プレイ時間3時間4分。収穫シリーズ(5作)の二作目。「愛情の名の下に踏み込む足が侵略だと、どうして気づかない」
プレイ時間/タイトル 点数 CG数(差分込) 視点
1:14/青嵐の四月 (80点) 9枚 柾木
1:01/闘劇の五月 (60点) 8枚 柾木
0:49/婚儀の六月 (75点) 5枚 耕平
新規BGM10曲。
またまた補正値+5で76点に。
春。
出会いの季節。
否応無しの環境が変化する季節。
ネタバレ度は「~冬~」より高め。核心的な部分に深くは触れませんが。
<青嵐の四月>
綺麗な花には刺がある…。
隙のない美には、それを作り上げる努力と能力、強さが隠されており。
元々はこのサイトで「~春~」のパケ絵(?)を見て、加えて評判も悪くなかったので購入した、いわば絵買いのようなもの。
パケ絵のキャラは蒼と言い、「~冬~」ではまだ登場しないキャラです。
いや~、かわいいですよね。ほんとに。
…
……
………「~冬~」をやった時点で主要キャラが天真爛漫な"普通"の子であるはずがないなんて分かってた。
分かってたよ。
けどね、予想以上に怖かったんだ。
雪に長刀突きつけられるとか物理的な暴力ってかわいいもんなんだよね。酷いと死ぬけど(笑)
精神的に追い詰める。支配する。奴隷化。
((((;゚Д゚))))
「~冬~」をやって柾木は「人間臭さが乏しい」と書いたけれども、
そういう"柾木"ができあがった元凶って彼女蒼だったんだね。
後発的な原因があった、ということに「ちゃんと人間してたんだな」と安心を覚えると同時に、
それが一新した。一新させられた。
ホント怖いです。
蒼の怖さはここら辺で置いておいて、この章では柾木の心情面が強く押し出されている。
「攻撃、防御」「社会性、個人性」などなど興味深く面白い。
"人間らしくない"不気味な存在への歩み寄り。
納得できなくとも理解する。理解しようとする。言葉を尽くす。
大事なことよね。
また、これまで雪・しろ(・蒼)が抱いていた感情に「好き」という名が与えられていたが、
一般的な意味とは異なる感情、それこそ特殊な存在である柾木に"惹き寄せられる"感情であることが示される。
>誰であったとしても精神への侵略なんて許されることではない。
精神は果てしなく単独であり、相互の通信だけで満足すべきなのだ。
結合の夢、集約の夢を見ようとするから破滅に転げ落ちる。
>愛情の名の下に踏み込む足が侵略だと、どうして気づかない。
だからこそ、普通に「恋」してる早苗と耕平の関係が引き立つ。
一般的な「恋愛」を入れたことによる対比もお見事。
<闘劇の五月>
隣町の土地神であった まどい(境域の一月からご無沙汰)の姉 まよいがメインのお話。
父親の仇討ちのためしろに立ち向かう姿は、一見するとふざけているが内実マジです。
伊達に100年かけて知識を溜め込んでいた訳ではない。
コメディ調が強く、柾木の女装も見れる比較的気楽に取り組める章。
なかなかに面白いが、物語を掘り下げる準備段階、といった所。
<婚儀の六月>
ブライダルな月。恋愛の月。
「贈与の二月」では早苗視点で耕平にアタックする話でしたが、
本章は耕平視点で早苗との関係性を如何にするか、というお話。
受験間際の高校三年生。
自分の字を取った「さなえ」という料理屋を継ぐ決意を自ら望んでした早苗と、
町の外を見ている、自分で敷いたレールを進みたい耕平。
今まで触れずにいたそのズレに触れた瞬間。
下駄箱を背に隔てられた二人の感情。ガラスに映る涙。
もうね、切ない。
こういうの弱いんです。泣いてしまったよ。
このシーンがあったからこそ高評価してるのだが、欲を言えば一枚絵が欲しかった。
バレンタインでチョコを渡したのと対になる絵が。
しかも構図としては使いやすいはずなのに。
ここまでは別段CGが足りないとは感じなかったが、ここはもう一歩あれば…
非常に惜しい。
そして。清和な春は過ぎ去り、灼くる夏がやって来る・・・