主に文庫の感想を。
予約特典の文庫に惹かれて購入した。文庫に収録されている作品自体はゲーム内で読めるのだが、やはり形のあるものが欲しくなるし、手元に置いておけて、読みたいときにすぐに読めるのはまた格別だ。
文庫の小説の内容はそれぞれに障害を抱えた主人公&ヒロインの物語。これはゲーム本編のヒロインの設定からインスパイアされたものだろうが、本編との直接的なつながりはなく、それぞれが独立した作品として楽しめる。中でも私は「終わらない階段」と「たまねぎ現象には理由がある」に惹かれた。前者は田中ロミオの作品で、彼独特の胸が苦しくなるような暗い青春の描写と、微笑ましくも苦笑を禁じ得ないラストが秀逸だった。後者は元長柾木の作品。分量的にも内容的にもこの文庫の目玉と言えるかもしれない。彼の持ち味である思わず気恥ずかしくなるような衒学的な文体で書かれた作品で、読者の予想を裏切る展開が魅力的だ。
他の作品は正直期待はずれだった。しかしおまけとしてはハイクオリティで、予約購入したことには十分満足している。
ゲーム本編についてはシステムは斬新だが作業性が高くてちと面倒。グラフィックは一昔前のジュブナイル小説みたいであまり好きではなかった。シナリオはミステリ風味の青春ものでなかなか面白いが最後までやってももやもやした部分が残る。気が向いたら2周目もしようと思う。