あぁ、気持ち悪い。頭痛い。それでもクリックは止められない。殺伐とした世界において輝く「親蟲(おやこ)」の姿。他人には勧められない名作と呼ぶにふさわしい作品。
ネタバレは極力曖昧に書いていますが、それでも嫌な方は戻ってください。
上で書いたように、気持ち悪くなり、頭痛くなり、かなり萎えました。
もしかしたら「もらい吐き」した方もおられるかもしれませんが。
ゴア、沙耶の唄と、基本的なグロ耐性はついてるはずの自分でも、この蟲愛はレベルが違った。
(※蟲愛のリメイク前である蟲使いはやっていませんので悪しからず)
本作はブサイク(=Black Cyc)らしく、Hシーンが豊富で、グロいです。
それはもう、尋常じゃないくらい。
自分は特にMでもSでもなく、まして触手やレイプ系は苦手としています。
蟲愛のHシーンの9.5割は無理やりとかそっち系です。
ええ、萎えましたとも。
唯一救われたのが(初期の初々しい)百合+フタナリと、淫乱娘こと遥ぐらい(笑)
人間同士の純愛?なにそれ、おいしいの?(笑
一応3回程描かれますが、CGすらなく、一番有名なシーンは一行で終わりです(笑
開発期間不足が一番の原因だそうですが、これはキャラのネタになっているので許されるかと。
それなら、なぜ手を出してしまったか。
それでもゴアの出来の良さ、及びここでのレビューの評価からこの作品をやり、満足しています。
キレイな世界のお話は、当然のようにキレイです。
そういう作品(「そして明日の世界より」などがそうかと)にもキレイな世界としての良さがあります。
しかし、自分としては全てがキレイであるよりも、汚い世界の中での限られたキレイさを好みます。
暗闇における一筋の光。
まさにそういった希望、幸福、是的側面が「親蟲(おやこ)」愛として描かれています。
夢美と蟲クンの物語の始まりの章である幼蟲編。
ここでの演出で一気に救われました。
王道ではあるが「親子」において流れる「我が子との絆」
そこで描かれる、虐げられたもの同士がお互いを慰め合う姿。
さっそく泣かされました。
幼蟲編でこのシーンがなかったら、最後までプレイする気力が大幅に削がれていたでしょう。
逆に言えば、このシーンが作中で大きな意義を持っていたと言える。
まさにここで、蟲愛が主題とするものが垣間見え、親蟲の関係の始まりを絶妙に表せていた。
そして、続く蛹蟲編、夢見編などで、親蟲の絆が深まっていく。
なにより「路地裏の悪夢」から始まるストーリーほど、「親蟲愛」を強調できるものはないだろう。
単に夢美を救うのではなく、夢美の意思を尊重する。
この意思の尊重はそうそうできるものではなかろう。
良かれと思って自分の意思で行動することがままある。
しかし、蟲クンは極力夢美の意思を確かめようとする。
夢美に押し付けない。
作中で最も是的に描かれている存在といっても過言ではなかろう。
言葉を発せない蟲クン。彼の思い、一途な思いに心揺さぶられずにいられようか。
この作品において、全くぶれていないのが蟲くんと西先生、及びレンでしょう。
全く逆に一番揺れていたのが夢美(特に蛹蟲編、西館編)
(それでも夢美は基本的に一定の意思を貫くのだが、)
そういう意味では逆の夢美と蟲クンのコンビはバランスが取れていたのではないか。
<3/30※補足>
夢美と蟲クンのぶれの違いについて
確かに夢美は蟲クンを産んだ母親である。それは変わらない。
しかし、夢美はやはり人間としての生活があり、他者と交わる社会に生きている。
そして、「普通」の生活を希求していることも否定できない(特に蛹蟲編)
一方で、蟲クンの生活範囲は基本的に夢美のマンション内であり、夢美以外との交流は皆無に等しい。
レンがいる場合でも然り。レンが関わろうとしないために。
また、夢美が優斗に惹かれていることからも明らかなように、夢美には蟲クン「だけ」ではない。
この点が、夢美の行動(想い)と蟲クンの行動(想い)の不一致にも繋がっていると考えられる。
例えば、夢美が合蟲人間から逃げる際に蟲クンの存在を忘れてしまう場面が挙げられる。
この点を好意的に解釈するか否かで作品の評価も変わってくるかと。
本作のテーマは「親蟲(おやこ)愛」である。
内実を見れば、子から親、つまり蟲クンから夢美への想いが最も強いと言える。
夢美と蟲クンの想いの強さの違いは、社会性の程度の違いが大きいんのではなかろうか。
故に、夢美が蟲クンに対して理想的な・完璧な親となりきれなかったのは仕方ないともいえる、と思ってます。
ENDによっては、蟲クンを見捨てるものもありますしね。
夢美の、蟲クンに対する想いの強さは期待するほど強くないかもしれない。
それでも、確かに「親蟲」関係は築けていたと思います。
掛け替えのない結びつきはしっかりと描けていました。
改めて、蟲クンの一途さが素晴らしいということが伝わったら幸いです。
<追記おわり>
夢美以外のどのキャラも人気投票で5位以上をとったのも頷ける。(一位は蟲クン!当然ですね)
他のキャラも魅力的であった(同情も込めて(笑))が、特に男性陣と蟲くんは素晴らしい活躍だった。
チベットの男をはじめ、ネタも多かったが(笑
公式でネタキャラがふんだんに使われているブサイクはサービス精神旺盛で嬉しいですね。
遥などはえくすとらば学園の方が活躍しているような(汗
そして、十五年に決着をつける成蟲編。
「蟲姫の鎮魂歌」というENDも用意されているが、「その十五年に決着をⅡ」こそ、この作品のENDにふさわしい。
「その十五年に決着をⅡ」は見事に泣かされました。
