸惑いつつも、それを受け入れてしまうような刹那的な気分)。

 この三つの要素は互いに絡まりあっており、平穏で貞淑な妻の幸せを完全に否定して単なる痴女になったり、調教されることへの後ろめたさを感じなくなってしまったりしたら、調教ゲームはもともと単純な図式で出来ているだけに、たちまち骨格が透けて見えてしまってつまらなくなる。大切なのはこの三つの要素を結び合わせている感情的なニュアンスだと思う。落ちるまでの葛藤がウェットなものであればあるほどエッチシーンの官能性は際立ち、濃厚な喘ぎ声と混ざった迷いや諦めの言葉は不思議な熱を帯び、リアリティのないロールプレイに身をゆだねる二人の刹那的な気分には、思わず流されそうになる。主人公が単なる調教対象であるはずのヒロインに感情移入して引きずられてしまうことがあるのは、この「世界の秩序に反逆するかのようにあえぐヒロイン」にいつしか共感してしまうからなのだろう。その意味で今まさに落ちんとするヒロインの姿は悲劇的なまでに美しく、それがグラフィックやアニメーションでも強化されているのがこの作品の魅力。もともと調教されることへの感情的な揺らぎが少なく、すぐに快楽の探求に目がくらんでしまった優月のルートがいまいちで、後ろめたさと刹那的な気分が渾然一体となっている璃菜と美咲のルートに余韻が感じられるのもそのためだろう。・・・

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 再び別の日に賢者モードで。上に書いたのは作品内だけで考えようとしたものだけど、やはり自分をもっと巻き込む羽目になってしまい書いたのがこっち。もう少し意味のあることを書かなきゃと思いつつも、分析の体裁も取れない恥ずかしい感想になってしまった。寝取り論はいつかの課題ということで。

 美咲はやはりすごい。肉感的な体を持て余す、押しに弱くて真面目な性格、というのにやられた。名前で呼んでもらえる主人公が羨ましくて仕方なくるという欠点があった瀬里奈をある意味で超えている。美咲は主人公の存在を食ってしまって、独壇場となっている。恋愛ルートのみが余韻のある良シナリオと思っていたが、寝取り調教ルートでもエロい長台詞と喘ぎ声を延々と漏らし続ける美咲に見入ってしまった。もともと自分向けではなかった体と心を貪るのを許されること、下品な言い方をすれば女を落とすこと、それがこれほど魅惑的なのはなぜか。神秘的なまでにエロい。エロくあるためにはそれに見合ったヒロインでなければならず、その意味でのオーラをまとったヒロインとして、美咲はすばらしい。彼女の台詞があまりに冗長で繰り返しが多かったり、主人公のマッチョぶりがばかばかしいくらいにしつこかったりというテキストの歪みのせいで頭に霧がかかってしまった気がしないでもない。実際、征服欲のようなものを満たされて自分を肯定したくなってしまう。男って本当に愚かだなあと思う分だけ、こうして美咲を称えておかなければ落ち着かないのである。この寝取りの快楽の力を何か前向きなものに使えればいいのかもしれないけど。とにかく、美咲には僕のほうが落とされてしまった。

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 結局最終的な感想は特になし。ハーレムルートはやはり苦手だ。美咲はそれでもエロかったけど。

 ヒロインたちが主人公を待っている構図というのが今読んでいる源氏物語と重なった。おかしきことである。