「桜の木の下には死体が埋まっている」・・・まさにこの作品を一言で表すとこうなるでしょう。紅葉(幼なじみ)を筆頭に甘すぎるほど甘い関係が描かれる一方で、「お化け」を連想させるような薄気味悪さが付きまとう。このバランスが巧くとれていたと感じる一方、曖昧模糊とした部分があるのでそこが嫌な方にはあまりお勧めしない。
本作の完成度は非常に高いと感じた。
ピアノ曲を基調としたBGM、☆画野郎の描く魅力的なキャラクター、トノイケダイスケ氏の小説を思わせる文章。 (※ボイスはなし)
どれも高水準に纏まっており、非常に良くできた作品。
AUGUSTは立ち絵のバリエーションが多い事で有名なようだが、本作は逆に立ち絵の種類は少ない。
しかしながらキャラの表情及びトノイケ氏の文章が噛み合ってリアリティ溢れるものになっている。
特に登場人物同士の会話、思考の自然さに関してはトップレベルと言えよう。
紅葉は出来過ぎた子なので置いておくとして、特に桜は人として、女としてイヤな側面を見せるのも良いですね。
このイヤな側面にも充分理由づけされているし。
と、ここまでべた褒めした割に点数が低いのは、語られない部分の多さ、の故です。
これに関しては意図的に曖昧にさせているのは充分理解できるが、作品にのめり込めなかったのも事実。
読後感もすっきりするようでそれほどしない。
ここら辺が苦手な方には良作であっても名作にはならないかと。
曖昧さをマイナス点のように述べたが、作品の質を上げているのも事実。
近親相姦及び「桜の国」問題という負の側面を「薄気味悪く」感じさせる為の曖昧さ。
この曖昧さ故に”甘々”中心の雰囲気ゲーと呼ばれたり、尿(各ヒロインに一回以上、SE付き)を取り出して「尿ゲー」と呼ばれたり・・・
しかし「雰囲気、尿」で切ってしまうにはあまりに惜しい作品。
コンプ後には考察サイト等で答え合わせをすると評価が上がるかもしれません。
ここで”甘々”と述べたが、幼なじみが好きな方には紅葉√だけでもやって欲しいと思うほど素晴らしい出来。
他の作品に比べて最初から距離が近いのだが、それが受け入れられれば後の展開は非常に納得のいくものになっている。
告白シーン、必見です。