最期まで蟲クンは夢美のことを一番に想っていたんだなぁ、と。
全員が幸せになれるという形でならば、「十五年に決着をⅠ」の方が圧倒的です。
確かにこちらのENDも、
「蟲(クン)と共存すること・支え合うこと」と「蟲を利用して生きること」の対比の表現は巧いです。
一理ある。
しかし、本作のメインテーマである「親蟲愛」に照らせば、やはり邪道です。
このENDでは夢美の存在意義が薄れすぎてしまっている。
「普通」を追い求める気持ちは多いに分かります。
「普通」を追い求めたからこそ、優斗と結ばれたことも。
しかし、「親蟲」も貫いてほしかった。
故に、「その十五年に決着をⅡ」こそ、trueと言えるのではないか。
ここからは、作品全体について少し触れたいと思う。
まず、スト―リーに関しては、チャートシステムがかなり良い働きをしてくれた。
分岐が分かり易い上に、複数ENDを存分に採用できる。
加えて、起伏のしっかりした話であった。
ダラダラ感を感じないぐらい面白かったです。
まぁ、ブサイクですし、半端ない量のHシーンがあるわけで、それが続くのは辛かったですが・・・
しかし凌辱系が好きな方は満足いく量と質だったのではないでしょうか。
次に、戦闘描写。
これは良くできていたと思います。
自分は基本的に燃えゲーをやらないのですが(11eyesで痛い目見た為)、「ストーリ―を盛り上げる」戦闘は好きです。
戦闘がメインではないってことですね。(アニメになってしまうが、code geassなど)
本作の戦闘はCGが少ないながらもしっかりしたSEとBGM、何より泉万夜氏の筆力に負うところが大きいかと。
そもそもAVGは「読む」ものと思っているので、テキストにかかる比重は必然と大きくなる。
(確かにCGなどは視覚効果が高いです。本作で言えば「その十五年に決着をⅡ」など。
しかし、視覚の何割かはテキストに割いているとこが普通である。
故に、テキストの次に重要なのは聴覚に訴えるBGM,SE,台詞なのではないかと思っていたり・・・
閑話休題。)
読ませる文章として、かなりの出来ではないでしょうか。
燃えゲー好きには物足りないかもしれないが、本作での戦闘はあくまで引き立て役ということをお忘れなく。
続いて、キャラについて少し。
上で書いたように、ぶれないキャラの一人である西先生。
彼は幼蟲編という物語のスタートにおいて圧倒的な存在感を示しています。(逆に成蟲編で出番が・・・)
彼の性格を端的に表しているのが、「回収(サユリ)」。言わずとしれたステーキのあれです。
一般人には狂っているとしか見えない。
しかし、「研究者」を突き詰めればこうなるというのは納得できるものがある。
マッド・サイエンティストと言えばそれまでだが、「マッド」で終わらせてはいけない何かを感じてしまう。
後には研究目的がおぼろげながらも描かれますし、信念を行動で貫いたキャラとして素晴らしかった。
西先生の他に、悪役に数えられる煉悟と史郎。
彼らは結局小物でしたね。存在感はかなり強いが。
是的に見えようが、見えまいが、信念を持ったキャラというものは輝くものです。
ヒロイン勢は・・・、まぁ蟲クンを語ったからよいかな(笑
ネタキャラも含めて人気投票を見てくれればそれぞれ愛されていることがわかります。
全体的なボリュームについては充分満足いくものでした。
それなりに長い割にテキストはサクサク読めるのでダレルことはないかと。
物語の転換点である蛹蟲編などは基本的に明るいタッチで描かれているように、暗いばかりではないですし。
但し自分の様に凌辱系に耐性のない方にはHシーンがきついと思います。
最高で差分59枚(勿論手抜き的意味ではなく)という快挙を成し遂げていますし(汗
ユーリアの末路などはもう語る必要が無いほど・・・
最後の前に、惜しいを述べましょうか。
プレイした者のほとんどが言うであろう、男性キャラの声なし。
ぶれないキャラは基本男性陣です。
小物含めて存在感大きいのも男性陣です。
こうなるとやはり声が欲しくなります。
MinDeaDBlooDのようにはならなさそうですが・・・残念です。
次に、OPがデンカレではない点。
ブサイク=デンカレの公式は作ってしまってもいいのではないかと。
それでも本作のOPに女性vocalを起用したことは良かったと思いますが。
また、ED曲は欲しかった。ゴアをやった身としては、やはりもう一曲聴きたかった。
あとはENDでの整合性や投げっぱですかね。
「無計画な生き方」が典型かな。
一見幸せそうだけど、1週間後は・・・って感じですね。
まぁ、一区切りついているということで、嫌いではないですが。
むしろ多数のENDを用意してくれたことに感謝しています。
最後に、お気に入りのシーンを。(タイトル通り切ない系が自分は好きなので)
「親子」「アゲハを求めて」「死を超えた少女」「涙と平和」
「森に溶けて」「広い青空の下で」「その十五年に決着をⅡ」
この他にも(特にグロ系で)名シーンがあるので、気になったら買ってみましょう。
攻略が難しいと言われていますが、公式サイトの攻略を見れば楽しく98%ぐらいまでは埋まります。
システムも使いやすいですし。
残りは頑張りましょう(笑
確かにグロはかなりキツイ作品です。勧めるのが心苦しいです。
しかし、それでもやって欲しい作品です。
といってもグロシーンを飛ばすなどの暴挙は原則やるべきではないです。
グロシーンあっても本作です。親蟲愛です。
汚い世界の中のヒカリ。そこを楽しんでほしいです。
グロ耐性があり、名作やりたいなと思ったら、是非手にとってみてください。