歴史上の人物や出来事を脚色/モチーフにすることで作品への没頭・娯楽性を高めるとともに、ユーラシア大陸を横断する「旅」を描いているため、様々な風土・歴史・空気・キャラ…に出会える「わくわく」に満ちた物語。楽しい。もの凄く楽しい。……けれどお願いがあるんです。完成させてください。本当に(´・ω・`)
素晴らしい。……4章の半ばまでは。
演出面で見れば声の使い方が非常に上手い。
「読み」と「聞き」を組み合わせるというゲーム媒体の強みが出ている。
「Forest」ほどではないけれど、ナレーション(CV青山ゆかり)を筆頭とするセンス良い台詞運び・詩のようなリズムや、
主人公クゥの他人の思考を読む能力に合わせた、発言と表層意識との差異の見せ方。
声優さんの演技と相まって、ユーザーを作品世界へ取り込む力は非常に強い。
……だからこそ後半で声がなくなっていくのが余りに惜しい。
それだけでなく、話自体がダイジェスト的に削られているのだが。。
(※「Forest」は1時間ほどやって積んでいるので全貌は知りません。かなり面白いけどまだ温め中。)
勿論本作の魅力は音だけに留まらない。
目を引くのが「他世界」感。
黒の列車(プレステ・ジョアン)が走り出してからの「わくわく」は異常。
中国からロシア、中央アジア、西アジアを通って目的地ヨーロッパはプラハまで。
80曲以上に及ぶBGMと、多彩な背景絵/衣装、様々な信条/過去を持つキャラたち。
異世界モノや、"同一文化圏内"の旅行(欧州内の「カタハネ」など)を描いた作品とまた一味異なるのは、
「色/空気/雰囲気」が次々と移り変わること。
ただでさえ多様な文化・風土を肌で感じる大陸横断に加え、「橋」に代表されるファンタジーが組み込まれる。
(芯はぶれず)単なる「カオス」ではない多彩さを見せるため、全く飽きが来ない。
※「希望/望み/願望」の裏側にある「犠牲/代償/対価」については(物語後半における)描写が薄いために「重さ」が今ひとつ。
「芯」はあるけれど、描写不足感は否めない。
「旅」の面白さは然る事ながら、恋愛面でも意外に目を引かれた。
特定カップル型(スラーヴァとジョエル、クゥとエマ)で、
前者は「積み重ねた時間」を感じさせるやり取りが、
後者は「次第に求め合っていく様」が描かれている。
ジョエルとスラーヴァでまず印象的なのがロシア横断を断念することになった場面だろう。
ジョエルの(性格からくる)愚痴と思わせてスラーヴァへの思いやりであることが明かされる。
周りからは感じ取りにくい「つながり」を見せられるとそのキャラを好きにならざるを得ないじゃないか。
次にクゥとエマについて。
次第に「かけがえのない」存在になっていく過程は言うまでもない。(さほど緩やかではないが)
エンディングも勿論良いのだが、最も好きな場面は6章始め。
まじバカップル。ラブラブ過ぎてもう。
行為中に知り合いに覗かれる、というシチュがあり、
周りの反応とエマの恥じらいがなんとも微笑ましい。
こっちとしてはエヤクラチオンには達しないけれど(笑
その前にも、超あたふたしながらナンシーにフェラを教わるシーン(4章)など、萌え要素が予想以上にある。
エマかわいいなぁエマ。
4章以後について。
「橋」の場面に関しても、そこへ至る旅路に関しても、それまでの1/3~1/5に薄めた感じ。
OPfullのBGM(名曲!)が流れるシーンも10クリック未満で終わるので普通にやっても聞き終わらないし…
まさにダイジェスト版。
でも一応完結はしているし、ラストのBGMやED「Inliyor」には心うたれる。
そう、名作・良作になるだけのポテンシャルは大いに秘めている。
だから余計に惜しい、名作「なりそこね」筆頭。
第一の橋を越えた後、母鹿を轢いてしまい急停車。
エマが小鹿に食べ物を差し出すものの小鹿はそれを受け取らない。
こうした暗喩や、「猫」の視点、宗教/犠牲/生死、背景知識だったりと、
紐解いていけば更に深淵が見えてくる側面は少なくない。
通り過ぎる木々よろしくカフカの『変身』みたいにサラッと流れたのにも何らかの意味が込められてるんだろうなぁ…
「Forest」然り、「霞外籠逗留記」然り、知識があると更に楽しめるのだろう。
とはいえ、無くても十分楽しめるというのが素晴らしいのだが。
作りきってくれれば……。
果たしてどれだけの対価を払えばこの「願い」は叶うのだろうか。